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近年、中国のスパイ気球が米国を中心とした他国の情報収集に利用されていることが報告されている。
この気球は、探知や破壊が容易な従来の軍事衛星に代わる低コストな手段として設計されている。
中国のスパイバルーンは比較的小型で、陸上や海上から打ち上げられ、カメラなどの監視装置を搭載し、中国にリアルタイムでデータを送信することができる。
2023年2月に米国に飛来した中国のスパイ気球の正確な仕様は公になっていないが、 現在までの報告によれば、中国のスパイ気球は、ヘリウムを充填した大型の無人気球で、長時間上空に留まることができるものと思われる。
また、カメラやセンサーなどの監視装置や、地上にデータを送信するための通信システムを搭載している可能性があるという。
今回は、中国のスパイ気球を撃墜したF-22が機関砲で攻撃できなかった理由と回収後に明らかとなった自爆装置について解説していこう。
中国のスパイ気球についての動画も見てね!
気球を撃墜したステルス戦闘機F-22
2023年1月28日~2023年2月12日にかけて、中国のスパイ活動のためとみられる気球が複数アメリカ領空に飛来した。
これに対し、アメリカはステルス戦闘機F-22ラプターで、この中国の気球を撃墜した。
F-22ラプターは、アメリカ空軍のために開発された第5世代ステルス戦術戦闘機である。
アフターバーナーなしで超音速に達することができ、高度なアビオニクスと武器システムを装備した、世界最強のステルス戦闘機とされている。
米国は、中国のスパイバルーンが持つ脅威に対し、従来のレーダーシステムでは探知が困難なこの航空機を選択した。
実際、このステルス機は発見されることなく気球に近づき、機密情報を収集する前に撃墜することができたが、機関砲ではなくミサイルを使用しての作戦となった。
報道によると、F-22ラプターは約30マイル(約48km)の距離から気球に向けてミサイルを発射した。
このミサイルは、敵の航空機や巡航ミサイルに対して使用される空対空ミサイルであるAIM-9Xサイドワインダーで1発あたり約5290万円というミサイルだ。
AIM-9Xは、戦闘機、ヘリコプター、無人航空機など様々なプラットフォームから発射可能な高度な赤外線誘導技術を持った熱探知ミサイルだ。
目視範囲内の敵機を攻撃し、破壊するように設計されており、射程距離は約18kmで、最高速度はマッハ2.5である。
機関砲の代わりにミサイルを使ったという判断は、いくつかの要因に基づくと思われる。
1つは、F-22ラプターと気球との速度差が大きすぎることだ。
通常、機関砲は戦闘機を後ろから追っかけながら射撃する設計となっており、同じような速度で飛ぶ物体に対して有効である。
しかし、気球はF-22の速度域からすれば、ほぼ停止同然のため、射程圏内に入ってからだと衝突する危険性がある。
過去にF/A-18スーパーホーネットが、気球に対して機関砲で撃墜を試みたものの、2機で1000発以上撃ったにも関わらず、完全に撃墜できなかったという事案も起きている。
2つ目の理由が高度である。
この気球は、高度18,000m~20,000mを浮遊していた。
この高高度で撃墜を成功させることは相当困難なオペレーションになると元防衛省長官の石破茂氏も述べている。
自衛隊のF-15では、その高度まで上がってミッションを遂行することはなく、F-22においても余力推力がなくなり不安定な状況となる。
そのような状況で機関砲で照準を合わせるのは非常に困難となるのだ。
ミサイルは特定の標的を追尾して攻撃するように設計されているため、ミサイルを使用することで巻き添え被害のリスクを最小に抑えることもできる。
中国気球事件でF-22ラプターが発射したミサイルの性能は公式には確認されていないが、中国のスパイ気球に命中し、破壊することに成功したとの報道がなされている。
これは、F-22ラプターとミサイルの高度な技術と性能が脅威に対して有力な効果を発揮したと証明するものでもある。
撃墜後に回収した気球からは、なんと自爆装置が取り付けられていたことが判明した。
中国のスパイ気球の目的と自爆装置
今回の中国の気球事件は、なぜ中国が軍事衛星の代わりに気球を情報活動に使うのかという疑問も出てくる。
様々な理由が考えられるが、大きな要因の1つはコストである。
人工衛星は、その製造と軌道への打ち上げに莫大な費用がかかり、軌道や搭載する燃料の量によって任務が制限されることがある。
一方、気球は建設費がはるかに安く、数日から数週間にわたって上空に滞在できるため、広大な地域をカバーすることができる。
また、気球の使用は中国が疑惑を持たれたり、軍事的反応を引き起こすことなく情報を収集するための意図的な試みであった可能性が高いのではないだろうか。
気球はステルス性を持っていることも大きな特徴だ。
軍事衛星は地上のレーダーで探知されることがあるが、気球は小型かつ高高度を飛ぶので探知することは難しい。
事実、日本上空にも防空網をすり抜けて不明気球が飛んできたことが過去に起きている。
また、気象観測用の気球など、脅威を与えないものに偽装できるため、注目を集めにくいという利点もある。
中国の気球が、どのようにして中国から米国まで発見されずに移動できたのか、正確にはまだ分かっていない。
気球はレーダーなどの監視システムで発見されにくい中国西部の遠隔地から打ち上げられたのではないかと推測する専門家もいる。
また、気球は高高度の風に乗って太平洋を10000㎞以上移動した可能性も指摘されている。
いずれにせよ、中国が気球の打ち上げに成功し、かなりの時間、気球をコントロールできたことは確かである。
このことから、今後、気球を利用した諜報活動の可能性が懸念され、監視・検知手段の強化が必要である。
加えて、今回の中国の気球を回収して明らかになった興味深い点は、気球に自爆装置が搭載されていたことである。
報道によると、気球には小型の爆発物が搭載されており、危害を加えられたりすると気球が破壊されるという仕組みのものが搭載されていた。
この自爆装置は、一見、賢明な安全対策に見えるが、一方で、このような装置の潜在的な危険性についても懸念されている。
人口密集地上空で気球が発見され衝撃を加えられた場合、その爆発で大きな被害が発生し、人命に被害が及ぶ可能性もある。
また、気球に爆発物を使用することは、諜報活動を行う国家間の緊張をさらに高める可能性がある。
日本上空にも飛来した不明気球
中国のスパイ気球の事件はアメリカに限ったことではない。
平成19年11月に鹿児島県薩摩川内市 、翌年6月には仙台市 、22年には沖縄などで確認されており、 日本政府は中国が飛行させた無人偵察用気球であると発表した。
これらの気球にはカメラやGPS技術が搭載され、日本の軍事施設や重要な場所の情報を収集していたと考えられる。
日本政府は気球の監視に努めているが、気球が日本の領空に侵入するのを防ぐのは困難な状況だ。
気球は小型で高高度を飛行するため、探知が困難な場合が多い。
加えて、防衛省は日本に飛来した気球を確認後、「24時間365日、レーダー、その他で警戒監視を続けている」と過去に回答しているが、その後の会見では「どこに行ったかは定かではないが、自衛隊の気象班が保有しているものではない」と、その監視の難しさが露呈することとなった。
また、日本の防空システムは気球を撃ち落とすことを想定していないため、気球を迎撃することは困難である。
気球を撃ち落とすのは簡単なことのように思えるが、実際はそう簡単ではない。
気球は通常、軽量な素材でできており、わずかな力でも簡単に破損してしまい、気球を撃墜すれば、地上の民間人やインフラに危険が及ぶ可能性もある。
また、現在の日本の防空システムではミサイルや航空機の迎撃を主目的としており、気球の探知・撃墜に最適化されていない。
特に気球は高高度を飛行し、予測不可能な動きをするため、日本の防空システムの限られた能力では、気球を迎撃することは困難な状況となっている。
日本政府は監視のための措置を講じているが、防空能力に限界があるため、日本領空への侵入を防ぐことは困難である。
そのため、日本がこれらの事件に効果的に対処し、国の安全保障上の利益を保護することは、依然として課題となっている。
中国のスパイ活動と日本への脅威
近年の中国の気球による監視・情報収集は、費用対効果が高く、彼らにとって効率的な情報収集手段であると言える。
また、気球を制御するための高度な追跡システムと遠隔操作システムにより、長距離の安全航行が可能である。
中国の機密情報を保護するため自爆装置がついていたことから、ただの気象観測用の気球でないことが露呈されることとなった。
米国での事件は高い性能を持つ戦闘機による対応により、人名被害を出さずに処理、中国のスパイ活動を露呈させる結果となったが、国際的な緊張が高まる中、中国のスパイバルーンは今後も軍事戦略上重要な位置を占めるとも考えられる。
米中の対応に各国が注目する中、日本におけるこれらの新たな脅威に対する安全保障はどのような道を辿るべきなのだろうか。
次の動画では、日本の空を見張る「神の目」を持つ早期警戒機の性能と任務について解説しよう。
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