海上自衛隊の南極観測船【しらせ】が南極に行く理由。過酷な航海と特殊装備

「戦争映画」は、ただ国同士が争う映画ではない。

迫力ある戦闘シーンだけでなく、涙なしには語れない数々の人間ドラマがある。

数ある戦争映画の中でも、今回は実話を元にしたエピソードのみを厳選して紹介する。

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地球最南端の地を目指すため、冷たく厚い氷の海を進む「しらせ」

直線距離で14,000㎞にも及ぶ長い航海を5か月間にわたって行う氷砕艦である。

日本人初の南極探検隊を率いた白瀬中尉の功績を称え名付けられた「白瀬氷河」と同じ名を持つこの船には、日本がこれまで60年以上に渡り行ってきた南極観測の歴史やそこから培ってきたさまざまな経験・知識・技術が詰まっている。

世界の中でもトップレベルの高い性能を持つ「しらせ」にはどのような工夫や装備がなされているのだろうか?

今回はしらせの性能や南極に行く目的、破氷の仕組みや搭載している特殊車両などについて解説していこう。

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「しらせ」が南極に行く理由

しらせは海上自衛隊に属する破氷艦で4代目の南極観測船である。

3代目もしらせという名称であったが、4代目の名称募集の際「しらせ」の名前を望む応募が多数あり、その声に応える形で4代目も引き続きしらせとなった。

南極観測船と表現されることも多いが、これは文部科学省における呼び方で、防衛省においてはしらせは破氷艦と呼ばれる。

南極地域の観測隊メンバーや必要な物資などを現地まで輸送し、研究任務を遂行させるために建造された。

また、南極から帰還する際は、新しく研究に携わる隊員と入れ替わりで任務を終え基地から帰還する隊員を運ぶ。

建造したのは文部科学省だが、船を運用しているのは海上自衛隊であるため、日本中から集められた海上自衛隊員が2年交代で乗り込んでいる。

さて、建造目的の部分で先に触れたが、しらせの役割は南極地域の観測を成功させることである。

具体的にしらせが何のために南極へ行くのか?

それは南極観測の人員・物資の輸送と南極へ行くまでの航路の破氷のためだ。

南極観測隊は南極において気候・生態系・天体などの研究を行っている。

南極は観測隊員以外は人間が居住していない大陸で、さまざまなものが自然そのままの状態で残っている。

そのため、地球の過去のデータが収集しやすいのである。

しかし、海外旅行のように南極に気軽に移動できる交通手段は存在しない。

整えられた空港や駅などももちろんあるはずもなく、生活や研究に必要な物品を調達できる店舗もない。

南極はこのような環境下にあるため、基地で研究を行う隊員や研究・生活に必要な物資を大量に現地まで運ばなければならないのである。

さらに、南極に行くまでの航路は厚い氷で覆われている。

南極に到着するため、氷を破壊しながら海を進む必要があり、それもしらせの重要な役割である。

南極観測隊の派遣は1年に1度、派遣期間は約14ヶ月であるが、海上自衛隊の乗組員は2年で2回、南極に行くことになっている。

毎年観測隊員として派遣されるメンバーは、各研究分野の専門家や企業の研究員、教員などで構成される。

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 砕氷のしくみ

それではしらせが南極海を進むための仕組みをもう少し詳しく説明しよう。

しらせは鋭角に造られた船首でもって氷の上に乗り上げ、船の重量を利用して氷を砕いて進んでいく。

3ノットのスピードで連続して氷を砕くことが可能だ。

1.5m以上の分厚い氷に対しては、やや距離をとり勢いをつけて氷に突入し乗り上げてフネの重みで砕きながら進む。

これは「チャージング砕氷」と呼ばれる手法である。

また、しらせにはヒーリングタンクというタンクが内蔵されているが、このタンクの中に入ってるオイルを敢えて左右に移動させ、船体を左右に揺らせて氷を砕くという方法もある。

船首部分には放射線状に散水する機能が付いており、これで氷を溶かし砕きやすくするなど、細やかな工夫もなされている。

しらせはこのような方法で分厚い氷ですら砕きながら南極を目指し進むのだ。

なお、初代の観測船であった「宗谷」が氷の海で動けなくなくなってしまったときには、ダイナマイトによる爆破で砕氷が行われた。

現在のしらせが南極海を進む際は、基本的には爆破ではなく船体を利用した破氷が行われる。

なお、しらせの最大速力は19ノット(時速約35㎞)であるが氷を砕きながらであれば3ノット(時速約5.5㎞)でしか進むことができない。

しかし、氷の厚さはどこも均等というわけではない。

先に述べたとおり、1.5mより厚い氷はチャージング砕氷により、200~300m後退した後に助走をつけて砕き、また後退して助走をつけて、という流れを繰り返すため、1日に進める距離は短くなる。

チャージング1回につき進める距離は数十mから数百m。

どのような状態の氷が進路を阻んでいるかによって、しらせの歩みのスピードは変わってくるのである。

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しらせの特殊装備

しらせには過酷な南極への旅に耐え、無事任務を遂行するためさまざまな特別装備がなされている。

例えばヘリコプター搭載がそうだ。

しらせにはCH-101という輸送用大型ヘリコプターが2機乗せられている。

これは、昭和基地沖に着氷した後、物資などを基地のある場所まで空輸するためのものである。

厚みが砕氷できるレベルを超えるなど、氷の状態によっては昭和基地の近くまでしらせが行けないこともある。

そのような環境では雪上車での輸送は困難になる可能性もあるのだ。

しらせのデッキは一部がヘリポートとなっており、氷の状態に関わらずヘリは飛行できる。

南極観測隊のエピソードとして有名な「タロとジロ」という犬の実話があるが、この犬たちは第1次南極観測隊で南極に帯同されたものの、帰還時に天候の悪化やヘリの荷重オーバーで船までの空輸ができず、そのまま基地に残されてしまったのである。

タロとジロは奇跡的に生還したが、この教訓からヘリは高性能なものを搭載することとなった経緯がある。

現在は、南極への生きた動物や植物などの持ち込みが禁止されたため、犬ぞりは使用できない。

また、しらせには巨大クレーンも搭載されており、荷物を積み込んだり、南極に到着した後荷おろしをしたりする。

そのほか特殊車両も多数搭載されている。

ピステンブーリーと呼ばれる雪上車は、昭和基地から1000km離れた高度3810mにあるドームふじ基地へ、物資や人員を輸送するために使われる。

物資や人員の輸送などに使用される雪上車には排雪ブレードなどが取り付けられており、雪や氷の多い場所でも目的地まで移動できるよう工夫がなされている。

雪上を移動するためのスノーモービルも複数台搭載されている。

なお、しらせは海上自衛隊の艦船であるがゆえに、小銃などの武器も装備済みだ。

これは、運行中にテロや海賊などに襲われた場合を想定してのものだ。

日本から遠く離れた南極を目指す途中では、まさかという危険に遭遇する可能性もある。

さまざまな装備を駆使し、無事目的地に辿り着くことがしらせの任務なのだ。

南極への道のり

地球の最も南に位置する南極大陸。

そこまでの道のりは想像を絶するほど過酷である。

しらせは南極観測のためにはなくてはならない船であり、観測を成功させられるかどうかを大きく左右する重要な存在である。

厚い氷を砕く力とそれを可能にする強固な船体、大量の物資の輸送に必要な特別装備など、通常の船には見られないような特徴が数多く見られる。

これは全てしらせが担う重要な役割のためである。

我々が日常生活を送っている間も、南極では観測隊員による観測・研究が日々行われている。

南極の観測により、地球のこれまでの歴史や未来の地球環境について研究を進められる。

そして、その研究をしらせという素晴らしい船が陰ながら支えていることを覚えておきたい。

「戦争映画」は、ただ国同士が争う映画ではない。

迫力ある戦闘シーンだけでなく、涙なしには語れない数々の人間ドラマがある。

数ある戦争映画の中でも、今回は実話を元にしたエピソードのみを厳選して紹介する。

一度は見ておきたい実話の戦争映画5選!