海上自衛隊の飽和潜水士の過酷な内容。450m深海に挑む命がけの訓練

「戦争映画」は、ただ国同士が争う映画ではない。

迫力ある戦闘シーンだけでなく、涙なしには語れない数々の人間ドラマがある。

数ある戦争映画の中でも、今回は実話を元にしたエピソードのみを厳選して紹介する。

一度は見ておきたい実話の戦争映画5選!

北海道知床観光船が沈没し、海底115mにおいてダイバーによる飽和潜水作業が行われたことは記憶に新しい。

通常のダイビング用タンクでは水圧の関係で50m程度が限界となる。

しかし、飽和潜水と呼ばれると方法は100mを超える深度でも潜水作業をすることができるのだ。

日本では、国家資格が定められており、潜水士免許試験に合格して、免許の交付を受けた者が潜水士と呼ばれている。

海上自衛隊では、人間が深海の水圧に耐え、長時間作業が行える潜水士を養成している。

機雷、不発弾処理などの爆発物や危険物のの捜索や処分のほかに、深海域において、潜水艦の乗員の救助作業を行うためである。

今回は、海上自衛隊の飽和潜水とはどのような潜水方法なのか?また隊員たちの訓練の様子について解説していこう。

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飽和潜水の仕組み

飽和潜水とは、深海の水圧に身体をさらした状態で、深海よりさらに深い大深度への潜水を実現するための技術である。

飽和潜水の「飽和」とは、ダイバーの身体組織が、その水深での可能な最大量のガスで満たされている状態ということに由来すると言われている。

この技術によって、100m以上に及ぶ深度であったとしても、安全に、かつ長時間の活動が可能となり、また潜水における、いわゆる潜水病に陥る危険が少なくなる。

現在の技術を用いると、最大で700m以上の大深海に潜ることが可能になっている。

これまで大深度へと潜る時に、最大の脅威となっていたものが減圧症と呼ばれるものであった。

人の体は、深い海に潜ることで、深海における水の圧力によって、呼吸するガスの中に含まれている窒素などが、生体の組織内へと溶け込んでしまう。

そして、これとは反対に、深海から海面へ浮上する時には、周囲の圧力が低くなることから、生体組織に溶け込んでくるガスの量は減少していく。

これにより生体に溶け込んだガスは、過飽和の状態となってしまうのである。

一定の体力があり、健康な人であれば、溶け込んだガスは自然に排出されることが可能であるため、訓練を受けた者による安全基準を満たした浮上であれば、危険に陥ることはあまり考えら

れない。

しかし、浮上する速度が減圧に対して速かった場合や、潜水した者の体に不調があった時には、余分なガスが気泡として体内に現れる結果なり、これが塞栓などに繋がる、いわゆる減圧症の

症状を招く結果となる。

分かりやすくいえば、炭酸飲料を開けた瞬間に泡が吹きこぼれる状態が体内で発生するということだ。

その結果、呼吸困難や意識障害、言語障害などが現れる。

海中に肉体だけで、長い浮上時間を過ごすことは、危険かつ過酷なことは言うまでもなく、実際に飽和潜水を行う時には、地上や船上において高圧環境を実現するための再圧タンクまたは、

高圧環境を維持した状態で、再圧タンクから海底までを往復するためのベルと呼ばれる装置が使用される場合が多い。

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海上自衛隊の飽和潜水士

日本において、飽和潜水を実施できる組織の一つが海上自衛隊である。

自衛隊では、海上自衛隊潜水医学実験隊と呼ばれる部隊を中心として、飽和潜水を含めた各種の潜水技術の研究やその開発を進めている。

1997年には400mの深海で40日間の潜水を達成しており、2008年5月21日には、潜水艦救難艦である「ちはや」 の潜水士が450mという日本新記録を達成している。

また、この記録は、当時の世界第2位でもあった。

海上自衛隊は、通常6名または3名のチームを構成して飽和潜水を行うことになっている。

潜水チームがタンクに入ると、10mに相当すると言われる2気圧まで加圧する。

この時点で一点検を行った後で、呼吸ガスをヘリウムと酸素混合ガスに切り替えた上、所定の深度に相当する圧力に至るまで一気に加圧していく。

ただし、この段階で加圧速度が速すぎる状態に陥る高圧神経症候群など生じるやすくなってしまうため、海上自衛隊では、1m/分前後の速度を保った状態での加圧を定めている。

また、目標とする深度が200mより深いとされる場合には、この時点からさらに加圧速度を遅くするように定めている。

加圧に4日間をかけた例もあり、このことからタンク内には、シャワーやトイレといった、必要最低限の設備が整えられている。

また飽和潜水士は、感情を適切にコントロールする必要性が求められるため、感情的になりやすく短気な人や、チームワークを保つことが苦手な人には、不向きとされている。

食料やその他の必要な物資は、小さなエアロックを介して、タンク内の圧力が変化しない仕組みで送り込まれるようになっている。

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深海での作業方法

海底での石油の汲み上げ装置など、深海にある施設での作業を行うダイバーには、スキューバボンベで作業が許容される時間とは比べ物にならない時間を潜ることが要求される。

また、一定の深さを超えた潜水は、スキューバボンベでの潜水ではあまりに危険すぎることは言うまでもない。

作業と安全性の比率をより良く向上させるために、飽和潜水士は船上にある減圧室内で生活し、作業をすることが多い。

この減圧室に入ることで、作業深度で経験するとされている圧力に徐々に身体の状態を慣らしていく必要があるのだ。

実際に海底に潜る場合には、ダイバーの一人がエアロックを通って加圧室へ向かって、深海に沈めるための「潜水ベル」というカプセルに入る。

そして、潜水ベルを所定の水深まで下げると、ダイバーは潜水ベルから脱出して、海底での作業を行う。

ここで、もう一人のダイバーには、作業中のダイバーの体調などの監視を行うために潜水ベル内に残るようになる。

それぞれのシフトを終えると、潜水士は再び引き上げられ、潜水ベルに入り、またシフトを開始することになる。

飽和潜水士は、水深100mから500mの大深度で日常的に作業を繰り返している。

また支援船などが緊急事態に陥り、やむを得ず乗船している船を放棄し、船の本体から脱出せざるを得なくなった場合には、その船のダイバーには脱出手段が用意されている。

通常、脱出トランクは加圧された状態の脱出モジュールへと繋がっていて、ダイバーは被災したとしても、船からは安全に脱出することが可能になっている。

海上自衛隊の飽和潜水士

過去に、ロシアやインドネシアでは潜航中の潜水艦にトラブルが発生し、浮上することができないという状況に陥った。

残念ながら、乗員は全員が死亡し1人も救助することはできなかったという事故が起きている。

海上自衛隊の飽和潜水士たちは、深海で遭難した潜水艦から乗員を救助することを想定し、約450mという環境でも作業が行える訓練を行っている。

年間の入学人数は5名~12名と少数精鋭であり、そこから厳しい訓練が数か月にわたって実施される。

選ばれた隊員のみが未知の領域へ挑戦できるのが飽和潜水士である。

450メートルの飽和潜水訓練は、現在3年に1回行われており、毎回6人がこの限界領域にチャレンジしている。

想像を絶する過酷な訓練を耐え抜き、命がけで作業を行ってくれる隊員たちがいることも知っておいてほしい。

「戦争映画」は、ただ国同士が争う映画ではない。

迫力ある戦闘シーンだけでなく、涙なしには語れない数々の人間ドラマがある。

数ある戦争映画の中でも、今回は実話を元にしたエピソードのみを厳選して紹介する。

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