空母を撃沈することは可能なのか?米空母の防御システムと中国の飽和攻撃
Amazonのオーディオブック 
12万タイトルの本を好きなだけお楽しみいただけます。

・本の1冊分の月額で聴き放題
・料金をメリットが上回る
・いつでも読書できる
・読書量が格段に増え、積読が解消される
・長時間の読書も目が疲れない
・聴くたびに学びを感じる

公式ページはこちらをクリック

アメリカ海軍が誇る空母打撃群は地球上のどの国よりも強力な海軍力を誇る。

しかし、この強力な艦隊も、敵の進化するミサイル技術に対し、常に警戒を怠ることはできないのである。

攻撃力に優れている反面、空母単体ではミサイル攻撃に対する防御は脆弱である。

このため、防御システムの重要性が増しているのである。

今回は、アメリカ空母が装備する最先端の防御システムの秘密と米軍を脅かす中国の新しい軍事技術について解説していこう。

スポンサードリンク

世界の海を支配する米海軍の空母打撃群

現在、米海軍は、11隻の空母を保有している。

全ての艦は、原子力推進になっており、燃料補給なしで広範囲にわたり行動することが可能である。

また各艦には、航空機を加速させるカタパルトが装備されているため、中国空母のような、スキージャンプ式の甲板で艦載機の揚力を得る必要がなく、燃料やミサイルを満載した艦載機を迅速に発艦させることができるようになっている。

空母1隻当たりの搭載機数は70機前後で、1分以内に次々と発艦させることが可能である。

米海軍は、この空母を中心とした艦隊編成として11個からなる「空母打撃群」という戦術単位をとっており、これらの艦隊を、世界の各海域に派遣している。

1個空母打撃群の通常戦力構成は、原子力空母1隻、イージス巡洋艦1隻、イージス駆逐艦2隻、攻撃原潜1隻、補給艦1隻の計6隻体制となっている。

この1個空母打撃群だけで中小国の空軍戦力に匹敵し、5個空母打撃群が揃えば、航空自衛隊の全保有機数を上回る戦力となる。

現在、空母を保有している国は8か国であるが、原子力推進でカタパルトを装備した艦を保有しているのは、アメリカ以外ではフランス海軍のシャルル・ドゴール

1隻のみである。

そのカタパルトもアメリカ製のものを使用している。

保有数においては、中国が3隻、イギリス、イタリア、インドが各2隻、ロシア、フランス、タイが各1隻となっており、アメリカ海軍の空母戦力は、他国を大きく引き離している。

今後、この空母打撃群に匹敵するような空母戦力を保有する国は、おそらく現れないであろう。

過去の歴史を見ても、この米空母機動部隊と互角の戦いを行ったのは、旧日本海軍の機動部隊のみである。

この空母打撃群の防御システムの概要としては、脅威となる敵空軍の航空基地に対しては、イージス艦や原子力潜水艦に搭載されたトマホーク巡航ミサイルによる攻撃が行われる。

艦隊周辺の海域の状況は、早期警戒機が広大なエリアの監視を行い、発見すれば、戦闘攻撃機を発艦させ目標に対する攻撃を行う。

E-2D早期警戒機の最大探知距離は850kmで、遠距離から敵戦闘機やミサイル、艦艇を先制探知して、その情報を味方部隊に送る役目をもっている。

また敵潜水艦に対しては、原子力潜水艦や対潜ヘリが周辺海域を警戒するという体制がとられている。

護衛するイージス艦3隻は世界最強と言われる高度な防空システムを持っており、多数のミサイル攻撃から空母を守る体制がとられている。

また空母打撃群は敵からの攻撃が予想される危険海域を航行する場合は、複数の空母打撃群が集結して行動する場合もある。

スポンサードリンク

海の要塞を守る! 米空母の最先端防御システムの秘密

多くの航空機を搭載した空母は圧倒的な攻撃力を持つが、空母単体では、攻撃、防御面においては脆弱である。

そのため、ミサイル攻撃を受けた場合の防御システムを搭載している。

米空母が装備している防空ミサイルシステムとしてはRAM(ラム)が、挙げられる。

これは、アメリカとドイツが共同で開発した近接防空ミサイルであり、1992年より配備が開始されている。

速度はマッハ2以上、であり、敵航空機や巡航ミサイルに対する迎撃が可能である。

ミサイル本体は、繊維強化プラスチック製のキャニスター内に格納されており、発射機は、Mk(マーク)49と呼ばれる21発入りのランチャーが使用されている。

コスト低減及び開発期間を短縮するため、既存の兵器システムの部品を再利用することにより、効率的かつ効果的な新しい兵器システムを構築している。

RAMのキャニスター内部には螺旋状のレールがあり、発射時、ミサイルに回転を与えることにより、飛行を安定させるようになっている。

発射後、ミサイルは、操舵翼と固定翼を展開し飛行する。

目標から放出される電波の方向を捉え、ミサイルをその方向に誘導する。

この段階を経て、ミサイルが目標を捕捉すると、システムは赤外線ホーミングに切り替わる。

赤外線ホーミングは、目標の放出する熱を感知する赤外線センサーに依存している。

このセンサーは、目標の正確な位置を特定し、ミサイルを目標に向けて導く。

ミサイルが目標に十分接近すると、最終段階である近接信管や着発信管が作動する。

これらの信管は、ミサイルが目標に非常に近づいた際に起爆を引き起こすことで敵ミサイルを迎撃する。

また、これ以外の防空火器としては近接防空システムCIWS(シウス)がある。

これは、対艦ミサイルなどに対する近距離防空に用いるため開発された武器システムである。

CIWSは機関砲と射撃指揮システムが一体化された、対空戦において最後の防御システムである。

20mm機関砲6銃身のバルカン砲を装備し、発射弾数は4,500発/分、有効射程3.6km、携行弾数は1,550発で、目標が射程内に入ると自動でバルカン砲が発射され、その弾道をレーダーで追尾し、目標とのずれを計測する。

そのデータを元にして自動で砲身の向きを修正しながら射撃を行うことができる。

他にも、電子攻撃対策として重要な役割を果たす「デコイ発射機」を装備している。

このシステムは、レーダーに反射しやすい素材と形状をしており、敵のミサイル攻撃から自身を守るための「おとり」となる。

また、レーダー誘導ミサイルに対してはチャフを、赤外線誘導ミサイルに対してはフレアを投射する。

これらのデコイは、敵ミサイルを欺き、誤った目標に誘導することで、本来の目標である航空機や艦船を守る。

チャフは、数多くの小さな金属片で構成され、レーダー波を反射して大きな疑似目標を作り出す。

これにより、レーダー誘導ミサイルはチャフの生成する偽物のターゲットに惑わされる。

一方、フレアは、高温を発する光源であり、赤外線誘導ミサイルが捕捉する熱源を模倣する。

これにより、赤外線ホーミングミサイルは、本来の目標ではなくフレアに向かって進路を変更する。

このようにして空母は敵のミサイルから身を守る防御手段を装備しているのである。

スポンサードリンク

アメリカ空母を脅かす中国の飽和攻撃と新しい軍事システム

他国を圧倒するほどの戦力を誇り、無敵の強さを誇っているアメリカ空母打撃群ではあるが、現在、その優位性が揺らぎ始めている。

米国の軍事アナリストは「西太平洋上で中国軍の巡航ミサイル配備が著しく増強され、米国および同盟諸国は脅威に曝されている」との報告書を出した。

中国は、対艦弾道ミサイル、対艦巡航ミサイル、超音速対艦ミサイルなどの各種対艦ミサイルの性能を、飛躍的に向上させてきており、すでに数千発を保有している。

中国軍は、中国沿岸域に接近してくるアメリカ空母打撃群を撃破することを主目的としている。

このようなミサイルに対してアメリカ海軍は「イージスシステム」を導入している。

イージスシステムは128以上の目標を同時に補足し、その内の脅威度が高いと判定された10以上の目標を同時攻撃できる能力を持っている。

このシステムが導入された当初は、敵航空機から発射された対艦ミサイルの攻撃から艦隊を守ることが想定されていた。

しかし現在では、地上発射台、爆撃機、潜水艦、各種艦艇などの、あらゆるプラットフォームからからの攻撃が予想される。

イージスシステムも、これに対処すべく改良が常に行われている。

しかし、防空ミサイルの価格は、巡航ミサイルより遥かに高額であり、ミサイルの総数において、中国軍の各種巡航ミサイルは、アメリカ軍の防空ミサイル保有数を上回っている。

もし中国軍により、アメリカ空母艦隊へのミサイルの飽和攻撃が行われれば、イージス艦の防空ミサイルの数量には限りがあるため、対処が出来なくなる可能性がある。

一部においては「空母を中心とした海軍戦略は時代遅れである」という空母中心主義からの脱却を巡る議論が交わされ始めている。

現在の軍事分析において、中国軍がアメリカ海軍の空母打撃群を海上で正確に捕捉し、効果的にミサイル攻撃を行う能力を持つかどうかについては、まだ確信を持てない状況にある。

しかし、これは今後変わる可能性が高い。

中国が「C4ISR」と称される高度な軍事システムの開発を進めているからだ。

C4ISRシステムとは?

「指揮、管理、通信、コンピューター、情報、監視、および偵察」の機能を統合し、これを駆使することで、戦場における情報とコミュニケーションの優位性を確保することを目指している。

このシステムの完全な実現には、レーダー網とミサイル発射プラットフォームを結ぶ高速データリンクの構築が不可欠である。

この高速データリンクは、戦場における情報の伝達速度を劇的に向上させ、より迅速かつ正確な意思決定を可能にする。

これが実現すれば、中国軍は遠距離からでも敵の動向を把握し、タイミングよく精密な攻撃を仕掛ける能力を得ることになる。

イージスシステムの限界? 新たなミサイル脅威の影響とドローンの空母搭載

日米両政府は、中国やロシア、北朝鮮が開発を進めるマッハ5を超える極超音速兵器を迎撃するため、新型ミサイルを共同で10年以内に開発する方針を固めた。

極超音速兵器の迎撃には、早期にミサイルを探知・追尾できる態勢の構築も欠かせないため、米国は、多数の小型衛星を連携させて運用する「衛星コンステレーション」の構築を進めている。

現在、空母打撃群は、以前とは比較にならないほどの新たなミサイル攻撃の脅威にさらされている。

超音速で飛行してくる対艦ミサイル、大気圏外から艦隊目掛けて落下してくる対艦弾道ミサイル、それに、レーダーで探知されにくい超低空を飛行しながら艦隊を狙う対艦巡航ミサイルなど、各種ミサイルによる飽和攻撃を受けることが予想され、鉄壁を誇ったイージスシステムが突破される可能性が出てきたのである。

これらのミサイル攻撃に対処するため、レーザー兵器の開発が進んでおり、水上艦での実験も行われている。

レーザー兵器は、一発の照射に数百円程度しかかからず、何度でも照射が可能なので、ミサイルの飽和攻撃にも対応できる能力を持つ可能性がある。

また艦載機の攻撃力の向上については、ステルス戦闘機 F35Cと無人空中給油機 MQ-25の導入が進められている。

これにより、艦載機の行動半径が大幅に広がることが予想される。

これ以外にも、無人航空機の利用も検討されている。

MQ-9Bは、その前身である「プレデター」の発展型として、その能力を大きく拡張している。

海上保安庁にも導入されているこの無人機は、空母での運用を視野に入れた設計がなされている。

主翼と尾翼が取り外し可能で、これにより滑走距離を短縮し、空母への搭載が容易になる。

この無人機は、単発エンジンを機体の後部に搭載し、プロペラを後ろ向きに配置することで、効率的な推進力を実現している。

機首部分には高度なセンサーやレーダーを装備し、さらに上部には衛星通信用のパラボラアンテナを備えている。

尾翼はY字型のデザインで、両翼には合計6つの兵装を搭載するための取り付け部が設けられている。

この部分には増槽やヘルファイア対戦車ミサイル、レーザー誘導爆弾、スティンガー空対空ミサイルなど、様々な兵装を搭載できる。

将来的には、精密誘導能力を持たせたJDAMや空対空ミサイル、サイドワインダーの搭載も計画されている。

ロシア・ウクライナ戦争での使用例を見ても明らかなように、無人機やドローン兵器は、現代戦において単なる補助的な存在から、必要不可欠な要素へと進化している。

このため、今後の空母は、有人機と無人機が共存する多機能プラットフォームへと変化していくことが予想されている。

これは、現代の戦闘機と無人機の連携が、今後の戦争の形態をどう変えていくのかを示唆するものである。

次の動画では、空母甲板の5つの秘密と仕組みについて解説しよう。

Amazonのオーディオブック 
12万タイトルの本を好きなだけお楽しみいただけます。

・本の1冊分の月額で聴き放題
・料金をメリットが上回る
・いつでも読書できる
・読書量が格段に増え、積読が解消される
・長時間の読書も目が疲れない
・聴くたびに学びを感じる

公式ページはこちらをクリック