魚雷の威力と仕組み。1発で撃沈させる爆発のメカニズムと各国の魚雷開発
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1発で大型艦艇を撃沈するほどの破壊力をもつ恐ろしい兵器が魚雷である。

魚雷は潜水艦が必ず装備している兵器であり、ミサイルのように派手な炎や大きな音も出さず、水中から密かに発射されるため探知することが困難である。

世界最強の防空能力を誇るイージス艦や圧倒的な戦闘力をもつ空母ですら魚雷の脅威には勝てない。

今回は、水上艦艇にとって最も脅威が高いとされる各国の魚雷の性能について解説していこう。

しまかぜ

魚雷の追尾方法や破壊のメカニズムを動画で解説しているよ!

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魚雷が艦艇を追尾する3種類の方法

開発された当時の魚雷は発射後、そのまま直進して水上艦艇に衝突する兵器であった。

しかし、ターゲットが移動する予想位置に向かって発射する必要があったことから、もし途中でターゲットが速力を変えたり舵を切ったりした場合、予想位置が変わり命中させることは困難であった。

現代の魚雷には追尾用センサーが組み込まれており、ミサイルと同じように魚雷自体がターゲットを探知して追尾する機能を持っている。

では、魚雷はいったいどのような仕組みで追尾を行うのだろうか?

魚雷の追尾方法は3種類ある。

魚雷の前部に装備されているソーナーと呼ばれる音響装置から音波が送信される。

その音波が敵艦艇に当たって反射してきた音をキャッチして追尾するアクティブホーミングである。

もう1つは、敵艦艇が発生するエンジン音やスクリュー音を探知して、その音をたどって追尾するパッシブホーミングである。

そして3つ目は、艦艇がスクリューで水をきった際に、海上に残る航跡を追尾するウェーキホーミングである。

航跡はウェーキと呼ばれ、フネが進んだ後に数百mから数千mにも及び、長時間海上に漂う。

魚雷の上部にある航跡センサーが海上に漂うウェーキを感知して、それを辿っていくことで追尾を行う仕組みである。

一方、水上艦艇は潜水艦から魚雷が発射された場合、魚雷が水中を走る際に発生する航走音で判断できる。

魚雷の追尾から逃れるために音響装置を海に投下して、水中で雑音を発生させることで追尾を「おとり」にそらす対抗手段をとる。

しかし、この方法が有効なのは音を頼りに追尾してくるアクティブとパッシブ誘導である。

ウェーキホーミングの場合、音響装置は通用しないため極めて妨害に強い追尾方式といえる。

しかし、弱点がないわけはなく、ジグザグに進んだり円を描いたりして逃げることで、ウェーキを複雑に残して追尾を不安定にさせることは可能である。

また、有線魚雷というものがあり、これは発射後に一定距離まで潜水艦と魚雷が細い電線でつながった状態で誘導するものである。

敵艦艇付近まで潜水艦の乗員がリモートコントロールしているため、おとりや妨害は一切通用しないのだ。

対抗手段としては、艦艇側からも魚雷を発射して迎撃する対抗魚雷を使用することである。

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魚雷の破壊力と撃沈のメカニズム

魚雷で敵艦艇を攻撃した場合、水中ではどのような爆発が発生しているのだろうか?

実は魚雷が艦艇や潜水艦を破壊するメカニズムは意外に知られていない。

ミサイルであれば、ターゲットに当たって爆発するというわかりやすいメカニズムであるが、魚雷は船体に当たって爆発するよりも、少し離れた位置で爆発したときのほうがより強力なダメージを与えることができるのだ。

魚雷に装てんされている火薬は炸薬と起爆させるための点爆薬である。

魚雷が水中爆発を起こすと、5万気圧の3000℃を超えるガスが一瞬にして発生する。

このエネルギーは水中を秒速7.6kmの衝撃波となって襲いかかってくる。

それと同時に高圧ガスが球状に膨張して、船底の中央部分を急激に上に押し上げる。

さらに水中爆発で発生したジェット水流と呼ばれる強力な水流が直撃することで船体強度の限界を超えて、まっ二つに折れてしまうのである。

水上艦艇は攻撃を受けた場合に備えて、浮力を維持するために数百の区画に分けられている。

区画は水密ハッチで完全に閉鎖されているので、ミサイルや大砲が当たっただけでは、一部の区画にしか浸水しない構造となっており簡単には沈まない。

しかし、魚雷攻撃により、船体が真っ二つに折れてしまっては、その複雑な構造も意味をなさず、一瞬にして浮力を失い沈没してしまうのだ。

敵艦艇を1発で仕留めるには、魚雷を船底の真下で爆発させる必要が出てくる。

それをコントロールするのが、起爆センサーである。

以前は船体に接触することなく、最適な位置で爆発させるために磁気センサーが使用されていたが、
誤作動が多く、最適なタイミングで爆破できないことが多かった。

現在は魚雷から上向きに音波を出すソーナ一により、確実に位置を把握して起爆する仕組みがとられている。

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日米中の魚雷の性能と引き上げられた中国魚雷

海上自衛隊の潜水艦が装備している魚雷は、1889年に制定化された89式魚雷で、船体前部に6門の533mm発射管を装備している。

追尾方式は、先ほど説明したアクティブとパッシブの2種類である。

水中速力は低速と高速の2段階を切り替えることができ、時速50km前後で追尾することができる。

さらに防衛省の公表によれば、追尾方式は従来のセンサーに加え、目標の音響画像化を用いて、潜水艦のサイズや形状を識別することで、魚雷防御手段である「おとり」を排除できる研究を実施したとされている。

日本の魚雷は、アメリカよりも少し遅れをとっているが、新しいセンサーの開発などで着実に近代化が進んでいる。

また、2018年に制定化された18式魚雷が、2022年頃から納入開始になる予定である。

一方、アメリカは、すべて原子力潜水艦が配備されており、533mm魚雷が全潜水艦に装備されている。

もっとも先進的なMk48魚雷は、長さ5.8m、重量1.6トンで、TNT火薬544キロに相当する炸薬が搭載されている。

1発あたりの価格は約5億円という高価な魚雷である。

動力はピストンエンジンで、速力は時速115kmという速さで追尾することができる。

アメリカは533mm魚雷のアップデートを繰り返すことで、性能を向上させ、最大の問題であった魚雷が走るときに発生する水中雑音を著しく低下させることに成功した。

これにより敵の魚雷探知率を低下させることができるようになったのだ。

また、水深が浅いエリアと深いエリアのどちらの潜水艦にも対応できるように、新型ソーナーを搭載し約3600mの探知能力のほか、魚雷防御装置と潜水艦を区別できる能力ももっている。

中国の魚雷については、当初は対艦攻撃と対潜攻撃では別々の魚雷が使用されていたため、作戦によって搭載する本数をそれぞれ変える必要があった。

しかし、技術の発展に伴い、対艦攻撃と対潜攻撃を1本で実現できる魚雷が開発され、西側諸国並みの性能をもつ「魚6」(Yuろく)魚雷が開発された。

最高速力は約120kmで、巡航速力での射程は45kmにもなる。

さらに有線による誘導能力も備えているため、妨害にも強いと思われる。

この「魚6」魚雷であるが、南シナ海に面するフーイエン省で、ここで暮らす漁師が網に引っかかった魚雷を引き揚げたことで話題となった。

ベトナムの領海内、沿岸からわずか7.4kmしか離れていない海底で発見された。

この魚雷は「魚6」の訓練弾ではないかと推測されている。

現在、各国は魚雷に対して防御策を研究しており、艦艇の魚雷防御の存在を無視して攻撃することはできない。

確実に撃沈するためには、魚雷防御を排除しつつ目標に命中させる必要がある。

そのためには、まず魚雷発射の事実を敵に察知されないことが最も効果的であり、魚雷発射音や水中を走る航走音の静粛化を図ることが求められている。

魚雷防御を避けつつ複雑な動作や判断を行う現代魚雷は、今後も改良が加えられ、より精度や静粛性が高いものが開発されていくだろう。

次の動画では、魚雷防御装置を2種類装備した海上自衛隊の護衛艦あさひ型の性能について解説しよう。

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