なぜワグネルは反乱を起こした？消えたプリコジンの目撃情報と今後のワグネル

民間軍事会社ワグネルの代表、プリゴジン氏が武装部隊をモスクワに送り込んだ。

内乱の火花を燃やした後、彼は部隊を引き上げ、その後の情報は断絶したものの、現在彼は隣国ベラルーシにいると噂されている。

プリゴジン氏とベラルーシのルカシェンコ大統領との間で交わされたとされる”交渉の詳細”も明らかになってきた。

ワグネルはかつてウクライナ侵略にてロシア軍の味方として戦闘に参加していた。

しかし、最近では戦略の違いからロシア国防省との確執が深まっていた。

今回は、民間軍事会社トップのプリゴジン氏の行方と、反乱を起こした理由、そしてトップなきワグネルの今後はどうなるのかについて解説していこう。

反乱を起こした”プリゴジン氏”はどこへ消えたのか

高精度な衛星画像により、ワグネルがベラルーシで設けたと思われるキャンプ地に、新たに設置されたテントのような何百もの建造物が捉えられた。

ウクライナが反攻に出る中、ロシアはワグネルの創設者であるプリゴジン氏の反乱に揺れている。

プリゴジン氏は「ロシアの人々は、我々が国内の官僚制やその他の問題と戦っていると見ている」と発言した。

その声を最後に彼からの情報は途絶えた。

プリゴジンが所有するとされる「エンブラエル・レガシー600型機」がミンスク南西の飛行場に現地時間の7時37分に着陸したと、ベラルーシの人権監視団体「ハジュン・プロジェクト」が報じた。

さらに、仲裁に入ったベラルーシのルカシェンコ大統領が彼が現在ベラルーシにいることを公にした。

ロシア国内に潜伏しているとの見方も出てきたが、ロシアのサンクトペテルブルクにプリゴジン氏に酷似した人物が現れた。

地元の報道機関は、「プリゴジン氏そっくりの男」が写真に写っていると報道。

関連企業のヘリコプターに乗り込んだとのことだが、マスクをしているため、完全に確認できない。

その一方で、イギリスのBBCは左手を指摘した。プリゴジン氏は指が一部欠けているが、この写真の男性の指はそう見えないと伝えている。

プリゴジン氏はなぜ反乱を起こした？

モスクワを目指し、進撃を開始した反乱により、ロシア軍の1機の輸送機と7機のヘリコプターが撃墜されたと見られ、これはロシア空軍にとって、ウクライナ侵略開始以来の1日での最大級の損害である。

「我々は軍のリーダーシップの悪事を阻止する義務がある」と主張しながら、自軍に対する攻撃を訴えた。

情報機関の分析では、プーチン大統領は反乱の兆候を少なくとも24時間前から察知していた可能性がある。

これが事前に防げなかった理由として、政府上層部の不一致や内部の対立が垣間見える。

だが、プリゴジン氏はSNSで音声を投稿し、「進撃の目的は、ロシア軍のリーダーシップの無能さを暴露することであり、プーチン政府を転覆させるものではない」と弁明した。

彼はさらに、ロシア国防省などの”陰謀”が原因でワグネルは解散すると発表した。

ワグネルはロシア南部ボロネジ州において、すべての軍事施設を制圧した。

創設者であるプリゴジン氏がモスクワ進攻を発表すると、多くの市民が喝采を送った。

群集がプリゴジン氏やワグネルの兵士に握手を求め、写真やビデオを撮影する光景は、まるで「解放軍」への声援を送るかのようだった。

しかし、ロシア連邦保安局は、プリゴジン氏が「武装反乱を唱えた」として捜査を開始した。

プリゴジン氏の声明が発表された後、モスクワでは警備が強化され、軍用車両が目撃され、緊張が高まった。

プーチン大統領はテレビ演説で、「我々は裏切りに直面している。ワグネルの行動は反乱だ」と非難し、徹底的な抑制を強調した。

だが、プリゴジン氏はモスクワまで残り200キロの地点で「進行を停止する」と発表した。

停止の理由はまだ不明だが、ロシア政府と何らかの交渉が行われた可能性がある。

「我々はモスクワまで200キロの地点に達した。ロシア人の血が流れる責任を認識し、方向転換する」と述べた。

ロシア政府はプリゴジン氏の捜査を停止し、ワグネルの兵士に対する罪も問わないと発表した。

プリゴジン氏が信頼していた「ロシア軍で最も有能な司令官」は、軍の第3位であるスロビキン副司令官だ。

彼は元々ウクライナ侵攻の総司令官だったが、2023年の1月、好転しない戦況の責任を問われ、副司令官に降格された。

スロビキン氏を含む30人以上の軍や情報当局の高官が、ワグネルのVIPとして登録されていたことが判明したのだ。

今回の反乱後にワグネル側と連携していた疑いで逮捕された。

プーチン大統領は再度テレビ演説を行い、プリゴジン氏を厳しく非難し、処罰を検討していることを明らかにした。

一方、ベラルーシの国営メディアはプリゴジン氏が国に入ったと報道。

専門家の中には「たとえプリゴジン氏がベラルーシで保護されていても、彼が暗殺される可能性がある」と指摘する者もおり、現状は依然として予測不能だ。

トップなきワグネルの今後は？

民間軍事会社「ワグネル」は政府から年間1400億円の資金援助を受けており、最大4万人の囚人を戦場に送り込んで影響力を増してきた。

プリゴジン氏はかつて強盗や詐欺の罪で9年の刑を務めた後、食事のケータリングビジネスを通じてプーチン政権との繋がりを築き上げ、その後「コンコルド」の企業グループを急速に成長させた。

彼はまた、学校の給食や不動産業を始めとしたビジネスの他に、SNSを通じて偽の情報を流し、世論を操る「トロール工場」と呼ばれる組織を設立した。

トップなきワグネルの本社ビルではロゴが剥がされている。

ただし、新たな兵士の募集はインターネットでいまだに公開されている。

プーチンがウクライナ侵攻を開始した2022年2月以前、ワグネルの主要な活動は中央アフリカ共和国やマリなどの政府の警護だった。

ワグネルの戦力はロシアにとってなくてはならない存在であり、その証拠として政府はワグネルに対する大量の資金提供を認めている。

しかし、ワグネルの戦闘員が必ずしも正規軍の指示に従うわけではない。

ワグネルが分割され、その結果としてロシア軍の組織が強化される可能性があるが、プリゴジンの熟練した部下たちが本当にロシア正規軍の命令に従うかどうかは不明である。

反乱者を正規軍に取り込むことは大きなリスクを伴う。

しかし、ウクライナの戦場ではワグネルが正規軍よりも大きな戦果を挙げていることを考えれば、プーチンはワグネルの人材と経験を何とか確保したいと思っているだろう。

ワグネルはウクライナだけでなく国際的にも活動を続けるだろう。

ただし、それはロシア国防省の厳格な統制下で行われる可能性が高い。

ロシア政府はワグネルという資産を放棄したくないと考えているだろう。

今回のプリゴジン氏による反乱は、ロシア国内の治安における弱点を露呈し、ウクライナに駐留するロシア軍兵士の士気を大幅に低下させることになるだろう。