緊迫の「日本人救出作戦」空自機3機によるスーダン紛争からの退避
Amazonのオーディオブック 
12万タイトルの本を好きなだけお楽しみいただけます。

・本の1冊分の月額で聴き放題
・料金をメリットが上回る
・いつでも読書できる
・読書量が格段に増え、積読が解消される
・長時間の読書も目が疲れない
・聴くたびに学びを感じる

公式ページはこちらをクリック

2023年4月15日、RSF(即応支援部隊)と国軍の衝突から始まったスーダンの内戦。

残された邦人に対し、どのような救出作戦が行われたのだろうか?

多くの邦人が取り残されたまま内戦が始まってしまったため、個々の脱出が困難になってしまったのである。

日本政府は、この邦人救出のために航空自衛隊のC-2、C-130 、KC-767を派遣した。

この作戦では、アフガニスタンでの教訓を活かし、迅速に作戦を遂行できるのかが課題となった。

今回は、空自機による行われた「スーダン邦人救出作戦」の概要と派遣された航空機の特徴、そしてわずか1時間で遂行されたアメリカ軍の救出作戦について解説していこう。

しまかぜ

救出に向かった空自機の特徴を動画でも見てね!

スポンサードリンク

空自機による危機脱出 邦人救出作戦

スーダン邦人救出作戦では、約60人の邦人とその家族が救出対象となった。

その作戦は陸路か空路かの選択肢しかない。

国連が主体となり、車列を組んで陸路で移動することとなったのだ。

作戦の概要であるが、スーダンの首都ハルツームから、670㎞先の脱出拠点であるポートスーダンまでは陸路で移動、国際空港からC-2輸送機でジブチに移動、ジブチで待機している自衛隊機に乗り込んで日本に退避するという流れであった。

引用:朝日新聞

ところが、その道のりは長く670㎞とはいえ、集落を除いては、ほとんどが地形的に砂漠である。

平時ですら12時間ほどの時間を要する道のりであったが、長い車列で慎重に進んだことから30時間ほどかかったという。

疲労と眠気が襲う中、車列から遅れれば「命の保証はない」と自らに言い聞かせ車を運転し続けたドライバー。

この車列はスーダン人兵士らが警護していたと証言されている。

この時、脱出拠点であるポートスーダンからどのように退避するかは判明していなかったという。

国際空港から輸送機でジブチに到着したのち、すぐさま待機していた自衛隊機に乗り込み日本に飛び立った。

今回の救出作戦で使われた自衛隊機はC-130,C-2、そしてKC-767の3機である。

C-2輸送機は、日本の川崎重工業が開発・製造した国産輸送機で、C-1の後継機として開発された中距離輸送機である。

自衛隊の国際平和協力活動では主戦力となっている輸送機だ。

最大離陸重量は141トンで、最大積載量は37トンで、航続距離7000㎞と長く、一番の特徴は舗装された滑走路でなくても離着陸ができるという点である。

C-2輸送機が配備されたのは2017年と比較的新しく、それだけに最新装備を整えた新鋭の輸送機といえるだろう。

2つ目の機体がC-130輸送機で、元々はアメリカ空軍が使用していたものだが、自衛隊でも使用されるようになった戦術輸送機だ。

軍用輸送機の決定版ともいわれるほどの機体で、今や世界69カ国もの国軍で使用されている。

高い耐久性と堅牢な構造、強力なエンジン、そして広い主脚の間隔などの設計要素によりC-2と同じく舗装された滑走路以外の砂や砂利などの不整地での離着陸が可能である。

かつて、東日本大震災で空港の滑走路が軒並み使用不能となった仙台空港に真っ先に降り立ったのがアメリカ空軍のC-130である。

そして、KC-767であるが、本来は輸送機などの空中給油機として使われる機体だが、人等の輸送機としても使用想定がされている機体だ。

元々ボーイング社製の旅客機B767を元にして作られた機体のため、人を輸送する際のスペースが十分に確保されている。

見た目はそのまま旅客機に見えるが、機体後部に空中給油用のノズルを装備している。

航続距離が長く、長距離輸送には最適な機体といえるだろう。

ただし、旅客機ベースの機体であることから、滑走路のような整地でなければ離着陸はできない。

このように、自衛隊機を運用して邦人救出作戦が行われたがアメリカでは1時間足らずで100名を救出した迅速な作戦が決行されたのだ。

スポンサードリンク

アメリカの救出作戦と3機の支援機

アメリカによるスーダン救出作戦は非常に迅速かつスムーズだった。

アメリカは2023年4月22日、MH-47を3機派遣し、1時間足らずで現地大使館の外交官を中心に100人もの人員を退避させたと発表した。

「チヌーク」と呼ばれるCH-47を特殊作戦用に改造した機体であり、頭文字のMは「特殊作戦用」という意味を持っている。

この機体は平時においては特殊部隊作戦の物資・人員輸送を担っている。

人員のピックアップや迅速な降下をするため、パラシュート降下などの特殊操作装置が設置可能なヘリコプターだ。

また、燃料や弾薬、車両などの重量物を吊った状態で輸送できるスリングオペレーションも可能である。

特殊部隊に関わる輸送を担うため、通常のCH-47よりも目立たないように黒い塗装がされており、夜間飛行も可能だ。

災害時の悪環境や悪天候にも強く、陸上に着陸せずとも人員をピックアップすることができる。

さらに暗視機能を搭載しているため、時間を問わず救出活動ができる。

特殊部隊作戦用と銘打っているが、これらの機能から災害時の人道支援や救出にも用いられる機体だ。

世界中で起きている紛争時の脱出にも使われることがある。今回の救出作戦にもまさにぴったりの機体といえるだろう。

救出されたのはアメリカ以外の大使館職員もいるため、乗せられるだけ乗せて救出作戦を敢行したといえる。

この作戦で使われたMH-47輸送機3機は、すべて特殊作戦専用に改造された機体である。

救出作戦のスムーズに行うためにその他の航空機による支援もあった。

「空飛ぶ救急車」ともいわれる「コンバットキングII」は、広い貨物室を持っており、乗員、救助者、機材などを輸送することができるほか、貨物室は医療モジュールや通信システムを設置することも可能である。

短距離離着陸性能を持ち、未舗装の滑走路や不整地でも離着陸ができることからスーダンのような遠隔地や荒地での救助活動や作戦支援が容易になる。

電子戦に強い「コンバットタロンII」は、敵のレーダーや通信を妨害するための先進的な電子戦装置を搭載しており、敵の追跡や攻撃から機体を守ることができる。

また、空中給油能力があり、長距離・長時間の作戦に対応でき、他のヘリコプターや固定翼機への空中給油も行うことができる。

空から砲弾の雨を降らすガンシップ「ゴーストライダー」の支援もあった。

ガンシップとは、敵の脅威に対して高い火力と精密射撃能力により、特殊作戦部隊や地上軍の支援を行う機体だ。

1分間に200発を連射できる30mm ガトリング砲や105mm 榴弾砲は、20mから30mの範囲を爆風で破壊できる。

その他、精密誘導ミサイルや爆弾など、多様な武器を搭載しており、低空から地上の敵をせん滅することが可能だ。

機体はC-130をベースにしているため、ゴーストライダーは比較的高い速度と航続距離をもち、広範囲における作戦遂行が可能となっている。

対地攻撃だけでなく、対艦攻撃や都市戦闘、対テロ作戦など、幅広い任務に対応できる設計がされている。

これらの支援機により、アメリカ軍は速やかにスーダン救出作戦を遂行することができたのだ。

スポンサードリンク

武器が使えない法律の足かせ

陸路での邦人救出作戦は、非常にリスキーであり、軍用車両といえど攻撃されれば危険が多い。

今回の作戦は自衛隊法84条の4項にある「在外邦人等の輸送」を想定している。

これは、海外における災害や大規模な騒乱などにより、日本人の生命や身体の保護が必要となった際に適用される。

この条項によると、武器の使用範囲は非常に限られているのだ。

武器使用範囲は隊員と避難者らを守るためであり、相手に危害を与える場合は正当防衛の範囲内でしか認められていない。

つまり、ほぼ攻撃能力・反撃能力がない状態での陸上輸送となる。

紛争状態に陥っている首都からどうやって陸上ピックアップを行うのか、今回の作戦では今まで以上に他国軍や国連との連携が求められたのだ。

陸上輸送に関して言えば、アフガニスタンのような場合でも、自衛隊が必ずしも現地に車両を配備できるわけではない。

自衛隊が実際に実行可能なこと、法的な制約、受入国の状況を考慮して、複数の要素が組み合わされた運用となることは今後の課題である。

次の動画では、今回の救出作戦で使用されたC-2輸送機の内部について解説しよう。

Amazonのオーディオブック 
12万タイトルの本を好きなだけお楽しみいただけます。

・本の1冊分の月額で聴き放題
・料金をメリットが上回る
・いつでも読書できる
・読書量が格段に増え、積読が解消される
・長時間の読書も目が疲れない
・聴くたびに学びを感じる

公式ページはこちらをクリック