海上自衛隊の潜水艦「そうりゅう」が貨物船と衝突事故!乗組員3名が負傷!
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2022年2月6日、高知県沖の静かな海域で、突如として起こった悲劇。

海上自衛隊の最新鋭潜水艦「そうりゅう」が浮上中、巨大な貨物船「オーシャン アルテミス」と衝突した。

この重大な一報が司令部に届いたのは、驚くべきことに事故発生から約3時間20分後であった。

事故の衝撃で「そうりゅう」の通信能力が完全に失われていたのだ。

640億円以上の建造費をかけ、世界最高水準の性能を持つ「そうりゅう」が、一体なぜこのような事故に至ったのか?

日本国民の心に疑念が浮かんだ。

今回は、「そうりゅう」と貨物船が衝突した事故の概要と、その驚くべき原因、潜水艦がどのようにして船舶を確認しているのかについて解説していこう。

しまかぜ

この内容は動画でも見れるよ!

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潜水艦「そうりゅう」と貨物船「オーシャン アルテミス」が衝突

潜水艦「そうりゅう」は、2月6日に、乗組員約90名を乗せ、広島県呉市にある潜水艦基地を後にして、船体修理後の訓練に出港した。

この訓練は、船体のメンテナンスのため、造船所のドックでの長期の修理を経て実施される「再練成訓練」といわれるものだ。

訓練の目的は、長期の整備期間で技術や知識が低下した乗組員のスキルを再び高めるためである。

経験豊富なトレーナーたちが乗船し、各乗組員に対しての厳しい指導やフィードバックが行われるのだ。

同時に、貨物船「オーシャン アルテミス」は、船長を含む20名の乗組員と共に、中国の青島から岡山県倉敷市の水島港へ向かっていた。

「オーシャン アルテミス」の全長は229mであり、海上自衛隊最大の護衛艦である全長248mの「いずも」と同じくらいのサイズである。

午前11時頃、潜水艦そうりゅうは、潜望鏡やアンテナを海面に現わす「潜望鏡深度」に達しようとしていた。

この状態を潜水艦では「露頂」と呼ぶ。

潜水艦の4種類の潜航については、別の動画で解説しているので、そちらをご覧いただきたい。

「そうりゅう」が浮上しようとした瞬間、海面近くで後方から接近してきた「オーシャン アルテミス」が、そうりゅうの右側面に接触した。

高知県足摺岬の南東約50キロの位置での出来事だった。

「そうりゅう」の全長は84mで、この2隻のサイズ差は約2.5倍、重量にして3,000トンと50,000トンの衝突だ。

それは、軽自動車と大型トラックが衝突するようなものである。

そうりゅう」艦内には大きな衝撃が走り、3名の乗組員が怪我を負い、艦の上部に位置する艦橋の右側が破壊され、さらに「潜舵」も変形してしまった。

さらに、通信アンテナも損傷し、外部との通信能力を失うという事態に陥ってしまった。

事故発生から約3時間20分後の午後2時20分ごろ、そうりゅうは携帯電話が通信可能なエリアへ移動し、所属先である第1潜水隊群に状況を報告した。

一方、オーシャンアルテミスのダメージは、水面下の前部に、擦過痕と約20センチのひび割れが見受けられる程度で、大きな問題はなく、一時はその場を去った。

この接触の原因は、後に解説する潜水艦の浮上の手順に問題があったと指摘されている。

海上自衛隊の潜水艦は、高圧に耐えうる構造のため、窓は存在しない。

そのため、潜望鏡を上げる前に周辺の船舶がいないかをしっかりと確認しないと浮上できないのだ。

では、彼らはどうやって潜望鏡を上げるまえに付近の船舶を確かめているのであろうか?

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潜水艦の目と耳となるソーナーの原理と弱点

潜水艦は、密閉された深海の世界での任務遂行において、目視による周囲の確認が一切不可能だ。

そんな潜水艦の中に、音波を使って外の情報をキャッチする驚くべき装置が装備されている。

それがソーナーである。

ソーナーには、「アクティブソーナー」と「パッシブソーナー」と呼ばれる2つのタイプが存在している。

アクティブソーナーは、自ら音を発して、その反響を受け取ることで物の位置を探るシステムである。

一方、パッシブソーナーは、周囲の音をただ受け取り、その音から情報を得るものだ。

日本の海上自衛隊の潜水艦は、敵に音を感知されるリスクがあるため、パッシブモードのみを搭載している。

それゆえ、彼らは外部からの音情報のみを頼りにしている。

この音の情報分析を行う専門家は「ソーナーマン」と称され、音波分析の専門家が配置されている。

彼らは、ディスプレイ上に映し出されるソーナーから得られた音響信号をリアルタイムでビジュアル化し、目標物かどうかを見極める役割を担っている。

ソーナーマンはリアルタイムで複雑な音の情報を解析しなければならない。

彼らに求められる技術は高度であり、陸上での徹底した訓練が行われ潜水艦に乗ることができる。

だが、実際の海上では、海の状況が刻々と変化し、ソーナーに多大な影響を及ぼす。

これにより、海中の音は必ずしも明瞭に聞こえるわけではなく、その音は非常に遠くまで伝わるため、不要な音もソーナーに拾われてしまう。

この困難さが、後に起きる事故への伏線となったのである。

加えて、ソーナーの受信部分は艦の前方にあり、後方は自らのスクリューの影響で「バッフル」という死角の部分ができる。

つまり、潜水艦の真後ろはスクリューの影になって基本的に音が探知できない構造となっている。

潜水艦が対象の敵潜水艦を監視・追跡するとき、その敵潜水艦のバッフルエリア、つまり音が検知できない部分に接近するのが一般的な戦術だ。

戦闘機でいうなら後ろにつくドッグファイトのような形になる。

冷戦の時代には、アメリカとソ連の原子力潜水艦がこのような戦術を頻繁に繰り広げていた。

また、興味深い点として、レーダーとは異なり、ソーナーは位置方向は特定できても、どれだけの距離であるかを正確に知ることはできないのだ。

このため、潜水艦が水面に出る際は、この死角である「バッフル」を解消するために水中で進路を何度も変更し、周囲が安全かを確認した上で、浮上するのだ。

このようにして、潜水艦はソーナーを活用して周囲の安全を確認したのちに、やっと潜望鏡を上げてることができ、最終確認をしているのである。

しかし、今回の事故はその死角を確認する際に「あること」が原因でソーナーマンが誤認したことが指摘されている。

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衝突の原因 重なる2つの目標

今回の衝突事故の主な要因とされるのは、潜水艦「そうりゅう」が浮上の手続きを進める中で、ソーナーを利用した捜索の際に「オーシャンアルテミス」の音波

を、他の遠くの船と間違えてしまったことだと指摘されている。

実際に、「そうりゅう」は浮上を行う前段階でソーナーを使用して周囲の音を捜索していた。

しかし、ソーナーマンが特定のエンジン音を検知できなかったことから「安全だ」と認識し、近隣に船はいないと結論付けたのである。

10時47分、「そうりゅう」が探知していたのは、「オーシャンアルテミス」とは異なる船の音であり、本来ならば「オーシャンアルテミス」の音を識別するはずの

方向からは、何の音も検出されなかった。

このため、乗組員たちは別の音源を認識していると判断した。

この誤判の背後には、潜水艦と両船の相対位置が変わる中、二つの音源が同じ方向から聞こえたためのものだ。

乗組員は、音の変化に気づいていたものの、これを重要とみなさず、責任者である哨戒長への報告を怠った。

潜水艦は通常3交代制のシフトで配置についており、その責任者が艦長の代わりを務める哨戒長という幹部自衛官である。

すべての報告は哨戒長にしなければならず、現場の判断を行う責任者である。

さらに10時49分、二つの船の音が混同される事態が生じた。

このとき、異なる船の音が「オーシャンアルテミス」の音に変わり始めた。

それでも、現場の乗組員は、変わった音の原因を船の向きの変更だと解釈し、結果として「オーシャンアルテミス」と他の船との区別がつかず、悲劇的な衝突が起こった。

報告書によれば、10時51分「そうりゅう」と「オーシャンアルテミス」は真正面から接近しており、「オーシャンアルテミス」の音が、船の構造により弱まり、人

間が聞き取れないレベルとなっていたとされる。

事故時の詳しい水中状況や「オーシャンアルテミス」の放出する音の強度は不明だが、この点を明確にすることは難しく思われる。

これらの事象は、技術、訓練、そして対応能力の重要性を我々に強く思い起こさせる。

特に深い海の下での操作は、常に危険と隣り合わせであり、乗組員の安全は最優先事項となる。

最後に、全ての潜水艦乗組員の安全を祈りつつ、今この瞬間にも、日本の海の平和と安全を守ってくれている自衛官がいることも忘れてはならない。

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