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兵器で相手を圧倒するには「遠距離から一方的に殴れ」が大原則である。
これは戦闘の基本原則として長い歴史を持ち、戦艦が次第に巨大化し、より大きな砲を搭載するようになった背景にもこの思想が反映されている。
この進化の目的は、敵を超える火力で遠方から圧倒することにあった。
しかし、時代は変わり、巡航ミサイルのように、数千キロメートルもの驚異的な射程距離を持つ兵器が現れたのだ。
このような中、日本が開発を進めているレールガンのような兵器システムが、本当に効果的なのかが疑問である。
今回は、レールガンの5つの弱点とアメリカが開発を断念した理由について解説していこう。
レールガンの5つの弱点
①電力問題
電磁レールガンは、その圧倒的な破壊力に目を引かれがちだが、実際には数多くの弱点を持っている。
最も顕著なのは、一発発射するごとに膨大な量の電力を消費する点で、そのエネルギー効率の悪さは目を覆うものがある。
一回の発射に数万キロワットから、場合によっては100万キロワットを超える電力を必要とする。
このような莫大な電力をどのようにして確保するかが、レールガンを実用化する上での主要な挑戦である。
②電磁パルスの影響
レールガンは大電流を流すことでレールの周りに強力な磁界を発生させる。
そのため、発射に伴い生じる電磁パルスは、周囲の電子機器に重大な影響を与える可能性がある。
レールガンを艦船や戦車に搭載する際は、これらの電子機器を電磁パルスの影響から保護する措置が不可欠だ。
また、高速で発射される際の反動は著しく、これを吸収するためには重く大きな構造が必要とされることが、特に艦船への搭載時に制約となる。
レールガンの最大の弱点は、連続して発射できない点にある。
大量の電力を使用するため、発射後には電源を充電する時間が必要となり、その間発射できない状態になる。
これが、レールガンを実用化する上での大きな障害である。
加えて、弾薬の自動装填の困難さが発射効率を低下させる問題もある。
これらの技術的な挑戦は、レールガンの実現に向けた道のりを困難にしている。
レールガンが抱えるこれらの弱点や技術的な課題が解決されなければ、その実用化は遠い夢となる。
高い破壊力を秘める一方で、エネルギー効率の悪さや運用の非効率さといった致命的な弱点を抱えている。
③誘導砲弾ではない
レールガンが直面している弱点の中でも、特に指摘されるのが、誘導ミサイルのように目標を追尾できない点だ。
このシステムでは、砲弾が一度発射された後、その軌道を修正することは不可能である。
つまり、目標に対しては発射前に精密な予測と照準が必要とされ、特に動く目標に対する命中は極めて困難になる。
対照的に、誘導ミサイルは飛行中に目標を追尾し、軌道を修正する能力を持つ。
レーダーや赤外線センサーを用いて目標を定時に捕捉し、ミサイルの方向性や翼の角度を変更することで、動いている目標にも高い確率で命中させることが可能だ。
レールガンを使用する際は、目標の動きを精確に予測し、発射のタイミングと照準を完璧に合わせなければならない。
しかし、速度が速い艦船や航空機などを正確に捉えることは、実際には非常に難しい。
発射後に砲弾の経路を修正できないため、予測に少しでも誤りがあれば、命中率は大きく下がる。
さらに、レールガンでは、目標までの距離によって命中精度が異なる。
極超音速で飛翔するレール弾は、発射直後は高い精度を誇るが、飛距離が伸びるにつれて、風や重力による影響を受け、軌道がズレ、誤差が積み重なっていく。
これに対して、誘導ミサイルは軌道修正が可能であるため、長距離の目標でも高い命中精度を維持できる。
目標の捕捉、追尾、軌道修正の機能を持っているため、移動する目標に対する対応力が高い。
レールガンが目標を追尾できないことは、高度な発射制御技術と照準技術が不可欠であるという大きな課題を生んでいる。
目標の動きを正確に把握し、即座に計算して発射する必要があるという点が、この技術の実用化への道のりにおける重要な障害の一つとなっている。
④破壊力の弱さ
レールガンは、その圧倒的な貫徹力で知られるが、面的な破壊力においては従来の火砲やミサイルと比較して劣る側面がある。
従来の大砲が使用する高爆発性砲弾は、広範囲にわたって強大な破壊力を持ち、衝撃波や破片によって建築物を破壊し、広い範囲で人的被害を引き起こすことが可能だ。
一方で、レールガンによる射撃は非爆発性の砲弾を使用し、その破壊力は運動エネルギーに基づく貫徹力に特化している。
これは、発射された砲弾が持つ高速度と密度によるもので、周囲への広範囲な被害は限定的である。
ミサイルの場合、装備される弾頭によって、数トンのTNT相当の爆薬を含むものから、核弾頭や化学兵器を搭載したものに至るまで、破壊力のスケールは様々で、広範囲の対象を壊滅させる能力を持っている。
このような弾頭は、レールガンの砲弾とは異なり、大規模な破壊行為に対応できる。
レールガンの利用する砲弾は、主に運動エネルギーを活用した点的な貫徹に優れており、そのため、面的な破壊範囲は狭く制限される。
この限定的な破壊力は、特定の目標に対する精密攻撃には適しているが、広い範囲を対象とした攻撃には向かない。
実験においても、レールガンから発射される砲弾の貫徹力は従来の砲弾を上回る一方で、広範囲への追加的な損害は最小限に抑えられることが確認されている。
これは民間人被害の抑制には有利だが、敵の広範囲施設や兵力に対する制圧射撃には不適合であるとされる。
このため、レールガンは単体の目標に対する圧倒的な貫徹力を持つが、その面的破壊力に関しては、大砲やミサイルのような従来の兵器には及ばない。
これはレールガンを集団攻撃よりも、特定の高価値目標への精密打撃に特化させるべきであることを示唆しており、その運用に際しては、この特性を十分に理解し活用する必要がある。
その高い精度と限定的な民間被害の可能性はレールガンの利点であるが、広範囲への破壊力を期待する場合には限界がある。
⑤耐熱性と摩擦による耐久性
レールガンの実用化への道のりにおいて、レールの耐熱性と摩擦による耐久性の問題は大きな障害となっている。
レールガンは、瞬間的に大電流を流し、マッハ7(時速約8600km))の超音速で弾丸を射出する。
このため、電流による加熱が生じて砲身内部が激しく削れてしまうのだ。
発射の瞬間、砲弾とレールの間で発生する強大な電磁力は、レール表面に極端な摩擦熱を生じさせる。
この過度の熱はレール材料を急速に劣化させ、耐久性を大幅に損なう原因となる。
レールガンに使用される銅や銅合金、タングステンなどの金属は、耐熱性が限られており、高温による変形や損傷が起こりやすい。
仮に発射毎にレールの交換が必要な状況になれば、実用化は非現実的である。
アメリカの実験によれば、射撃実験で、わずか12発から24発の発射後にレールが使い物にならなくなる事態が発生している。
この問題への対処として、レールの耐熱性及び耐摩擦性を向上させる工夫が求められている。
レール表面に施される特別な熱処理やセラミックコーティングが考えられているが、まだ完全な解決策には至っていない。
また、レールを強化する努力と並行して、発射時における熱負荷を抑える技術の開発も重要となる。
加えて、発射に伴う強烈な反動がレールに与える影響も見過ごせない。
反動によって引き起こされるレールの歪みや損傷は、その寿命を大きく削る。
レールが持つべき十分な強度と反動を吸収するための対策が、別の重要な課題である。
レールガンを連射可能にするためには、レールの寿命を延ばすことが欠かせない。
毎回の発射後に交換が必要だと実用的ではなく、一定数の連射が可能であることが望まれる。
しかし現在、レールの耐熱性や耐摩擦性が不十分であり、わずかな発射数で致命的なダメージを受けてしまうのが現実だ。
レールの耐熱処理と摩擦による耐久性の向上は、レールガンを実際に戦場で使用可能にするための重大な挑戦である
夢の超電磁砲システムの実現断念!アメリカがレールガン開発中止へ
アメリカ政府がレールガンの開発を中止した背後には、これらの課題が大きく影響している。
レールガン開発では米海軍が10年以上前から先行していたが、米軍は2022会計年度への予算計上を断念した。
巨額の予算を投じても、必要とされる膨大な電力供給やバッテリー技術の遅れが、エネルギー効率の改善を阻んでいた。
現在の技術では、必要なエネルギー源をコンパクトかつ軽量で実現することが困難で、これが実用化への大きな足かせとなっていた。
電磁パルス対策、反動の問題、自動装填システムの開発も期待通りには進まず、連続射撃の実現が見えない状況だった。
ズムウォルト級ミサイル駆逐艦に搭載される155mm先進砲システム向けに開発された長射程誘導砲弾LARAP(ララップ)は、最大射程190kmの範囲で誘導機能を持っている点は革新的だった。
しかし、2016年時点で砲弾1発が巡航ミサイルトマホークに匹敵する80万~100万ドル(約1億円前後)と非常に高価となった。
レールガンにおいても、同様の誘導砲弾を開発する場合、発射時に生じる極端な加速度と、強力な電磁パルスの影響に耐えうる誘導装置の開発が必要となる。
レールガンの砲弾は、ズムウォルト級と比較してもさらに厳しい条件下で機能する必要があり、これらの条件を満たす技術開発には相応の高コストが伴うことが予想される。
そのため、従来の火砲技術は進化を続け、レールガンの優位性は薄れつつあった。
年間数億ドルもの費用を費やしながらも、予算の確保が難しくなり、開発の見通しが立たなくなったことから、最終的には投資対効果の観点からプロジェクトの中止が決定された。
エネルギー源の課題、技術的な遅れ、従来兵器との比較、財政的な制約が複合的に絡み合い、アメリカはレールガン開発を諦めざるを得なくなった。
夢の超電磁砲システムの実現は、まだ多くの課題を克服しなければならない状況である。
そのような中、日本は65億円を計上し5年後以降の試験運用を目指す計画である。
次の動画では、自衛隊のレールガンが世界初の洋上試験を実施したことについて解説しよう。
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