空母化する「いずも」の改修内容とは?F-35B搭載後はヘリはどうなる?
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海上自衛隊のヘリコプター護衛艦「いずも」

SH-60(ろくまる) K対潜ヘリコプターを14 機搭載できる、海自最大の護衛艦である。

現在はF-35Bを搭載できるように、空母化改修が行われており、2025年から空母「いずも」としての運用が開始される予定だ。

2番艦「かが」も同様の改修を行う予定である。

ただ、空母化といってもアメリカ海軍のようにカタパルトによる強制加速装置が装備され、数十機の艦載機が搭載されるわけではない。

今回は、「いずも型」が空母化に向けて行われている改修の内容や、F-35Bを搭載した後、現在搭載している対潜ヘリコプターはどうなるのか?

また空母化された後のF-35Bの任務について解説していこう。

しまかぜ

いずもの空母化改修についてやF-35Bの解説を動画でも見られるので楽しんでね!

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いずも型の空母化改修内容とは?

いずも型が空母化されると飛行甲板の長さからF-35B が 10機~12 機程度運用できるようになると言われている。

ちなみに、米海軍の強襲揚陸艦「アメリカ級」には23機、イギリス海軍の空母「クイーンエリザベス」には40機を搭載できる。

艦艇のサイズが違うということもあるが、他国と比較すると、「いずも型」は 10 機程度で足りるのか?と思う人もいるかもしれない。

しかし、「いずも」のコンセプトは、アメリカ海軍のように世界中に展開する航空打撃を伴う本格的な正規空母ではなく、尖閣諸島を中心に護衛艦隊で行動することが主な任務である。

そのため、「多用途防衛型空母」という呼び名がつけられているのだ。

「そんなので勝てるか!アメリカ海軍のように10万トン級の空母を建造しろ!」と簡単に言う人もいるが、もし建造したとしたら、ニミッツ級やフォード級のように乗員は航空要員を除いても、3000人以上が必要になる。

海上自衛隊の護衛艦は DD型で150人前後、イージス艦で250人前後の乗員が乗っているので1隻につき平均200人ほどとなる。

つまり、10万トン級空母1隻を運用する場合、護衛艦 15隻分の人員が空母に割かれてしまうことになる。

海上自衛隊の護衛艦隊は、第1護衛隊群から第4護衛隊群まで8隻ずつの計32隻の艦艇で編成れている。

10万トン級の空母を建造したとしたら、15隻分の人員確保が必要となり、2つの護衛艦隊がなくなる計算になる。

仮に2隻の空母を建造すると、30隻分の人員が必要になり、空母自体を護衛する艦艇を運用することができなくなってしまい、空母が単艦で行動するという結果になってしまう。

護衛艦隊以外の艦艇も存在するが、おせじにも空母を護衛できるような装備ではないし、南西諸島の警戒監視任務などがあるため、そちらを手薄にすると中国の進出がさらに加速してくる。

アメリカ海軍のように11隻の空母とそれを護衛する空母打撃軍を保有するといった同じ土俵で考えてはいけない。

防衛予算も人員の数もアメリカとは違いすぎるのだ。

いずも型の空母化により、10機前後といえども、F-35B 搭載できるようになれば自衛隊の戦略環境や状況は向上するだろう。

いずも型を単なるF-35B の補給中継地点として使用するなら、5機のヘリコプターが発着艦できる飛行甲板は十分な広さである。

しかし、ヘリコプターと違い、F-35Bが着艦する際は、エンジンノズルが下方向になり、高熱の排気が甲板面に吹き付けられることとなる。

この排気温度は1000℃近く、マッハ1にもなると言われており、現在の甲板では熱により変形や破損が発生する。

佐世保を母港とする米海軍の強襲揚陸艦「アメリカ」では、飛行甲板に耐熱塗装が施されており、F-35Bの着艦が可能となっている。

いずも型にも、同様の耐熱塗装をする必要があり、言葉で「耐熱塗装」と言うと、ただ単に専用の塗装を塗るだけのイメージであるが、実際はそう簡単ではない

まず、いずもの 248mの飛行甲板には、滑り止め塗装が施されているが、これを全て剥ぐ必要がある。

さらに下地処理を行ったのち、さびも完全に除去し、規定の荒さの状態にする。

そこから、専用の耐熱塗装を均等に塗り重ねていくが、甲板面には巨大な航空機専用エレベーターや数々の突起物や穴、ハッチも存在する。

また、ただのペンキ塗りのような薄い塗装では意味がないため、ある程度の厚みを塗装する必要がある。

広大な飛行甲板を一定の厚みを維持しながらフラットに塗装していくには、相当な技術や工数、費用がかかる。

次にF-35Bを発艦させる場合の改修についてであるが、F-35Bは着艦の際は垂直に降りてくることができるが、発艦の場合は、ある程度の距離を加速しなければならない。

しかし、いずもは米海軍の空母のように強制的に加速させるカタパルトは装備できないため、F-35Bは自力で加速して飛び立つしかない。

そのため、F-35Bは短い距離でも発艦できるように短距離離陸が可能な機体となっている。

これをSTOVL(ストーブル)機と呼ぶ。

STOVLとはshort takeoff/vertical landingの略である。

カタパルトがない空母の場合、中国の遼寧やイギリスのクイーンエリザベスのように、スキージャンプ式により甲板に角度をつけて発艦させる方法があるが、逆にこの傾斜はヘリにとっては無駄な設備であり、場合によっては邪魔になることがある。

いずも型の艦首は狭くなっているため、面積を広げるために甲板前部を四角型にする改修が行われる予定である。

F-35Bを搭載した後は、燃料搭載や弾薬搭載などは、艦内の格納庫ではなく、飛行甲板上で行われる。

そのため、弾薬の運搬などは現在の航空機用エレベーターが使用されると思われる。

航空燃料は現在搭載しているヘリコプターSH-60(ろくまる) K と同一であるため、そのまま流用できると思われるが、ヘリとは桁違いに消費燃料が増えるため、燃料タンクの増設は必須となるだろう。

また、ミサイルなどを保管する武器庫も必要となってくるため、火災や被弾した場合に備えての防火設備も強化しなければならないだろう。

F-35B のパイロットや整備員は航空自衛隊員のため、彼らの居住区や待機室も必要となってくる。

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F-35B搭載後の任務とは?

F-35 はアメリカで空軍、海軍、海兵隊の戦闘機として開発された機体で、3種類のタイプがありA、B、Cに分類される。

Aは滑走路から飛び立つ通常離着陸型でアメリカ空軍や航空自衛隊が保有するタイプだ。

そしてBが短距離離陸・垂直着陸型で強襲揚陸艦や「いずも型」に搭載されるタイプである。

最後に C であるが、これはアメリカ海軍の空母艦載機専用のタイプとなり、A,B よりも翼の面積が大きく、遅い速度で空母に着艦できるようになっている。

それぞれ、全長や翼のサイズ、燃料タンクの量など違うため戦闘行動半径が異なっており、Bは約830キロ、Aは約1090キロとなっている。

最大速力は全て共通のマッハ1.6である。

F-35Bの任務であるが、空対空ミサイル、空対地誘導爆弾は装備可能で、防空や地上軍への航空支援には対応できる。

しかし、艦艇への攻撃に関しては、対艦ミサイルのサイズが大きすぎてF-35B の 3.9mのウェポンベイに格納できないという問題がある。

対艦ミサイルは5m 前後の長さがあり、空対空ミサイルのようにコンパクトでないため格納できないのだ。

胴体下に装備すればよいのではと思うが、それではせっかくのステルス性能が損なわれてしまい、敵に探知される可能性が高くなる。

ちなみに、武器を全て胴体内部に格納する状態を「ステルスモード」と呼び、外部装備した状態を「ビースト(野獣)」モードと呼ぶ。

では、将来「いずも型」が F-35Bを搭載したら、今まで搭載していた対潜ヘリコプターはどうなってしまうのだろうか?

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F-35Bと対潜ヘリコプターの同時運用

アメリカ海軍は艦載機を上甲板に出したままにするが、海上自衛隊では、原則として格納庫に収容する。

いずも型の格納庫の広さは125m、幅21mなので、単純計算で全長15.6mのF-35Bを8機格納できる広さである。

では、現在搭載している対潜ヘリコプターはどうなるのか、という問題であるが、それは作戦によって搭載の割合が変わってくるだろう。

潜水艦を捜索する上で、SH-60(ろくまる) K対潜ヘリコプターは必須である。

60K はホバリング状態でソーナーと呼ばれるセンサーをワイヤーで海中に吊り下げて、そのセンサーにより潜水艦を捜索し、探知データを艦艇に送信する。

また、ソノブイと呼ばれるセンサーを海中に複数投下し、潜水艦の音を探知する任務も果たしている。

水上戦になると、艦艇のレーダーでは届かない水平線以遠の敵艦艇を上空から捜索し、攻撃のための情報を送ったり、ISAR(アイサー)と呼ばれるセンサーで探知した敵艦艇のタイプを類別することもできる。

特に対潜戦についてはF-35Bでは不可能な任務であるため、SH-60K を全て下ろしてF-35Bに変えるとなると、対戦能力が格段に落ちることは目に見えている。

F-35B とヘリの両方を運用するなら、米海軍の揚陸艦のように飛行甲板に露天係止したままの状態になるだろう。

飛行甲板と格納庫を使用すれば、対潜ヘリコプターを数機とF-35Bを10 機程度同時に搭載することが可能になる。

ただ、航空管制が忙しくなるため海自と空自の連携がとれなければ、飛行甲板の運用は難しいだろう。

空母「いずも」 まとめ

2025年に空母「いずも」が誕生する。

しかし、それはゴールではなく、そこからがスタートである。

空母としての搭載能力が整ったとしても、補給や整備、指揮系統など、運用していくにあたって、今後いろいろな問題も出てくるだろう。

自衛隊初となる艦上での航空自衛隊との密接な統合と連携が必要となってくる。

そして、F-35Bをどのような作戦で、どうコントロールしていくのかも課題となっていくだろう。

海上自衛隊の限られた人員、艦艇、装備を有効に使い、効率の良いオペレーションができる訓練が必要になってくる。

また、F-35B の導入により、広範囲の制空や艦隊防空、先制攻撃などの能力を手に入れることとなる。

帝国海軍以来、日本が「空母」保有国となる日もそう遠くはない。

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