米軍ドローンオペレーター「ボーナス1500万円」でも辞める理由

米国の軍事力は世界的に圧倒的であり、その一翼を担っているのが無人航空機、いわゆるドローンだ。

特に、敵から恐れられているのがドローンのオペレーターである。

空軍では毎年約180人のドローンパイロットを訓練しているが、同時に年間230人が職場を去っている。

この職種の不人気ぶりを象徴するように、米軍は5年間継続で約1500万円の特別ボーナスを支給する決定をしたほどだ。

ドローンパイロットが敬遠される背景には、精神的な負担が大きく関与している。

今回は、米国で最も恐れられているドローンのオペレーターの1日を追い、その過酷な訓練やミッションの裏側に迫る。

空軍ドローンオペレーターの一日と実際のミッション

ドローンオペレーターの一日は、まだ空が薄暗いうちから始まる。

早朝の静寂の中で、彼らはまず最新の情報とミッションブリーフィングを受ける。

空軍のドローンパイロットの多くは、ネバダ州ラスベガス近郊のクリーチ空軍基地に勤務している。

彼らの一日は、複数のコンピュータースクリーンを監視しながら、敵の動向、新しい戦術、そして地形の変化など、ミッションの成功に直接影響する要素が詳細に伝えられる。

約12時間にも及ぶ勤務の中、上司の「ミサイルを撃て」という命令に従って攻撃を行う。

アメリカ空軍のドローンオペレーターになるためには、必ずしもパイロット出身である必要はない。

ただし、いくつかの経路と資格要件があり、空軍に入隊した後、8週間の厳しい基本軍事訓練を受ける。

高度な技術を操作するため、優れたコンピュータ操作スキルや機械理解力が必要だ。

アメリカ空軍のドローンオペレーターの給与は、軍の階級や経験年数によって異なる。

平均的な年収は以下の通りである。

新人のドローンオペレーター：$50,000 – $60,000

経験豊富なドローンオペレーター：$80,000 – $120,000

また、飛行中のトラブルを未然に防ぐため、ドローン自体のメンテナンスも重要な仕事の一部である。

バッテリーの残量、プロペラの状態、カメラのレンズの清掃など、細かな点検を怠ることなく出発前にドローンの各部品をチェックし、異常がないかを確認する。

訓練と準備が終わると、いよいよ実際のミッションに出発する。

オペレーターたちはチームで連携し、高度な技術を駆使して任務を遂行する。

彼らの仕事は高い集中力とスキルを必要とし、常に緊張感が伴う。

精神的苦痛と戦うドローンパイロットの任務と心の葛藤

ミッションが開始されると、ドローンオペレーターは専用のコントロールルームに移動する。

このコントロールルームは、まるでSF映画のように高度なコンピュータシステムとモニターが並んでおり、リアルタイムでドローンから送られてくる映像が映し出される。

映像は非常に高解像度で、地上の細かな動きまで鮮明に捉えることができる。

オペレーターたちはこの映像を見ながら、ドローンを遠隔操作してミサイルを発射しターゲットを破壊する。

米ニューズウィーク誌は、「毎日人を殺しては牛乳を買って家に帰る異常さ」という見出しで、ドローン操縦者が抱える精神的苦痛を表現している。

戦場には「殺さなければ、殺される」という否定しようのないルールが存在する。

このルールは、敵に向けて銃弾を放つことの苦悩を一時的にでも和らげる、最も明確な自己正当化の手段だ。

しかし、ドローンパイロットはこれを享受できない。

なぜなら、彼らは100％安全な冷暖房の効いたオフィスから攻撃しているからだ。

離着陸時には現地の飛行場で制御されるが、それ以外の時間はアメリカ本土の基地から通信衛星を介して遠隔操作されている。

オペレーターは戦場に行くことなく、地球の反対側から無人機を操縦し、ミサイルを発射したり爆弾を投下したりしているのだ。

操作はジョイスティックやキーボード、さらにはタッチスクリーンを使って行われ、まるでゲームのような感覚で行われる。

勤務が終われば、基地のガレージに停めた車に乗り込み、近所のスーパーで買い物をして帰宅する。

夕食を食べ、家族とテレビを見て過ごす。

そして翌朝、再び画面の中の戦場へと戻っていく。

この「日常と戦場の短期的な往復」が彼らの精神をじわじわと蝕んでいくのだ。

前線の指揮官も無人機から送られてくる映像や情報を見て、攻撃の判断に参加することがあるが、実際にボタンを押すのはアメリカ本土の基地にいるオペレーターだ。

誤った判断はミッションの失敗だけでなく、無関係な人々の命を危険にさらす可能性もある。

そのため、オペレーターたちは常に高い集中力を維持し、冷静な頭脳で行動する。

例えば、ターゲットが突然現れた場合、オペレーターは迅速に対応しなければならない。

攻撃するのか、それとも一時的に退避するのか、瞬時に判断を下す必要がある。

このような現実は、ドローンパイロットにとって耐えがたい精神的負担となる。

目の前のスクリーンの向こうでは命が奪われているが、自分自身はその場にいない。

このギャップが、彼らの心に深い傷を残す。

ドローンパイロットの不人気職種としての位置づけは、この精神的苦痛が大きく影響しているのだ。

ドローンオペレーターは単独で行動するわけではなく、チームとして連携して任務に当たる。

地上部隊と連絡を取り合い、リアルタイムで情報を共有することで、より効果的な作戦を展開する。

この協力体制が、ミッションの成功率を高める重要な要素となる。

また、ミッション中の緊急事態に備えるための訓練も日常的に行われている。

通信が途絶えた場合やドローンが故障した場合の対応策など、様々なシナリオを想定して訓練を行う。

これにより、実際のミッション中に予期せぬトラブルが発生しても冷静に対応できるようになる。

ドローンオペレーターの勤務体系は厳格で、以下のような特徴がある。

シフト制勤務：24時間体制での勤務が求められ、シフトは日勤、夜勤で交代

長時間勤務：一回のミッションは数時間から数十時間に及ぶことがあり、集中力と持久力が必要。

定期的な訓練：最新技術や戦術に対応するため、定期的な訓練やシミュレーションが行われる。

ドローンオペレーターの仕事は、高度な技術と冷静な判断力を必要とする一方で、非常にやりがいのある職業だ。

彼らの努力と献身があってこそ、ミッションは成功し、多くの人々の安全が守られる。

【空を飛ばないパイロット】ドローン操縦士の苦悩と現実

操縦士でありながら空を飛ばない…。

これが果たして「パイロット＝操縦士」と言えるのだろうか。

ドローンパイロットたちは、本来なら仲間であり最大の理解者であるべきパイロット仲間から、落伍者扱いされることが多い。

彼らは、その苦悩に見合った評価を得ることなく、不満を抱えたまま日々の任務に従事している。

これでは配置転換を望むのも無理はない。

米軍は、特別ボーナス支給の施策のほか、空軍の航空学校の卒業生の一部を自動的にドローン操縦任務につかせることを決めた。

しかし、そもそもパイロットという職業を選ぶ人々は皆、自分が操縦して空を飛ぶことを望んでいるのだ。

このような背景から、ドローンパイロットの任務に就かされることは、彼らの希望に反するものである。

一方で、軍の偵察や情報収集のニーズは戦場以外でも高まっている。

特に、テロリズム対策や国際紛争の予防など、多様な任務においてドローンの活用は不可欠となっている。

しかし、このような需要の増加と、人員供給のギャップを埋めるのは容易ではない。

ドローンパイロットの不人気の背景には、単に物理的な疲労だけでなく、精神的な苦痛や仲間からの評価の低さも大きく関与している。

このギャップを埋めるためには、ただ金銭的なインセンティブを提供するだけでなく、彼らの精神的なサポートや職業としての誇りを取り戻すための対策が必要だ。

米空軍は無人機を「無人航空システム」と呼び、無人機はシステムであり航空機ではないとの立場を取っている。

この呼び方は無人機の複雑な運用と多様な機能を強調するものであり、単なる航空機とは一線を画す存在であることを示している。

これらの攻撃で命を落とした人数は1000人以上にのぼる。

標的にはテロ組織アルカイダの高級幹部15人やタリバンの高級幹部1人が含まれていたが、犠牲者の大多数は、ターゲットの近くにいた家族や無関係の市民であったとされる。

この現実は、無人機攻撃の倫理的な問題を浮き彫りにする。

正確にターゲットを狙う技術があっても、誤爆や周辺被害が避けられないのだ。

ドローンパイロットたちは、このような結果を目の当たりにし、精神的に大きな負担を抱えることになる。

彼らは安全な場所からボタンを押すだけで命を奪うという行為に、深い罪悪感を覚えることが多い。

この罪悪感や精神的な苦痛は、パイロットたちが職務を続ける上で大きな障害となる。

彼らは単に技術的な訓練を受けただけではなく、心理的なサポートが必要だ。

次の動画では、世界最強の攻撃ドローン「リーパー」の驚くべき性能について解説しよう。