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北海道の積丹半島から西へ、ウラジオストクの東に位置するウラジーミル湾の静寂を破る、異常な信号。
ロシアのアクラ級原子力潜水艦「ネルパ」が事故を起こした。
“日本海”、”原子力潜水艦”という言葉に不安を覚える人々の間で、不吉な疑念が広がっていった。
そして、その背後には2000年のクルスク潜水艦沈没事故へと続く暗黒の歴史があった。
今回は、これらの悲劇が何を私たちに示すのか、そしてロシア政府が隠していることとは?
潜水艦の密閉された世界で何が起きたのか、そしてそれが何を意味するのかについて解説していこう。
この内容は動画でも見れるよ!
乗員全員118名が死亡。潜水艦クルスクの魚雷爆発事故
ムルマンスクを本拠地に置くロシア北方艦隊の一部を成す原子力潜水艦クルスクは、軍事演習のために2000年の8月10日、乗組員118名を乗せバレンツ海にて任務に就いていた。
クルスクは、1994年5月に就役し、ロシア海軍が誇る最新の攻撃型原子力潜水艦、オスカーII級で、長さは154メートル、水中での排水量は24000トンという巨大な潜水艦だった。
この潜水艦は、高い静粛性と33ノットの潜航速度、そして24基の射程550キロ巡航ミサイルSSN19を搭載できる能力と6門の魚雷発射管を備えていた。
核弾頭の搭載が可能で、ステルス機能を持ち、120日間連続して潜行する能力があった。
クルスクはロシア海軍の誇りであり、その規模は2機分のジャンボジェットに匹敵し、ステンレスの厚い壁で保護されていた。
これにより、一隻当たりの攻撃力として世界最大級とされていた。
さらには、サウナ、プール、さらにはトレーニングルームまで備え付けられており、演習中には118名の乗組員がここで任務を遂行していた。
だが、出港からわずか2日後に、魚雷の発射準備中に突如として爆発が発生し、それに続いて他の魚雷が連鎖的に爆発した。
事故が発生したときの爆発は驚異的な規模で、一瞬で約80%の船員が焼かれた。
その様子は、ノルウェーなど近隣諸国から海底火山の噴火か地震と間違われるほどの衝撃だったという。
クルスクは爆発により浮力を失い、バレンツ海の底へと沈んでいった。
船体が大破して海底で行動不能に陥ったものの、奇跡的に23人が生き残り、司令官ミハイルの指導の下、脱出不可能な艦尾で救助を待つしかなかった。
クルスクが何らかの異常事態を発生し、沈没したのは8月12日。
しかし、ロシア海軍がその事実を公にしたのは2日後の14日だった。
これらの2日間にロシア海軍が何を行っていたのかは不明だ。
この悲劇は冷戦後の国力の衰退とそれに伴う整備の不備、そして劣化、そして警告を無視した官僚主義的な判断が原因であり、一部は人災であった。
沈没し、水が侵入する中で、23名の生存者はただ救助を待つだけだった。
その中にはミハイル司令官も含まれていた。彼らは救助が来ることを待ちつつ、全力で生き抜くことを決意した。
英海軍のラッセル准将が救援を申し出たものの、ロシア軍部は情報漏洩を恐れてその申し出を断った。
待機していたミハイルの妻、ターニャ、そして他の乗員の家族たちは、軍部から何の情報も得られなかった。
そして艦内で、新たな危機が訪れる。
クルスクには、緊急事態への対応策として、化学反応を介して二酸化炭素をから酸素を生成する機能を持つ化学酸素発生装置が搭載されていた。
だが、想定外の事態が発生し、海水がカートリッジに浸透する事態が起きた。
その結果、非常に危険な化学反応が引き起こされ、現有の酸素が一瞬にして消耗し、艦内に深刻な火災が発生してしまったのだ。
クルスクから船体をたたく信号をキャッチしたロシア海軍の捜索隊は直ちに救助隊を派遣した。
しかしながら、陳腐な装備と不十分な維持管理の結果、試みは失敗に終わった。
英国やノルウェーの救援申し出も、クルスクが他国船との衝突が原因で沈んだとするロシアの主張により拒絶され、機密保持の観点から彼らがクルスクに接近することは許されなかった。
ロシア政府は初め、米国や英国、ノルウェーなどからの援助を必要としないと判断し断った。
救助作業を要請すればクルスクの設計図を提出し、さらには救助隊が艦内に入ることで機密情報が漏れる可能性があるためだ。
しかしこの決定は後に深海での救難作業ができる人員や設備がロシア北洋艦隊には不足していることが明らかになり、問題となった。
特に、救助用の潜航艇が艦のハッチを開くことができずに困難に直面したのだった。
バレンツ海の水深は平均的には浅く、大部分が200から400メートルである。クルスクが沈んだ地点も水深108メートルと浅かったが、夏季が終わると北極からの強風により海は荒れやすく、救援活動には大きなリスクが伴った。
艦内に入ることが許されたのはロシアのダイバーだけだった。
その結果、12名の遺体が収容されることに成功した。
救助活動は悪天候、装備の不足、そして軍部の情報隠蔽により遅れ、艦が引き上げられたのは事故から3ヶ月後だった。
ロシア国民だけでなく、世界中の人々がロシア海軍の乗員救助作業を見守り、一筋の希望を抱いていた。
しかし、全乗員118名が亡くなったという結末を迎えることになった。
そして遺体の中から、海軍大尉コレスニコフのメモが見つかった。
「13時15分、第6、7、8区画のメンバーが第9区画に避難した」
「ここ(第9区画)に23人がいる。事故の結果、我々はこの決定を行った」
「誰一人として上に上がれない」
「手探りで書いている」
と記されていた。
クルスク沈没事故は、最高機密を保持した原子力潜水艦という完全に閉鎖された世界で起こった。
乗員たちは北極圏の海底、厳しい自然環境に孤立し、絶望と苦痛の中で死を迎えたのだ。
消火システム誤作動で20名が死亡した原子力潜水艦ネルパ
北海道の積丹半島から西に約400キロ進んだ日本海での航行試験中にロシアのアクラ級原子力潜水艦「ネルパ」が事故を引き起こした。
“日本海”、”原子力潜水艦”というニュースを耳にした多くの人々は、ロシアの原子力潜水艦が日本の近海で事故を起こしたとの報道に疑問を抱いた。
公式の報告は否定的だったが、その背後には、果たして原子力の漏洩が起きていたのではないかという疑念が広がっていた。
問題となった「ネルパ」は、アクラ級の攻撃型原子力潜水艦だ。
潜水艦には攻撃型と戦略型が存在し、攻撃型は一般的に小型で、驚くべきスピードで航行する。
例えば、アメリカ海軍の攻撃型潜水艦バージニア級は排水量7,800トン、乗員134名で、海中を約63キロメートルで航行することができる。
潜航した状態で、魚雷、対艦ミサイル、トマホークなどの対地ミサイルを発射する能力を持つ。
事故を起こしたアクラ級は同9,100トン、乗組員は73人で、日本海での航行試験中のロシア海軍原子力潜水艦だった。
潜水艦の屋根に設置されたスプリンクラーシステムから冷蔵庫や空調設備に使用される有毒ガスであるフロンが散布され、乗員やエンジニアのうち20人が命を失った。
2000年のクルスク潜水艦沈没事故以来、この事故はロシアで最も悪名高い海難事故となった。
生き残った者の証言によれば、潜水艦内部は乗員達で過密状態で、消火ガスが噴出した際、鍵の掛かった扉を蹴破って避難せざるを得なかった。
休息中だった乗組員の中には、ガスマスクの装着が遅れた者もいたという。
船に乗っていた一人のエンジニアは
「私が当番を終えて休息を取っていると、突如として真上からフロンガスが噴出した。まるで麻酔のようで、私は意識を失った」と語る。
また別のエンジニアは
「液化ガスが直接私達の頭上に降り注いだ後、警報が鳴った。その直後、上官が『酸素呼吸器のスイッチを入れろ』と叫んだ」
と明かした。
「ネルパ」の事故では、消火装置が作動したことでフロンガスが船内に満ち、20人が酸欠で窒息死し、さらに21人が病院に運ばれた。
酸素マスクの不足、加えて、マスクを着用していたにも関わらず死亡した乗組員が見つかったことから、マスク自体に欠陥があった可能性も指摘され、ロシア軍の装備の安全性に対する新たな疑問が浮上した。
潜水艦で火災が発生した場合、一般的な手順としては、緊急浮上してディーゼルエンジンを始動することが、東西を問わず基本的な対応だ。
ディーゼルエンジンは補助機関として装備されているが、艦内の空気を強制排気するという”陰の任務”も担っている。
ディーゼルエンジンを始動すると、西側の原潜では、1分以内で艦内の空気を換気することが可能だ。
ロシア政府によれば、事故の原因は、無許可で消火装置を作動させた一人の水兵によるもので、最大7年の量刑に相当するという
「水兵の1人が無許可で、理由なしに消火システムを作動させた事実が証明された」
「この水兵はすでに過失を認めた」などと説明しているが、その真相は定かではない。
次の動画では、世界最大、最速のロシア潜水艦について解説しよう。
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