救難飛行艇US-2「海の鳥」が生み出す奇跡。知られざるUS-2の実力
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海上自衛隊が保有するUS-2は、その特殊な機体形状から「海の鳥」とも呼ばれ、美しいフォルムとともに、高い航続距離や大型救難機材の搭載能力を持っている。

自衛隊の主任務は国防である。

しかし自衛隊は、国防以外にも様々な任務を請け負っている。

一般の日本国民が、その活動内容を知る機会は非常に少ない。

長らく戦争のない平和な日本において、自衛隊の活動で国民が目にするのは、大規模災害における災害派遣活動であろう。

そういった現状の中において、24時間体制で外洋においての海難救助を重点として活動にあたっている部隊が海上自衛隊には存在している。

それが「海難救助隊」だ。

海難救助隊は警察や消防、それに海上保安庁などでは対処が困難とされている救助の場合に、出動を要請される部隊で、海難救助最後の砦とも言われている存在である。

しまかぜ

海救難飛行艇US-2の動画も見てね

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船と航空機の救難飛行艇US-2

US-2は、現在、海上自衛隊が保有している大型飛行艇で、救難機に分類される。

救難機とは、捜索救難活動を行うために用いられる航空機である。

日本における飛行艇の開発については、世界をリードするものがあり、旧日本海軍では、二式大艇(にしきたいてい)などの優れた飛行艇が開発されている。

戦後においても、その技術は引き継がれており、川崎重工業において対潜哨戒機としてPS-1飛行艇が開発され、その後、救難機に改造されたUS-1が登場した。

US-2は最初から救難機として設計された飛行艇である。

新明和工業において8機が生産され、2007年3月より海上自衛隊の岩国基地で運用を開始している。

搭乗員は以下の12名で構成されている。

US-2搭乗員

操縦士2名
機上整備員2名
捜索救難調査官2名
航法・通信員1名
機上救護員2名
機上救助員3名

US-2の記号の「U」は救難、「S」は飛行艇で「2」は採用された番号を表す。

最大速度は580km、航続距離は4700kmである。

またUS-2は、BLC(境界層制御)と呼ばれる動力式高揚力装置が装備されている。

これは主翼のフラップ部分から圧縮空気を吹き出し、プロペラから生じる気流を下方に偏向させることにより高い揚力得ることが可能である。

また水平尾翼や垂直尾翼に取り付けられているラダーなどからも圧縮空気を吹き出すことにより舵の利きを向上させることができるようになっている。

これにより約90kmという最低飛行速度での飛行や、わずか280mという離水距離で離水することが可能となっている。

またUS-2は、機体下部に溝型波消し装置と呼ばれる水流を下方へ逃がす装置や、スプレーストリップと呼ばれる水流を横へ逃がす装置などが 取り付けられており、これにより3mクラスの波高でも、離着水が可能となっている。

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US-2の救助活動の実績

US-2の行動半径は、約1900kmもあり、広大な海域における捜索救難活動が可能である。

また低速飛行及び短距離での離水が可能であることから、飛行場がない離島などにおける、けが人や急病人の緊急搬送にも大きな力を発揮している。

現時点において出動回数は1000回を超えており、救出した人員も1000人以上となっている。

詳しい救助の実績としては、2009年3月7日、南鳥島で起きた、アスファルト製造プラントにおける事故が挙げられる。

この作業現場において作業中の男性が転落し、手首を骨折するという事故が発生した。

ただちに東京都知事から自衛隊に対して災害派遣要請が出され、「US-2」1機が岩国基地から救助のため出動し、男性は羽田空港に急患輸送された。

これがUS-2初の災害派遣となった。

もう一つの事例は、2013年6月21日、元ニュースキャスターの辛坊治郎氏が福島県いわき市小名浜港からカルフォルニア州に向けてヨットで太平洋を横断するという「ブラインドセーリング」プロジェクトにチャレンジした時の事故が挙げられる。

辛坊氏の乗った船は、宮城県金華山南東約1,200km沖合において、マッコウクジラと衝突したことで浸水が発生した。

そのため、海上自衛隊に救助要請が出されて、現場海域において救助が行われた。

後になって、辛坊氏は救助された時の模様をこう話した。

「救助してくれた隊員は、訓練でも、こんな厳しい状況はなかった」と。

US-2の高性能と隊員の活躍なくして、辛坊氏の命は救われなかったであろう。

そのような高性能なUS-2であったも、過去に事故が発生している。

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US-2離水に失敗し墜落

2015年4月28日午後2時55分ごろに、高知県の足摺岬北東約36キロメートルの太平洋上においてUS-2による訓練中に事故が発生した。

事故を起こしたのは海上自衛隊岩国航空基所属のUS-2で、同機は離着水を繰り返す訓練を行っており、その際にエンジンの1基が脱落し、フロートも損傷したため離水に失敗し機内に浸水が発生した。

「離水」という言葉は、本来航空機であれば「離陸」という表現されるところではあるが、飛行艇の場合は陸上ではなく海上から飛び立つので、このような表現になっている。

搭乗員19名乗員は全員救命ボートで脱出し、近海を航行中の船に救助されたが、4人が打撲などの軽傷を負った。

機体は、事故直後、海面に浮いており、水没を防止するため機体と台船をロープで結んでいたが、途中でロープが外れてしまったため、US-2は水深300mの海底に沈んだ。

同年の6月19日にUS-2は引き上げられ、フライトレコーダも回収された。

その後の海上自衛隊の公表によると、訓練中にエンジンの1基が高波を受けて出力が低下したため、残りのエンジン3基で飛び立つ「3発離水」という操縦を行っており、この際に「機体の姿勢を制御しようとする操作・操縦が過大であったことが原因である」という結論が出された。

ただし、「過大な操作は操縦ミスではない」とされている。

US-2の操縦要領には「3発離水」に関する具体的な操作方法や基準などが示されていなかったことも要因としてあげられた。

再発防止のため、US-2による3発離水手順の見直しが今後行われることとなった。

この事故の原因究明のためUS-2は全機が飛行停止となり、その年の5月に予定されていた曲芸飛行パイロットによるエアーレースであるレッドブル・エアレース千葉大会に参加することはできなくなった。

しかし、今回の事故は機体そのものの欠陥というわけではなく、操作方法を誤ったことによって起きた事故である。

事故を教訓として安全性の向上を図っていくのは、航空機全てにおいて共通することである。

その後、最後のレッドブル・エアレースとなる2019年千葉大会で、ついにUS-2の参加が実現した。

パイロットの救出活動

海難救助を主目的とする救助隊は、国防とは直接関わりのない存在であるかのように思う人がいるかもしれないが、決してそうではない。

もし味方の戦闘機が敵機に撃墜されて、パイロットがパラシュートで脱出した場合に、海上において、そのパイロットの救出活動を行うのは救助隊の役目である。

このような救助活動ができなければ、長年訓練を行い、育て上げた貴重なパイロットを失うことになる。

これは自衛隊としては大きな損失となるのである。

脱出したパイロットを確実に救出できる体制を取っておく。

これも重要な任務であると言える。

そういった意味において救助隊は、日本の国防にも大きく貢献しているといえるだろう。

これ以外にも自衛隊は、毎年冬に行われる札幌雪祭りの雪像の作成支援、また大阪においてはコロナ対策のため医官を派遣し支援を行うなどの業務も行っている。

自衛隊は、平時においても国民の生活を支えるための活動を日々行っているのである。

次の動画では、F15戦闘機が小松基地を離陸後、1分で何らかの原因で墜落した事件について解説しよう。

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