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陸海空全自衛官が共通で行っている訓練がある。
それが射撃訓練だ。
日本の国防を担う自衛官は、陸海空それぞれの持ち場で、各職種に分かれて任務についているが、射撃訓練は、自衛隊員の基礎ともいえる必須の項目であり、毎年、一定の技量を保てるよう実施され、安全や弾薬の管理は徹底されている。
しかし、厳重な管理を行っている自衛隊でも、一部において弾薬の紛失事案が起きている。
1発でも弾薬や薬莢を紛失した場合、いったいどうなるのだろうか?
今回は、自衛隊が射撃訓練に使用する銃の種類や、訓練内容、過去の弾薬紛失事案について解説していこう。
この内容は動画でも見れるよ!
自衛隊の64式小銃と89式小銃の違い
射撃訓練時に自衛隊が主に使用している銃は、64式小銃と89式小銃の2種類がある。
64式小銃は1964年に正式採用された国産小銃であり、現在、海上自衛隊と航空自衛隊に配備されている。
使用されている7.62mm弾薬は、連射を行った時の反動が大きいため、装薬を10%減らした減装弾が使用されている。
64式小銃の重量は4.3kg、発射速度は毎分約500発、有効射程は400mである。
一方、89式小銃は、64式小銃の後継として開発された陸上自衛隊の主力小銃である。
重量は3.5kg、発射速度は毎分最大約850発、有効射程は500mである。
銃床の部分は、折り畳んで、狭い空間でも使用できるタイプのものもあり、主に空挺隊員や車両搭乗隊員用として配備されている。
64式小銃との違いについては、銃床(じゅうしょう)と呼ばれる肩にあてる部分や、銃把(じゅうは)と呼ばれる握りての部分が、木製であったものが、強化プラスチックに変更されている点が挙げられる。
これにより軽量化が図られている。
また、部品数が10%減少したことにより、整備性が向上している。
それ以外には、射撃時に使用する切り替えレバーが64式では、一度手前に引いてから切り替える方式であったものが、89式では手前に引く必要がなくなり、指一本で切り替えられる方式に変更されている。
射撃訓練は通常は「射撃場」と呼ばれる射撃をするための専用の施設で行われ、「屋外射撃場」と「屋内射撃場」の二種類がある。
射撃場には「射座」と呼ばれる銃の射撃を行う場所があり、そこに「射手」と「予備射手」が、それぞれ一組のペアとなり配置につく。
予備射手は、射手の射撃の際のトラブルの報告や、弾倉の受け渡し、それに、排出される薬莢の回収などを行う。
薬莢は「薬莢受け」と呼ばれる装具を銃に装着したり、手持ちの網で排出された薬きょうが遠くまで飛ばないようするなどして、回収が行われている。
射撃場に入った隊員は、銃を保持して待機場所に待機する。
そして「弾薬受領」の号令がかかると銃を置き、弾薬係から弾と弾倉を受領し、各自が使用する分の弾倉の準備をする。
弾倉は箱に入れられて、予備射手に渡される。
そして隊員は待機場所に戻り、射撃の順番が来ると、銃を持って射撃の位置につく。
射撃指揮官の「射撃姿勢をとれ」の号令で、銃を構え、ここで初めて射手に弾倉が渡され、銃に弾倉を装着する。
「射撃用意」の号令で隊員は、銃の安全装置を外し「撃て」という号令を受けて、撃つというのが一連の流れである。
1発でも弾薬をなくすとどうなる?
射撃訓練が終了すれば、配布された弾薬の数と射撃後に回収した薬莢の数を比較し、数が合っているかの確認が行われる。
もし数が合わなければ、隊員が総出で、見つかるまで弾薬を探すこととなる。
演習場内で紛失したのであれば、何百人もの隊員を動員して、弾薬の捜索が行われることもある。
自衛隊が、ここまで弾薬の管理に厳しい理由は、未使用の弾薬の隊外持ち出しを防止するためである。
実際の戦闘時においては、薬莢回収は行われないが、平時においては弾薬が横流しされ、テロなどに悪用されることのないよう注意が払われているのである。
軍用の弾薬の薬莢は、基本的に再利用はされない。
回収した薬莢は基本的に金属回収業者に引き渡されるが、一部空包用は、回収薬莢は再生され使用されている。
「空包」とは弾頭が付いていない発射薬だけの弾薬のことを言う。
一般の訓練展示などで行われている射撃は、この空包での射撃であり、実際には弾丸は発射されないが、銃口付近にバケツを置いて射撃すると粉々に飛び散るほどの威力がある。
これに対して実際に戦闘で使用される弾薬は「実包」と呼ばれている。
「実包」とは、弾丸が薬莢に収まっており発射可能なものを指し、弾丸、薬莢、火薬など各部分から構成されている。
弾丸は銃から射出され、人員の殺傷などの目的を果たす部分である。
薬莢は発射薬を収容する容器であり、頭部に弾丸、底部に雷管が装着されている。
③の発射薬は、火薬を燃焼させ弾丸の発射に必要なエネルギーをもったガスを発生させる役目を持っており現代では無煙火薬が使用されている。
④の抽筒板は薬莢底部に設けられる突起のことであり、銃の薬室内で実包の位置の固定及び、薬室から実包や空の薬莢を引き出すときに使用される。
⑤の雷管は、銃の撃針がここを叩くことにより内蔵された起爆薬が発火し、発射薬が燃焼を開始するといった仕組みになっている。
なお、米軍においては、薬莢回収は行っておらず、空包も常に新品を使用している。
弾薬には使用期限があり、軍ではその期限を厳重に管理している。
過去の弾薬紛失事案と停職処分
自衛隊において実際に起きた弾薬紛失事案をいくつか紹介しよう。
2017年9月23日、航空自衛隊府中基地において、小銃用の弾薬20発が紛失するという事案が発生した。
午前10時20分ごろ、朝霞駐屯地において実施されていた予備自衛官の射撃訓練中に、隊員が20発入りの箱1つが紛失していることに気付いた。
府中基地によると、弾薬は普段、基地内の鍵のかかる部屋で保管されており、府中基地から朝霞駐屯地に車両運搬する際には弾薬があることは確認されていたため、訓練中に紛失したものと思われる。
このため訓練は中止され、捜索活動が行われたが、発見には至っていない。
2020年8月22日、山梨県にある北富士演習場で、訓練中の自衛隊員が弾の数を点検したところ、小銃弾1発がなくなっていることに気付いた。
陸上自衛隊は紛失の可能性があるとして、訓練を中止し、約210人態勢で捜索を行ったが、発見には至らなかった。
2019年11月12日、駐屯地の警備中に小銃弾薬1発を一時的に紛失したとして、陸上自衛隊は13日、久里浜駐屯地所属の男性隊員を停職16日の懲戒処分としたと発表した。
陸自によると、警備勤務終了時の点検で、小銃弾薬1発がなくなっているのが判明した。
隊員は弾倉を専用の袋に入れて携行していたが、落としたとみられる。
すぐに捜索を行い、約30分後、駐屯地の敷地内で見つかったが、弾薬の管理を怠り一時紛失したとして、この隊員は停職処分を受けている。
このように、ひとたび弾薬紛失事案が発生すると、多くの人員が捜索にあたることとなり、弾薬の管理に当たっていた隊員は、処分を受けることとなる。
日頃の管理を怠ったために、無駄な作業が発生する。
これは組織としては大きなマイナスとなる。
そうならないためにも弾薬の管理には、十分注意を払うことが必要なのである。
陸自銃撃事件の原因
昨今の弾薬紛失事案や、今回発生した岐阜市の陸上自衛隊の射撃場で起きた小銃による銃撃事件は、弾薬管理の重要性を再認識させられることとなった。
今回の事件で自衛官候補生たちは「射撃位置」に着く前の「準備線」において実弾を弾倉に込める作業にあたっていたことが判明した。
逮捕された候補生は、無断で弾倉を小銃に装てんし、銃撃を始めたことが明らかになっている。
待機場所で銃と弾の入った弾倉を持っていたとなれば、これは大きな問題である。
本来、自衛隊では弾倉の入っていない銃であっても決して銃口は人に向けてはいけないことになっており、銃口からはレーザー光線が出ているかのような意識を持つように教育されている。
なにしろ扱っている武器は自動小銃、警察官が使用している拳銃より遥かに殺傷力の高い武器である。
今後の再発防止に向けて弾薬の管理方法を見直す必要が出てくるだろう。
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