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前回は、空母の飛行甲板のカタパルトやアレスティングワイヤーなど4つの装備について解説した。
今回は、空母の心臓部ともいえる原子炉の秘密について解説していこう。
現在、世界で原子力空母を保有している国はアメリカとフランスの2カ国だけである。
アメリカ海軍は11隻、フランス海軍は1隻の原子力空母を保有している。
世界初の原子力空母は 1961年に就役したアメリカ海軍の「エンタープライズ」であり、事実上、無限の航続距離をもつ艦艇となった。
当時の空母護衛部隊の艦艇も原子力巡洋艦で編成され、無補給で世界1周を成し遂げ話題となった。
原子力空母の原子炉の仕組みと核燃料交換について動画で解説するよ!
この記事に書かれている内容は
原子力空母の長期行動能力と核燃料交換
原子力空母の機関は「加圧水型原子炉」というもので、原子炉内でウラン235 を核分裂させたときに生じる熱で水を蒸気に変える。
その蒸気により、タービンを回すことでエネルギーを得ている。
蒸気タービンを通った水蒸気は、復水器で水にもどされて循環する仕組みとなっている。
発生するエネルギーはスクリューを回す動力だけでなく、艦内全体の電源にも供給されており、原子力による豊富な発電は各システムや機器の電源、乗員たちの生活に利用される。
アメリカ海軍のニミッツ級空母にはA2W と呼ばれる原子炉が2基搭載されており、 280℃前後の蒸気を発生させ、4メガパスカルの圧力を生み出す。
1メガパスカルは単位㎡あたりに作用する約102トンの質量による力
原子力空母は、ウランによって得られる莫大なエネルギーにより航続距離に制限がなく、洋上給油を行う際の減速も必要ないため、 通常動力艦よりも展開能力が高い。
その前例が、 世界初の原子力空母である「エンタープライズ」 と、その随伴艦ロングビーチ、ベインブリッジという原子力艦のみで構成された 「シーオービット作戦」 である。
1964年に行われたこの作戦は原子力任務部隊が無補給で地球を1周するという試みであった。
そして65日間で30,565マイル (約5万6,600km) を平速力 22ノット (約40km) で燃料補給なしで走破し、世界に原子力の技術と長期行動能力を見せつけたのであった。
このように原子力空母は驚異の航続距離を発揮し、 アメリカ海軍の洋上展開能力は、その他の海軍を凌駕している。
ただし、乗員の食料や日用品などは限りがあるため、定期的に港に寄ったり補給艦から移送したりする必要がでてくる。
また、真水については海水を蒸発させて塩分のみを取り除く造水装置や海水淡水化させる脱塩装置などが完備されている。
一方、空母に随伴する護衛のイージス艦などは燃料補給が必要であるため、空母自体に航続距離の制限はなくても、いつまでも無補給で走る続けることはできない。
原子力空母は燃料補給が不要というほかに、燃料タンクのスペースを航空燃料用に充てることができるという点もメリットである。
70機以上の航空機を搭載しているアメリカ空母にとって、作戦を成功させるために航空燃料の搭載量は非常に重要である。
このように原子力空母は通常動力よりも優れている面が多いものの、デメリットも存在する。
それが建造費と維持費の高さである。
アメリカ海軍の最新空母ジェラルドR・フォードの建造費はなんと、1兆4000億円という高額である。
また空母の維持費は船体のメンテナンスや原子炉の整備などで、年間約900億円もの費用がかかる。
1日に換算すると約2億5000万円もの費用になる。
また、20年に一度であるが、核燃料の交換が必要となり、その作業は3年以上を要する。
アメリカ海軍の原子力空母は通常5年半に一度、造船所のドックに入り、約1年をかけてオーバーホールを行う。
また約40年という就役期間中に一度は核燃料交換が必要となる。
これは原子炉に格納されている核燃料を新しいものに交換する作業であるが、 使用済み核燃料とはいえ、 非常に強い放射能を発しており、 放射線の遮蔽と冷却を行わなければならない。
交換には空母の船体を切断する必要があるため大規模な工事となる。
また、 使用済み核燃料は熱を発生しているため、冷却するのに長期間を要する。
通常のドック期間が1年で完了するのに対し、 核燃料交換を兼ねたオーバーホールが3年半もかかるのはそういった理由からである。
また、ジェラルドR・フォード級の A1B 原子炉は技術の向上により、約50年間は核燃料の交換が不要といわれている。
つまり、空母が就役してから退役するまでの間、交換の必要がないというわけである。
原子力空母のローテーション
アメリカ海軍は原子力空母を11隻保有しているが、すべての空母が常に稼動状態にあるわけではない。
先ほど解説したように、定期的に造船所のドックで整備やオーバーホールを受ける必要があり、ローテーションを組むことで戦力を保持している。
常時3隻~4隻はすぐに実戦可能な体制をとっており、逆を言えば、戦争が始まっても整備中の空母のスケジュールを早めることはない。
原子力空母の就役期間は約40年であり、その中間にあたる20年を経過すると、 3年半をかけて核燃料の交換作業が行われる。
核燃料の交換を含む大規模なオーバーホールは、通常の造船所のドックで行うことはできない。
船体を大きく切断して原子炉を露出させて核燃料を交換する作業は、アメリカ東海岸にあるニューポート・ニューズ造船所だけが可能となっている。
3年半という長い修理期間を無駄にしないため、同時に船体の傷んだ部分の交換やセンサー類などの電子機器のアップデート、ボイラーや配管の交換など大規模な整備も同時に行われる。
修理期間を終えて、 訓練期に入る頃には、次の空母がドックに入って整備が始まる。
アメリカ海軍は最大3年半の戦力外期間をあらかじめ計算しており、そのため空母に搭載する航空団の数も空母と同等の 11個ではなく 10個になっている。
核燃料の交換を含まない通常の修理は3、4隻が常に行われ期間は3~9ヶ月程度で完了する。
つまり、 11隻中、 常に稼動できる状態である空母は6~7隻ということになる。
日本が正規空母を保有できない理由
現在、日本は護衛艦「いずも」 と 「かが」 の2隻が F-35B 搭載にむけ空母化改修中である。
そのような中、「日本も正規空母を造れ」 という意見もあるが、 先ほど解説したように空母1隻では稼動状態を維持できないため、修理、訓練、実戦のローテーションを組むとなると、最低でも3隻以上は必要となる。
ただし、たとえ正規空母を3隻建造できたとしても、それに乗り組む海上自衛隊員の数がまったく足りないという状況に陥ってしまう。
人出不足が問題になっている護衛艦から人を集めた場合、今度は空母を守る護衛艦が稼動できなくなる。
その結果、 空母打撃群が編成できず、空母1隻で行動することになり、ただの巨大な標的になるだけである。
「日本もアメリカ海軍並みの空母を保有せよ」と簡単に口にする人は、空母の運用方法や人員不足の問題を理解していないだけである。
国力や人口、国防費などアメリカと同じように考えてはいけない。
日本は日本のやり方で、そして日米同盟のもと共に戦っていくことで日本を守っていくしかないのである。
次の動画では、6000人が暮らす空母の艦内の設備について解説しよう。
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