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海上自衛隊には現在 4 隻の空母型護衛艦が就役しており、横須賀の「いずも」、「ひゅうが」、呉の「かが」、佐世保の「いせ」がそれぞれ護衛隊群に配備されている。
いずも型、ひゅうが型のどちらも対潜ヘリコプターSH-60K を10機以上搭載でき、対潜戦においては高い航空運用能力を発揮できる護衛艦である。
周知の通り「いずも」と「かが」はF-35B を搭載できるように、現在空母化が進められており、いずもにおいては第1改修が完了し、まもなくF-35B の発着艦試験が行われる。
また、ひゅうが型については空母型でありながら、固有兵装を有しており最新DDに匹敵する防空、対潜能力を備えている。
今回は「ひゅうが型」と「いずも型」の装備や武器の違い、船体や対潜ヘリの運用能力について解説していこう。
「いずも」と「ひゅうが」の違いや「ひゅうが」が空母化できない理由を動画でも解説してるよ!
この記事に書かれている内容は
ひゅうが型護衛艦の装備と空母化できない理由
護衛艦いずも型とひゅうが型は DDHとよばれ、ヘリコプター護衛艦を意味する。
「はるな型」の後継艦として建造された「ひゅうが型」は多数の対潜ヘリコプターを同時に運用できる対潜
中枢艦として計画された。2009 年に就役した1番艦の「ひゅうが」は横須賀、2011 年に就役した2番艦の「いせ」は佐世保に配備されている。「ひゅうが型」のスペックはこのようになって
いる。
全長197m 幅33m
満載排水量 19,000トン
エンジン:ガスタービン×2
出力100,000馬力
速力30ノット(時速55km)
兵装 ESSM 対空ミサイル × 12 3連装短魚雷×2
近接防御システム 20mmCIWS ×2
搭載ヘリコプター最大10機
乗員数 347名 司令部要員25名
海上自衛隊はひゅうが型が登場するまで、8艦8機態勢を基本として部隊を編成してきた。
1 つの護衛隊群に8隻の艦艇と、それに搭載する8機の対潜ヘリコプターという運用方法である。
従来までのDDH は最大3機しかヘリコプターを搭載することができなかったが、「ひゅうが型」から飛行甲板は空母のように全通甲板となり、長さ197m、幅 33mという広大な広さになった
ことから格納庫を含めると最大10 機のヘリコプターを搭載でき、3 機同時発着艦ができる能力持つようになった。
航空機用エレベーターは「いずも型」のように外側には装備されておらず、飛行甲板を貫く形になっているため、右舷から見ると輸送艦「おおすみ型」のような印象を受ける。
エレベーターは前部と後部に2基装備され、30トンの力量かつ20m の長さがあるため、ヘリコプターはメインローターをたたまずに運搬できる。
船体構造は6層、艦橋部分は5層の合計 11 層からなり、最上部の5層目に装備されているFCS-3 レーダーはあきづき型が装備しているものとほぼ同様である。
FCS-3 は通常の水上捜索レーダーのほかに、ミサイル管制用としても機能する多機能レーダーである。
大小2面のフェーズドアレイレーダーで、大きいほうが目標捜索、追尾、小さいほうが対空ミサイルの管制を行う。
ひゅうが型はヘリ空母としての機能だけでなく、水上戦闘艦艇としての装備も重視されているのが特徴である。
「ひゅうが型」の兵装については「いずも型」には装備されていない対空ミサイル「ESSM」が VLS(垂直発射装置)に 12 発搭載されている。
射程は短いものの、自艦防御の観点から見れば近接防御兵器の CIWS だけよりも心強い。
そして、左右舷には3連装短魚雷発射管が装備されており、Mk46魚雷や 97式魚雷を発射することができる。
主砲と対艦ミサイルを除けば新型 DD と同じスペックを持つ護衛艦である。
また、潜水艦を探知するための FA ソーナーが装備されており、潜水艦が存在する深海域から浅海域、近距離から遠距離まで広いエリアをカバーできる。
この FA ソーナーのフルスペックを装備しているのは海上自衛隊ではひゅうが型のみである
艦内の設備では「準病院船」として機能するように、手術室や医療支援機能が強化されており、ベッド数は8床と「いずも型」よりも少ないものの ICU(集中治療室)の機能も持つ。
2016年に発生した熊本地震においては「ひゅうが」が八代海に展開してオスプレイが支援物資を輸送し、ヘリコプターの拠点として従事した。
2 番艦の「いせ」は 2013 年にフィリピンを襲った台風被害救助のため派遣され、レイテ沖に到着。
物資の輸送や医療支援、防疫活動を行った。
ところで、ひゅうが型はいずも型のように空母化されてF-35Bを搭載しないのかという疑問であるが、結果から言えば、その対象ではないだろう。
その理由は、ひゅうが型は船体のサイズがいずも型より51mも短い点、また航空機用エレベーターの位置など運用上の制約が大きいことなどがある。
いずもは2基のエレベーターうち1基が右舷にあるため、機体がはみ出した状態でも運搬が可能かつ飛行甲板の使用制限が少なく、航空機の運用が効率的にできる。
一方、ひゅうが型は2基ともエレベーターが飛行甲板内側に設置されているため、いずも型に比べて飛行甲板に使用制限が生じてくる。
そして、いずも型は設計段階から多くの空所スペースが設けられている。
つまり当初から将来の空母化を見据えてかなりの「余裕」を持たせているのだ。
航空機用の燃料貯蔵タンクや兵器庫、パイロットの待機室などに活用されると予想されるが、ひゅうが型においては、そこまでのスペースはない。
さらに、ひゅうが型は後部に対空ミサイルのVLSが装備されているため、飛行甲板と格納庫の広さにも影響している。
このような理由からひゅうが型は空母化されずに、今後もヘリ空母としての運用が継続されるだろう。
いずも型護衛艦の改修と装備
ひゅうが型が登場してから、5年後に海上自衛隊最大の護衛艦である「いずも型」が就役した。
「しらね型」の後継艦として建造された1番艦の「いずも」は横須賀、2番艦の「かが」は呉に配備されている。
いずも型については、ひゅうが型の運用実績を踏襲しつつ、航空機運用能力、車両輸送、医療関係などの機能性をさらに向上させている。
逆に、兵装は近接対空火器のみで、ひゅうが型のようにミサイルや魚雷は装備されておらず、水上戦闘艦としての能力はひゅうが型よりも劣っている。
いずも型のスペックはこのようになっている。
全長248m 幅38m
満載排水量 26,000トン
エンジン:ガスタービン ×4
出力:112,000馬力
速力30ノット(時速55km)
兵装 近接防御 11 連装 Sea RAM×2
20mmCIWS X 2
搭載ヘリコプター最大14機
乗員数 470名司令部要員50名
飛行甲板の広さはひゅうが型の約 1.5 倍になり、ヘリコプターの発着艦スポットはひゅうが型より1箇所多い、5 箇所で、各スポットには燃料給油装置と消化装置が設置されている。
格納庫は長さ145m 幅 21mとなっており、第1格納庫、第2格納庫、航空整備庫の3箇所が防火シャッターで仕切れるようになっている。
船体部分はひゅうが型よりも1層多い7層構造で艦橋部分は5層の合計12層からなる。
いずも型は海上自衛隊の護衛艦で初となる、他の艦艇への燃料補給能力を有している。
補給艦のような高い補給能力はないものの、長期行動時などでは僚艦に燃料を補給することができる。
いずも型は、基本的に護衛される艦艇として運用されるため攻撃武器はなく、ソーナーは装備されているものの、ひゅうが型よりも対潜捜索能力は劣っている。
しかし、対潜ヘリコプターを中心とした対潜戦では、探知から航空攻撃までを行うことができる。
また、ひゅうが型には装備されていない魚雷防御システムが2種類装備されており、敵の魚雷から回避するためのいわゆる「おとり」を発射できる。
従来までは艦艇部隊に搭載できるヘリコプターは限定的であったため、潜水艦を探知した場合、対潜ヘリは補助的な役割で運用されることが多かった。
しかし、いずも型のように 14 機もの対潜ヘリを搭載でき5機を同時発着艦できる能力をもつようになったことで、航空機を中心とした対潜戦が中心となり、艦艇だけでは不可能であった広域
エリアを捜索できるようになった。
特に水中を高速で移動する原子力潜水艦の追尾は対潜ヘリの運用が効果的である。
レーダーはひゅうが型のFCS-3からミサイル管制機能が省かれたOPS-50 が装備されており、2番艦の「かが」は改良が加えられた OPS-50Aが装備されている。
また、医療設備も充実しており、ベッドは 35床、手術室、集中治療室、歯科治療室が完備されている。
「ひゅうが」と同様に熊本地震では、陸上自衛隊員160名、車両 40 両を搭載して北海道の小樽港を出港し、博多港に入港後、被災地支援を行った。
2番艦の「かが」においても、2018 年の広島豪雨で被災者に対し入浴支援を行うなど、災害派遣では他の護衛艦にはない能力を発揮している。
DDH ひゅうが型、いずも型の違い まとめ
空母型DDHは部隊で行動する際、司令部が乗艦して指揮をとる指揮中枢艦として運用されることがほとんどである。
そのため、重要防護艦として指定されるため、イージス艦や DD 型護衛艦に守ってもらいながら作戦を遂行する必要がある。
また、はるな型など旧 DDH とは形や機能は大きく変わり、災害派遣にも対応できるように医療設備が向上し、艦内にはマスコミや自治体関係者が活動できる場所として非常に広い多目的区
画が設置されている。
海外派遣にも対応でき、国際緊急救助活動など臨時で乗艦できる人数はひゅうが型が 150 名、いずも型が500名にも及ぶ。
そして、「いずも」と「かが」については、F-35B の運用が加わり、さらに活躍の場が広がることが予想される。
F-35Bが搭載されれば東シナ海での中国機に対するプレゼンスや警戒監視など新たな任務が付与されるだろう。
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