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従来の航空機は、このレーダーの探知を逃れるための方法としては、レーダーの死角となる超低空を飛行することしかなかった。
しかし、現代においては、このレーダーの存在を無力化すると言っても過言ではない新たな航空機が登場した。
それがステルス戦闘機だ。
レーダーの反射面積を極限まで減らしたステルス戦闘機に対しては、従来のレーダーでは、探知が困難であることから、世界各国では、このステルス戦闘機の開発が急がれている。
今回は、そのステルス戦闘機の代表とでもいうべきアメリカの主力戦闘機であるF-22とF-35の2機種について、性能比較と運用方法の違い、また開発の経緯について解説していこう。
F-22とF-35の性能比較
F-22とF-35は、共にステルス機であり、RCSと呼ばれるレーダー反射面積は、従来の非ステルス機よりも遥かに少ない数字となっている。
この数字が少ないほどレーダーに探知されにくくなるのである。
他の戦闘機との比較をしてみると、ステルス性を全く考慮していないF-15は10m²、その後一部にステルス性を持たせたF-18は1m² なのに対し、F-35のRCSは、0.005m²、F-22においては0.0005m²といわれており、これは昆虫程度のサイズと同等である。
F-22は、全長:15m、翼幅:10mというサイズにも関わらず、レーダーで探知するには昆虫を捕捉するのと同じくらい困難であることを示している。
推進システムとしては、F-22のエンジンは、プラットアンドホイットニー社のF119エンジンを2基装備しており、最大速度はマッハ2である。
これに対してF-35は、このF-22のエンジンをベースに発展させたタイプのF135アフターバーナー付ターボファンエンジンを1基装備しており、最高速度はマッハ1.6である。
F-22の武装は、20mm機関砲1門、短距離空対空ミサイルサイドワインダー2発、中距離空対空ミサイル「アムラーム」を6発装備できる。
また対地誘導爆弾と呼ばれるJDAMを搭載することが可能である。
一方のF-35は、25mm機関砲1門、またミサイルの搭載方法は、状況に応じて様々なバリエーションがあり、空対空戦闘の場合は、中距離空対空ミサイル「アムラーム」を4発、対地攻撃を行う場合はアムラーム2発と対地誘導爆弾2発を装備できる。
また機外に搭載する場合には空対空戦闘では、中距離ミサイル2発、短距離ミサイル2発、また対地攻撃ミッションでは、対地誘導爆弾6発を搭載可能である。
その他、対艦ミサイルや巡航ミサイルなど様々な武器を搭載可能である点がF-22との大きな差である。
F-22にはアクティブフェーズドアレイレーダーが装備されており、250km先までの敵機を探知することが可能で、探知したの目標情報を、三次元で画像に表示させることが可能だ。
また、高度な対電子戦システムを搭載しており、自機のレーダーと通信システムを保護することで、電子妨害に対処できる。
F-35には最新のアビオニクスシステムが搭載されており、150km先までの敵を探知することが可能である。
またパイロットのヘルメットには、ヘッドアップディスプレイシステムが装備されており、機体各所に設置されたカメラによりパイロットが360度どこを向いても、機体を透過して映像が映し出される仕組みになっている。
F-22とF-35の製造コストと運用方法の違い
製造コストについては、F-35が1機100億円なのに対して、F-22は368億円にもなる。
F-22の製造コストが、ここまで高額になった原因としては、研究開発に多くの費用が掛かった点、及び機密事項の流出による情報漏洩が起きる恐れがあるとして輸出を禁じられたという点が挙げられる。
つまり開発費が高騰し、その費用を回収するための輸出による外貨獲得の手段が途絶えたことが、コスト増の要因であったと言える。
F-22の本来の機体のコストは160億円程度である。
一方のF-35は、最初から輸出を前提として生産され、日本も含む多くの国で採用が決定されたため、1機当たりの機体の単価は安くなっている。
運用方法について米空軍では、以前からハイローミックスという戦法がとられている。
これは、敵の戦闘機を空中戦において制圧し、制空権を確保するための制空戦闘機と、地上攻撃など、それ以外の目標を攻撃するための戦闘攻撃機の2機種をミックスさせて運用していくという方法である。
今までは制空戦闘をF-15が、地上攻撃をF-16が担当していたが、今後は、それをF-22とF-35に置き換えていくことになるだろう。
F-22は敵戦闘機に対する空中戦においては、圧倒的な強さを誇る反面、それ以外の目標に対する攻撃力は劣るという面がある。
これに対してF-35は空中戦能力においてはF-22に劣るが、汎用性があり、各種攻撃目標に対しては幅広い運用ができるといった面がある。
つまり、お互いに足りない部分を補い合うことができるという点において、この方法は効果的であると言えるだろう。
では、これらのステルス戦闘機の攻撃に対する防空システムは、現在どのようになっているだろう?
ステルス機は「レーダーに映らない」というわけではなく、正確に言うと「レーダーに移りにくくなる」ということである。
つまり具体的に言うと、相手のレーダーの探知できる距離が狭まるということである。
F-22やF-35が敵の空域に侵入した場合、隙間なく張り巡らされたレーダーでも探知できる距離が狭まる。
レーダーが探知した時点では敵機は目前に迫っており防空体制はお手上げの状態となる。
その結果、迎撃のため戦闘機をスクランブル 発進させる時間が、なくなってしまうのである。
F-22やF-35の開発経緯や技術的進化
F-22は、ロッキードマーチン社とボーイング社の2社による共同開発で行われた世界初のステルス戦闘機である。
初飛行は1997年9月7日で、運用が開始されたのは2015年12月15日からである。
愛称は「猛禽類」を意味するラプターの名称が付けられている。
F-22は、アメリカ空軍のF-15戦闘機の後継機として、先進戦術戦闘機計画に基づき開発された。
F-22の開発は米ソの冷戦下で行われ、当初は750機の生産が予定されていた。
しかし旧ソ連が崩壊し、東西冷戦が終了したことや、開発が遅れていた影響もあり、最終的には187機で生産を終了している。
そのため、本来なら退役していくはずであったF-15は、今後も改良を重ねながら使用していくことになった。
F-22は、従来の戦闘機とは違い、ステルス性を高めるため、レーダーからの電波を反射させやすいミサイルや爆弾などは胴体内部に格納する「ウェポンベイ」というシステムをとっており、これはF-35も同様に装備されている。
これは今までの戦闘機にはない新しいシステムであり、技術的進化だと言えるだろう。
一方のF-35は、ロッキードマーチン社を中心とする複数の企業で開発され、初飛行は2006年で、2011年5月よりアメリカ空軍に納入されている。
アメリカの陸海空3軍の異なった運用要求を一つの基本設計で行うことのできる多用途作戦機として登場しており、以下の3つのタイプが存在している。
F-35A 空軍用:通常離陸着陸型
F-35B 海兵隊用:垂直短距離離着陸型
F-35C 空母搭載用:艦載機型
航空自衛隊ではF-35AとBを合わせて147機導入する予定であり、現在は青森県の三沢基地において、配備が開始されている。
現時点での生産数は860機であるが、配備予定の機数を含めると、その総数は2443機にもなり、将来的には5000機を超える見込みである。
F-35は、現在保有している F-16、F-18などの各種戦闘機との交代が行われており、すでに岩国基地に配備されていた海兵隊のハリアーはF-35Bに更新されており、第七艦隊所属の米空母の艦載機であるF-18もF-35Cに変わっている。
ステルス機を探知する新型レーダー
続々と誕生してくるステルス戦闘機に対処するために、現在の防空レーダーシステムは、新たな技術革新が必要となってきた。
そのため各国は、ステルス戦闘機を捉えることのできる新たなレーダーの開発に取り組んでいる。
自衛隊においても、マイモレーダーと呼ばれる、小型のアンテナを複数個所に配置して、ステルス機を探知できる次世代レーダーの開発に取り組んでいる。
このように戦闘機とレーダーは、鉾と盾のような関係になっており、お互いに「いたちごっこ」を今後も延々と続けていくことになるだろう。
戦争において、最優先されるのが航空優勢を取ることである。
F-22を導入できなかった日本は、国産戦闘機F-3を開発予定である。
現在保有しているF-15の後継機としての一刻も早い誕生を期待したい。
次の動画では、航空自衛隊の次期戦闘機F-3の全貌について解説しよう。
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