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前回は海上自衛隊の最新鋭潜水艦「たいげい型」に装備されている進化した潜望鏡と発令所の秘密について解説してきた。
後半は、 最新鋭潜水艦たいげい型の艦内の構造と、 潜水艦として世界初となるリチウムイオン電池の動力について解説していこう。
この内容は動画でも見れるよ!
この記事に書かれている内容は
潜水艦の構造と乗員たちの生活
潜水艦の艦内は複数の区画に仕切られており、前部は魚雷発射管室と乗員の居住区画がある。
居住区といっても部屋といえるほどのスペースはなく通路に沿って乗員の3段ベッドがあるだけである。
ただし、 米海軍のように3人で2つのベッドを共有するということはなく、乗員1人に1つのベッドが用意されている。
カーテンを閉めることで最低限のプライベートが保てるようになっており、イメージとしては寝台列車のようなベッドである。
幹部乗員の士官の部屋も「たいげい型」から9人部屋となっており、ベッドの他に事務作業用のデスクやいすが置かれている。
たいげい型からは女性乗組員も6名乗艦できるようになったため、ロックの付いた扉と専用の居住区が設けられている。
ただし、スペースの問題からシャワーやトイレは共同で使用する。
その後方には、潜水艦艦の中枢部である発令所と電信室、電子機器室が並ぶ。
発令所については前回解説したのでそちらをご覧いただきたい。
海上自衛隊の「たいげい型」潜水艦の新装備と「そうりゅう型」との違い
電信室とは味方部隊との通信を行うときなど通信機器の調整を行う場所である。
その後方には士官室と食堂、 厨房という配置になっている。
引用:https://car.motor-fan.jp/article/10013973
士官室とは幹部専用の部屋で会議や事務作業を行う。
艦内で唯一の個室は艦長室だけであり、各所に命令を出したり、モニターで戦術状況を確認したりできるようになっている。
ところで、 潜水艦の水は非常に貴重なため、 艦長や女性も含めシャワーは3日に1回で、なるべく10分以内に使用しなればならない。
ただし、女性については髪が長いこともあり多少優遇されているという。
また、女性が乗り組んだことで水の使用量が増えたとされる理由に、男性も「におい」に気を遣うようになったという話もある。
洗濯機は水を大量に使うだけでなく、潜水艦にとって致命的である「音」を発生するため搭載していない。
そのため、出港分の下着類を準備する必要があり、 使った下着類は密閉袋などにつめて入港まで保管することになる。
引用:https://car.motor-fan.jp/article/10013973
食堂は士官食堂と科員食堂の2箇所に分かれており、3名の調理員が 70名分の料理を賄っている。
驚くべきことに、調理員が野菜をきる包丁の音ですら自艦のセンサーで探知できるという。
引用:https://car.motor-fan.jp/article/10013973
海上自衛隊の金曜日の昼食は海軍の頃からカレーとなっているが、 潜水艦も同様である。
どこの国の潜水艦も食事については、その国の海軍の中でもっとも豪華といわれている。
その理由については、海軍の中でもっとも過酷でストレスが溜まる環境で任務についているため、食事だけでも楽しみにしてほしいという願いからである。
このように潜水艦にはいろいろな工夫が施されているが、それを動かしているのは全て電気の力である。
では、潜水艦はいったいどのようにして電力を生み出しているのだろうか?
世界初の潜水艦用リチウムイオン電池と甲板の秘密
水中では空気がないため燃料を燃やして、 艦艇や戦闘機のようにエンジンを回すことはできない。
一度潜航したら、空気を必要としない電気により動力を得ることになる。
海上自衛隊の潜水艦の動力は「おやしお型」の鉛電池 、「そうりゅう型」の鉛電池+AIP (大気非依存型推進)、 そして、 「たいげい型」のリチウムイオン電池と進化してきた。
ただし、いずれのタイプも原子力潜水艦のようにまったく充電せずに数か月も潜航することは不可能である。
規定の電池残量まで減った場合は、 海面付近まで浮上してシュノーケルから空気を取り込み、 ディーゼルエンジンを回して発電しなければならない。
車に例えるならエンジンを回してバッテリーを充電するハイブリッドカーのようなイメージである。
一方、 原子力潜水艦は原子炉内でウランを核融合させることで食料と乗員の精神力さえもてば、半永久的に潜航したままの状態を保てる。
酸素も海水を電気分解することで発生できるので浮上する必要はないのだ。
現在の潜水艦は通常動力潜水艦と原子力潜水艦の2種類しか存在しない。
どちらも発電して電気で動力を得ることは同じであるが、 その発電方法が違うのである。
詳しい内容については、 他の動画で解説しているのでそちらをご覧いただきたい。
たいげい型の動力であるリチウムイオン電池は、化学反応を用いずに電気エネルギーが得られる画期的なシステムで、開発した企業はバッテリーで有名な GSユアサである。
リチウムイオン電池は鉛電池と比べると重量あたりのエネルギーが大きく、スマートフォンのように急速充電にも対応している。
発電のために浮上してシュノーケルを出す時間も短時間になることから、敵に探知される確率も低くなる。
従来の鉛電池は満充電に近づくとガスが発生するのを防ぐために、充電速度を落とす必要があったが、リチウムイオン電池は充電ペースを落とすこ
となく充電することが可能となった。
また、リチウムイオン電池は大きな電力を持続的に放電できるため、水中で高速を出すことができ、 潜航時間も長くなるというメリットがある。
(AIP機関)
「そうりゅう型」で装備されていた AIP 機関は出力が小さく低速航行向きであったため、あくまでも補助的な役割であった。
そのため、作戦海域では AIP を使用して敵を待ち伏せし、 戦闘となったら鉛電池を使用して高速を発揮するといった戦術が考えられる。
AIP の致命的な弱点は、液体酸素を使い切った時点で、 鉛電池のみの動力しか使えなくなるということだ。
そのため、どのタイミングで AIP を使うかといった艦長の判断が重要になってくる。
リチウムイオン電池は、鉛電池よりも寿命が長く、かつAIPよりもエネルギー効率が良いという点から、 そうりゅう型の11番艦「おうりゅう 」、12番艦「とうりゅう」から搭載されている。
ただし、 リチウムイオン電池は蓄えられるエネルギーが大きいことに比例して価格が高く、また発火の危険性など安全面には十分な管理が必要とされる。
究極の静粛性を追求する日本の潜水艦
ほとんど知られていない「たいげい型」の新しい技術として「甲板のラフト化」 が挙げられる。
これは、潜水艦の船体である船殻に対して甲板を浮いた状態にすることで、艦内で発生する様々な音が船体を伝わって外に漏れるのを防止することで、従来よりもさらに静粛性が向上している。
潜水艦がもっとも重視するのが静粛性である。
水中では電波が使えないため、敵艦艇や航空機は潜水艦が出す音をセンサーで探知して場所を特定して攻撃してくる。
潜水艦は静粛性を追及するために、 たった1デシベル下げるために数十億円の費用がかかる。
ちなみに、非常に静かな図書館で静かに読書しているとき、その音量レベルは大体30デシベル程度であることから1デシベルは人間が感じ取れないほどの音量である。
日本の潜水艦は、そこまで静粛性を追求しており 現在海上自衛隊の潜水艦は世界トップレベルの静粛性を実現している。
原子力潜水艦は潜航時間に制約がない代わりに、常に原子炉を冷却する必要があることから、 静粛性については電気で走る通常動力潜水艦とは比較にならない。
車に例えるなら、ガソリン車の場合、走行中はもちろんのこと、 停止中でもアイドリング音がするが、 EV車はエンジン音がまったくしないことと同じ原理である。
ちなみに、 世界一巨大な原子力潜水艦であるロシアのタイフーン型は、 まるで太鼓をたたいているようだと揶揄されるほど騒音を発生する。
タイフーン型については他の動画で解説しているのでそちらをご覧いただきたい。
海上自衛隊の潜水艦は、 世界の通常動力潜水艦の中でも大型で、 作戦行動は長期間かつ高い進出能力を持っている。
過去には、「くろしお」 や 「しょうりゅう」 が南シナ海を通過してベトナムに入港したほか、 その他の潜水艦もハワイのパールハーバーに入港したこともある。
つまり、これらの行動は海上自衛隊の潜水艦が遠距離まで進出できる能力を示しており、南シナ海や東シナ海での抑止力の強化となっている。
敵艦艇や航空機が目を光らせている中、 潜水艦は作戦海域に進出して任務を終了し、 無事に母港に帰ってこなければならない。
動力が鉛電池、AIP、リチウムイオン電池と進化するにつれて、 制約が少なくなり有利に交戦できるようになった。
潜航期間は原子力潜水艦に及ばないものの、 今後は、さらに効率的な動力が開発されていくかもしれない。
次の動画では、原子力潜水艦と通常動力潜水艦の能力差や無限の潜航能力を発揮する原子炉の仕組みについて解説しよう。
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