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2021年、「空母」として半年にも及ぶ初の作戦航海に出港したイギリス海軍「クイーンエリザベス」
アジアを経て太平洋展開を行うため、日本にも初めて寄港する。
その途中、中国が領海と言い張る東シナ海を通過し、いわばイギリス版「航行の自由作戦」である。
クリーンエリザベスは、すでに全艦が退役した「インヴィンシブル級」の後継艦として建造された英海軍史上最大の空母である。
1番艦の「クリーンエリザベス」は2017年12月に、2番艦の「プリンス·オブ·ウェールズ」は2019年 12月にそれぞれ就役した。
当初の計画では、米艦艇の揚陸艦のように垂直着陸の航空機のみに対応したコンパクトな STOVL空母を建造する予定であったが、通常着艦が可能な CTOL 空母への変更を視野にいれたため、船体のサイズが巨大化し、英海軍で最大の空母となった。
しかし、経費がかかりすぎるということから、結果的には当初の計画通り F-35B を運用するSTOVL 空母となっている。
今回は、イギリス海軍が誇る空母「クリーンエリザベス」の装備や特徴、艦載機について解説していこう。
クイーンエリザベスがどんなスゴイ空母なのかを動画でも解説したので見てね!
英国史上最強の空母「クイーンエリザベス」のスペック
冒頭で説明した STOVL空母とCTOL 空母の違いであるが、STOVL 空母とはF-35Bのように短距離離陸·垂直着陸ができる艦載機を搭載した空母のことである。
海上自衛隊の「いずも」においても、STOVL空母化に向けて改修が行われている。
一方、CTOL空母とは、通常離発着ができる航空機を搭載しており、アメリカ海軍のように広い飛行甲板を有する空母で、着艦制限がないため、多種類の艦載機を運用することが可能である。
米空母では F/A-18、F-35C のほか、カタパルトにより早期警戒機や電子妨害機も発艦させることができる。
クリーンエリザベスは就役から1年後の 2018 年9月にアメリカ東岸において F-35B の発着艦試験に成功しており、すでに運用できることが証明された。
インヴィンシブル級の艦載機であったシーハリアーFA2 と比較するとF-35Bは大幅に戦闘力がアップしていることから、英国史上最強の空母であることは間違いない。
クイーンエリザベスは艦橋が前後に2つ設置されているツインアイランドという構造が見た目の特徴といえる。
一般的な空母は、艦橋が飛行甲板の右側中心付近にあるが、クリーンエリザベスは前部と後部の2つに分かれている。
このユニークな構造は世界でもクリーンエリザベスだけであり、その用途は前部アイランドが操舵などの「航海用」、後部アイランドが艦載機の「航空管制用」として使用されている。
後部アイランドに設置された空港の管制塔のような非常に大きな窓も他国の空母には見られない特徴といえよう。
各アイランドの後部には航空機運搬用の巨大エレベーターが設置されており、2つのエレベーターを使用して格納庫内へ出し入れを行う。
航空機用エレベーターは米空母と同じく2機を同時に搭載できるサイズとなっている。
なお、格納庫から搬出された航空機を飛行甲板まで上昇させる時間は約 60 秒である。
これとは別に武器などを飛行甲板に運搬するためのエレベーターも装備されており、弾薬の載せたパレットごと上昇して横移動できるように効率化されている。
クリーンエリザベスは見た目も珍しいデザインをしているが、その建造方法もユニークである。
まず5つの造船所が船体の元となるブロックを分担して建造、完成したブロックを海上輸送して、最終的に 25個のブロックを「バブコックマリン社」のロシス工場で組み立てるという方式
で完成した。
空母クリーンエリザベスのスペックは次のようになっている。
全長280m 全幅 39m~73m
満載排水量 65,000t
搭載機数 40 機
乗員 679名 航空要員 600 名 司令部要員 95名
出力 107,280 馬力
航続距離 10,000 マイル(18,520km)
速力 25kt(約46km)
動力:ガスタービン×2
ディーゼル×4
電動機×4
兵装:20mmCIWS, 30mmGunX 4
全長は約 280mで米空母のニミッツ級よりも50m ほど短いが、 同じヨーロッパのフランス空母「シヤルルドゴール」 よりもサイズ、 排水量とも上回っている。
クイーンエリザベスは英海軍史上最大の艦といわれるだけあって、 艦内は 12層の甲板と 3000以上の区画に分かれており、 イギリス海軍でも類を見ないほど巨大な艦である。
そのため乗員が迷わないように工夫がされており、 艦内にはQR コードが掲示され、 専用のタブレットで読み取り目的の区画をタップすると、 最適なルートを表示してくれるシステムを導入している。
飛行甲板の面積は、 先代のインヴィンシブル級空母2隻分に加え「テニスコート」 9面分という面積で、 格納庫も含めると F-35B戦闘機と対潜ヘリコプター「マーリン HM2」が 40機搭載可能とされている。
しかし、 必要に応じて最大70機程度までは搭載できるとされている。
クイーンエリザベスの飛行甲板は左半分が発着艦スペースで、 右半分が駐機や武装、 燃料搭載のスペースとなっている。
ちなみに飛行甲板には上空から見ても一目で識別できるように「クリーンエリザベス」 はアルファベットのQの文字が、「プリンス·オブ·ウエールズ」にはPの文字が描かれている。
兵装は近接防御武器のCIWS が後付けで装備されており、30mm 単装機銃は未装備のままとなっている。
では、クイーンエリザベスが装備しているレーダーの性能はどの程度なのだろうか?
前部アイランドには駆逐艦が装備しているプレナーアレイレーダーが装備されており、最大探知距離は約400km、追尾数は最大 1000目標とされている。
そして後部アイランドには三次元対空レーダーが装備されており、 探知距離は約 200km であるが、「マッハ3 で移動するテニスボール大の目標を25 キロ先で追尾できる」 としている。
日米イージス艦の SPY レーダーには劣るものの、 空母に装備するレーダーとしては十分なスペックである。
クリーンエリザベスのエンジン
空母の動力であるが、アメリカの原子力空母ニミッツ級やフォード級の場合、 2基の原子炉で発生させた蒸気の力を利用して動力を得る仕組みである。
一方、 クリーンエリザベスは統合電気推進でロールスロイス製の MT30 ガスターピンを2基と、 ディーゼル発電機を4基搭載している。
発電能力は合計で最大 112MW を発揮し、このパワーの一部で 6.7mの4つのスクリューを回し、 残りの電力を艦内システムに分配している。
最大速力は 25 ノット(約 45km)で米空母の 30kt と比較すると時速 10km ほど劣るが、 空母としての能力は十分であり任務に大きな影響はないと思われる。
燃料の軽油は400 万 L(約 3200 トン)を搭載でき、 航空燃料の JP·5 は 300万L(約 2400 トン)を搭載している。 統合電気推進により、 航行で使用する電力と艦内システムで使用する電力を効率よく分配できる。
クイーンエリザベスほどの船体サイズになると、 舵は2枚装備されており、 ガスタービンと同じくロールスロイス製で、重量は従来の半分まで軽量化されている。
さらに、 スクリューの回転で発生するキャビテーションと呼ばれるバブルにより潜水艦に探知されることを防止するために、 舵にねじれを加えることでキャビテーションの発生を減少させ
る工夫がされている。
クイーンエリザベスの艦載機
クイーンエリザベスは米海軍のようにカタパルト式の空母ではないため、通常離陸型の戦闘機は搭載できない。STOVL 機と呼ばれる垂直に着艦できる戦闘機かヘリコプターのみとなる。
STOVL 空母のため艦載機はカタパルトではなく中国空母の遼寧と同じくスキージャンプ式による発艦となる。
滑走路は約 90m、ジャンプ台の角度は約12度で遼寧や山東と同じ角度であることから、 この角度が艦載機を発艦させるベストな傾斜と思われる。
スキージャンプ式で飛び出すことで、 浮揚力と推進力を同時に発揮することができ、 カタパルトなしで出撃が可能となる。
現在のところ、 F-35B ステルス戦闘機と対潜ヘリコプターのマーリンHM2が合計 40 機搭載できる設計である。
米空母のように早期警戒機は搭載できないが、マーリン HM2のレーダーを変更することで早期警戒機として運用することも可能となっている。
また、任務によっては、アパッチやチヌークといったヘリコプターも搭載可能である。
クイーンエリザベスの格納庫のサイズは長さ163m、幅 29mで艦内に 20 機の艦載機を収容できる。
ちなみに海上自衛隊のいずも型の格納庫のサイズは長さ145m 幅 21m である。艦載機の搭載数は空母として重要であるが、いくら多くの艦載機を搭載できても出撃率が低くては
話にならない。
空母から戦闘機を出撃させることを「ソーティ」といい、 クイーンエリザベスは 24時間で 72 ソーティとなっているので、1時間あたり 3機の出撃が可能である。
発着用スポットは6箇所あり、そのうち1つがヘリコプター専用になっている。
ちなみに米空母のニミッツ級は24時間で 240ソーティなので、1時間あたり 10機を出撃させることができる。
F-35B の着艦については、米海軍の揚陸艦と同じように左舷側でホバリング状態からスライドして飛行甲板に下りる方法である。
F-35Bはホバリング時にエンジンノズルが下方向に向くため、 甲板面が排気熱にさらされる。
それに耐えられるようにクイーンエリザベスの飛行甲板はアルミとチタンのコーティングにより耐熱塗装が施されている。
いずも型においても4,5番スポット付近の耐熱塗装が完了しており、 F-35B の着艦に耐えられる甲板に改修された。
イギリス海軍空母クイーンエリザベス
クイーンエリザベスに限らず、 海上自衛隊のいずも型や中国の遼寧など、 カタパルトがないため早期警戒機を搭載することができないのが大きなハンデになっていることは否定できない。
早期警戒機は艦艇では探知できない、 非常に広いエリアをカバーし、 戦闘機の管制や指揮統制を行う。
また、探知情報を戦闘機やイージス艦などに共有する役割を果たしている。
マーリン HM2 を早期警戒機の代用として運用できるが、速度も航続距離も劣ることは間違いない。
航空基地から遠く離れた洋上で、 空母としての能力カを発揮するためには早期警戒機の搭載は必要不可欠であり、今後の課題となるだろう。
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