国民全員870万人が避難できるスイスの核シェルターの仕組みと日本の比較
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「114%と0.02%」

この数字はスイスと日本の核シェルターの普及率を表している。

ウクライナにおける核兵器の使用がもたらす結果について、戦術的な核兵器であろうとも「必然的に」スイスやヨーロッパ全土に影響を及ぼすと推測されている。

その理由は、放射性物質が風や雲により運ばれるからだ。

スイスの軍事アナリストは「プーチン氏がウクライナの空で戦術的な核兵器を爆発させると、爆発物や風向き次第で、スイスにある量の放射性物質の降下が見られるだろう」と推定している。

しかし、影響の程度は兵器により異なるものの、原子力発電所の事故に似た状況が引き起こされ、チェルノブイリの事故以上の深刻な被害を引き起こす可能性があると警告している。

「現代の戦術的な核兵器は、かつて長崎や広島に投下された原爆よりも強力だ」とされている。

今回は、全住民が避難できるスイスの核シェルターの仕組みと構造、また日本を含む各国の普及率について解説していこう。

しまかぜ

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全住民に提供された核シェルター

スイスに外国から訪れた客が「地下室のこの堅牢なドアはなぜあるのだろう?」と、問うことが多い。

それは、重厚なドアの向こうにワインや古書が保管されているのを見て不思議に感じるからだ。

これは、スイスの家庭でよく見かける防空壕の入口についての話だ。

これらは、原子爆弾攻撃など最悪の状況に対して市民を保護するためのものだ。

厚い鉄筋コンクリートのドアの隣には、通気装置とガスフィルターが設置されている。

核シェルターは、「爆風」「熱線」「放射線」「残留放射線」といった、核攻撃時に予想される4つの影響から保護する設計となっている。

日本では核シェルターの普及はまだ進んでいないが、普及率が高い国々では、これら4つの影響を防ぐために、核シェルターの仕様が標準化されている。

どの国でも、基本的には地上建築物が崩壊することを前提に仕様が決められており、その結果、鉄筋コンクリートを用いて地下に建設することが基本となっている。

スイスは「シェルター精神」で知られており、法律により全住民には避難所が提供されている。

連邦政府は必要な食料の備蓄について国民に指導を行っている。

スイスがかつては核兵器に対する準備をしっかりと行っていたが、現在はその準備が緩んでいると指摘されている。

軍の防空壕は今や過去の遺物となり、民間企業に貸し出されている。

かつて世界が誇ったスイスの防衛力は今や過去の話だ。

しかし、スイスの国防省は「全スイス国民のための避難所が存在し、シェルターに関してはスイスは非常に充実している」と反論する。

各州はシェルターを配分し、定期的に見直しを行う必要がある。

「シェルターの割り当ては治安上の必要性が生じた時のみ公開される。現在の状況はそれに該当しない」と主張する。

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24時間監視されている放射線

スイスの国立警報センターは独自の放射能検出ネットワークを運営している。

国防省によれば、スイス全土に76本の測定器が設置されており、10分ごとに測定値を送信する。

一定のしきい値を超えると、自動的に警報が鳴るというシステムが存在する。

すなわち、放射線は24時間監視されているのである。

スイスには危機が発生した際に鳴らされるサイレンが7,000箇所以上に設置されている。

放射能雲がスイスに到達した場合、国民は自宅に留まり、窓や扉を閉じるか、または数日間シェルターに滞在するよう指示される。

吸入した放射性ヨウ素が甲状腺に沈着するのを防ぐために、ヨウ素の錠剤を摂取することも求められることがある。

スイスの防空壕は、全てのスイス国民を収容可能な緊急対策施設となっている。

これと同様の設備は、世界中で見つけることは困難だ。

かつて防空壕と呼ばれていた地下の核シェルターは、スイス国内の至る所に設けられている。

スイス人は何よりも自己保護を考え、可能性ある全てのリスクに対して保険を掛ける傾向があり、保険料に家庭支出の20%を充てる家庭も存在する。

ただし、核シェルターの設置は法律により義務付けられている。

民間防衛に関する連邦法では「全ての住民のために、住居から避難可能な近所に避難場所を設ける」ことと、「家屋所有者は、家屋や宿泊施設等を建築する際には、避難部屋を設け、必要な設備を設置・管理する」ことが定められている。

1963年に発効した連邦法に基づき、1960年以降に建設されたほぼ全ての家屋に避難場所が設置されている。

スイスには、個人の家、施設、病院などに約30万の核シェルターがあり、5100の公共防衛施設が存在した。

総計すると、860万人もの人々が避難できる。

これは、当時のスイスの人口比で考えると、114%もカバーできる計算になる。

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各国の核シェルター普及率と日本の現状

人口比で普及率が100%を超えているスイスでは、爆風から建物を守るために必要な土の厚さやコンクリートの厚さ、必要となるスペースの広さや天井の高さ、防爆扉や換気装置、非常用脱出口の位置などが具体的に定められている。

そのため、スイスの核シェルターは、その完成度の高さから世界中で参照されているモデルとなっている。

スウェーデンやフィンランドといった国々も、世界的に見て相対的に多くの核シェルターを設けている。

それぞれが720万と340万の核シェルターを保有し、人口の81%と70%をカバーしているという状況だが、それでもスイスの収容能力には及ばない。

他のヨーロッパ諸国のシェルターは、さらに規模が小さく、貧弱である。

例えば、オーストリアには国民の30%をカバーするシェルターが存在するだけで、換気装置は備えていない。

ドイツでは人口の僅か3%しかカバーできない。

ヨーロッパ以外の国々では、中国、韓国、シンガポール、インドなどに多数のシェルターが設置されているが、国民の50%もカバーしていない。

イスラエルでは国民の3分の2がシェルターに避難できるが、それでも敵から完全に遮断されているわけではない。

中国の圧力を受ける台湾には、人口の3倍超を収容できる10万5000カ所のシェルターがある。

我が国日本においては、核シェルター普及率はわずか0.02%である。

弾道ミサイル発射警報であるJアラートが鳴った場合、避難場所として近くの建物、又は地下に避難するようになっている。

周囲に避難できる建物又は地下施設がない場合、地面に伏せ、頭部を守るように指示されているが、核弾頭の場合、そのような施設では防ぐことはできない。

ロシアによるウクライナ侵攻や東アジアの緊張状態を受けて、日本でも近年「核シェルター」についての議論が増えてきているが、「日本人の核アレルギー」も核シェルター整備の足かせとなっている。

年間5万の核シェルター建設

スイスの核シェルターの設置は1960年代に始まった国防政策の一環だった。

それは人々が核兵器や旧ソビエト連邦の侵略を恐れていた時代で、当時の人々は「中立の立場は、我々を放射能から守ってはくれない」と口にしたものだ。

この建設ブームは1970年代に入るとピークに達し、毎年30万から40万もの新たな核シェルターが作られた。

現在ではそのブームは去り、年間5万の新設が行われている。

過去数年間、スイスは世界で最も大規模な民間防衛施設を有する国として認識されてきた。

高速道路のゾンネンベルクトンネルも、緊急時には2万人を収容できる核シェルターとしての役割を果たしていた。

1976年に開通したこのトンネルの上には、7階建ての建物が建設され、中には病院や手術室、ラジオ放送スタジオまで備えていた。

しかし、厚さ1.5メートル、重さ350トンもの扉は一般の人々には開閉できず、大災害時に何千人もの人々と同じ空間で生活する際の管理問題や心理的問題が考慮されていないという欠点が指摘され、結局2006年に解体された。

しかし、スイスの防衛意識は依然として高く、今なお新たなシェルターの建設が続けられている。

そしてその強固な防衛施設は、世界的な視点から見ても一際目立つ存在となっている。

それはスイスが、その独自性と不屈の防衛意識を持ち続けていることの証である。

次の動画では、広島原爆の3300倍の威力をもつロシアの「ツァーリ・ボンバ」について解説しよう

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