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2018年、ロシアのプーチン大統領は演説の中で「アバンガルドは隕石のように目標に到達し、ミサイル防衛システムは、もはや無力である」と述べた。
一方、アメリカ、マイケル・グリフィン国防次官は「米国は、これに対する防衛システムを持っていない」と懸念を発表した。
「これ」とは近年、ロシア、中国などが開発している「極超音速兵器」と呼ばれる新兵器のことである。
超音速とは音の速さを超える速度のことを指すが、極超音速とは音速を遥かに超えるマッハ5(秒速約 1,655m)以上で飛行する物体のことを指す。
別名 「極超音速滑空体」とも呼ばれ、英語では Hypersonic glide vehicle(ハイパーソニックグライドビークル)の頭文字をとってHGV という。
この兵器は、弾道ミサイルのように高高度から地球の重力を利用して加速するのではなく、大気圏内を滑空して突っ込んでくる。
今回は、新しい脅威といわれる「極超音速兵器」HGV の秘密と、それに対抗するため、イージス艦に搭載される次世代兵器について解説していこう。
極超音速兵器の発射シーンの動画もあるので最後まで見てね!
極超音速兵器 HGVの性能と脅威
現代の戦闘において、ミサイルは最も脅威が高く、遠距離攻撃が可能で破壊力をもつ兵器である。
艦艇や潜水艦、航空機、車両、陸上など、あらゆるプラットフォームから発射できる点においても優れており、各国は競うように射程距離の延長と速度の向上を目指している。
ミサイルは射程距離が長ければ長いほど遠距離からの攻撃が可能になるため敵の射程外から攻撃すればこちらは攻撃を受けないというメリットがある。
そして、速度が速いほどその脅威度は増し、探知されたとしても対処する間もなく相手を撃破できる。
その両方を兼ね備えたのが極超音速兵器HGVである。
HGVの特徴は、弾道ミサイルのように大気圏外から山なりの軌道を描いて落下するのではなく、大気圏内を高速で滑空しつつ旋回能力もあるため迎撃が非常に困難とされている。
HGVは非常に速いスピードのため、そのまま飛翔させれば第1宇宙速度をこえ、地球から宇宙空間に飛び出してしまう。
第1宇宙速度とは地球から宇宙に飛び出すために必要な速力で秒速7.9キロである。
しかし、HGVにつけられている小型翼のコントロールにより、大気中を滑空飛翔することができるのだ。
弾道ミサイルの場合、ブースターで大気圏外まで加速していき、弾着地点まで届く距離になるとブースターを切り離し、あとは地球の重力を利用して自由落下していく。
大気圏再突入時はマッハ 10 近くまで加速し、その後は空気抵抗を受けつつもマッハ5で弾着地点に落下する。
ブースターを切り離したあとは、地球の重力にまかせて落下するだけであることから探知された場合、イージス艦の SM-3や航空自衛隊の PAC-3ミサイルに迎撃される可能性もある。
北朝鮮の弾道ミサイル「ノドン」の航跡データでは、大気圏再突入時の高度は約 70km、マッハ9.2で、大気圏内突入後の、終末速度はマッハ 5.1 となっている。
北朝鮮から発射された場合、東京までの1,200km の距離を約10分で弾着できる速度である。
日米の迎撃試験では、イージス艦の SM-3やPAC-3は高確率でノドンと同レベルのターゲットの迎撃試験に成功している。
ところが、HGVの場合、滑空中でも動きをコントロールできるため、弾道ミサイルのように、どこに落下するか予測計算ができないのだ。
このため、HGVは極超音速、低空飛行、機動性の 3 つの特徴を兼ね備えており、現代のミサイル防衛システムを突破する新兵器とされ新たな脅威となっている。
HGV は大気圏に再突入後、高度 45km~96km をマッハ5で滑空してくる。
この速度は東京~大阪間をたった 4分で到達できるスピードである。
2018 年 11月 29日、ロシアが開発した「極超音速滑空体」である「アバンガルド」の試験発射がプーチン大統領視察の中で行われ、マッハ 20 という驚異のスピードを記録した。
連邦議会の演説では、「アバンガルドはすでに量産体制に入っている」と発表し、カラカエフ軍司令官も「アバンガルドシステムの試験は完了している」と発表した。
2027年までには、アバンガルドシステムを搭載したプラットフォームが配置される予定であると報じられている。
マッハ20 という機動性は、あらゆるミサイル防衛システムを突破し無力化する、弾道ミサイルを越える地球上で最速のスピードである。
もし、この HGVが実際に配備されたならば、西側にはこれに対抗できる兵器は保有していない。
極超音速滑空体 HGVはイージス艦で迎撃できるのか?
HGV が発射された場合、現在のミサイル防衛システムの最高峰であるイージス艦の SM-3 で迎撃できるのだろうか?
通常の弾道ミサイルはブースターが切り離されたあとに、SPY レーダーで探知した弾頭の速力や高度、角度などを元にイージスシステムが計算を開始して、最適な迎撃ポイントを算出する。
そのポイントであれば迎撃は可能なためSM-3を発射する。
SM-3は3回の分離を行い、最終的にはケネティックワーヘッドと呼ばれる弾頭部分だけが飛翔していく。
この時点で弾道ミサイルも SM-3 も弾頭部分だけになっており、言うなれば相手が撃った銃の弾に対して、こちらの銃の弾を直撃させることと同じ原理であるが、その速度は銃の比ではない
ほど高速である。
ちなみに拳銃の速度は秒速200~600mであり、弾道ミサイルは秒速6km前後にも及ぶ。
それを地上から遥か離れた宇宙空間で直撃させるということは非常に高度な技術を要することは言うまでもない。
弾道ミサイルの破壊は物理的に直撃させなければ効果は低くなる。
その理由は炸薬での破壊の場合、爆発エネルギーが拡散してしまい確実に破壊することができないからだ。
SM-3の弾頭部分のケネティックワーヘッドを直撃させたときのエネルギーはトラック1000台分の衝突に値する。
ミサイル防衛を開発した経緯は主にイランや北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に備えるためであり、日米のイージス艦はハワイ沖のミサイル試験海域において、80%以上の確率で迎撃に成功している。
ところが、HGVは大気圏内を飛翔するため大気圏外での迎撃を前提として設計されたSM-3 では迎撃することができないのだ。
ただ、現在開発中の次世代ミサイル「SM-6」であれば、HGV が目標に突入する直前の終末段階での迎撃が可能であるとされている。
SM-6は今後イージス艦に搭載され、弾道ミサイル迎撃、対空攻撃、対艦攻撃の3つのミッションを行える高性能ミサイルである。
また、もう1つの方法としてGPI(Glide Phase Interceptor)と呼ばれる迎撃システムは、発射したイージス艦とは別の艦艇や衛星データにより誘導を行うミサイルで迎撃が可能といわれている。
ただ、この2つの迎撃システムはまだ開発段階で実戦配備には至っていない。
アメリカの空母打撃群はミサイル攻撃から空母を守るために駆逐艦や巡洋艦の全てをイージス艦としているが、中国の飽和攻撃を受けた場合、ミサイルの絶対数が足りないとういう問題を危
惧し「アーセナルシップ」というものが構想された。
「アーセナルシップ」とは、多数の VLSを備え、大量のミサイルを搭載した「兵器庫艦」である。レーダーや対潜兵器など無駄な装備は全て省き、他の艦艇から命令に基づいてミサイルを発射するだけのプラットフォームである。
21世紀の戦艦とまでいわれた「アーセナルシップ」であったが、運用が困難とされ、結果的には構想のみで実現にはいたらなかった。
つまり、現時点においては HGVを迎撃できるシステムは存在しないということになる。
日本のレーダーサイトで探知可能か?
海面スレスレを飛翔するシースキマーミサイルは艦艇のレーダー探知を遅らせることができる。
なぜなら、地球は丸いため、送信されたレーダーはそのまま直進し、水平線より奥の地球の影から近接する目標は探知することができない。
HGVはマッハ5を超える速度を出せるミサイルであるが、海上でマッハ 3.5 を超える速度を出すと、熱により材質や形状が変化してしまう。
HGV の滑空フェイズでは、高度 45km~96kmを飛翔することから比較的遠距離からレーダー探知が可能と予想できる。
ちなみに、イージス艦のSPY レーダーや車力に配備されている米軍のTPY-2の探知能力は約 1,000km といわれている。
また、航空自衛隊のレーダーサイトに設置されている通称ガメラレーダーといわれる FPS-5は約1,200km、早期警戒機E-767は上空から800km、E-2C は約560kmの探知能力がある。
このように、北朝鮮の弾道ミサイルに対して備えてきた日本は、HGVを探知できるだけの十分なレーダーを装備しているといえる。あとは、迎撃可能なミサイルをあわせることでHGV に対処
できるようになる。
極超音速滑空体まとめ
北朝鮮の弾道ミサイルの脅威から我が国を守るために、陸上施設の「イージスアショア」が山口と秋田に予定されていたが、住民説明会において防衛省の説明に不備があったことから住民との折り合いが付かず中止に追い込まれた。
代替案として、洋上のプラットフォーム、新型イージス建造、商船を改造した発射システムなどが取り上げられたが、結局は新型イージス建造となるようである。
なぜなら、他の2つの場合、攻撃された場合に対処ができないというのが大きな理由であろう。
また、北朝鮮だけではなく中国を考慮し、沖縄周辺に展開する米空母打撃群を防護できるように、移動可能なイージス艦を選択した可能性も考えられる。
中国は空母キラーと呼ばれる対艦弾道ミサイル「DF-21D」という兵器も保有しており、大気圏外から空母に向かって突入してくるミサイルも開発している。
すでに実験は成功していると言われており、日米は次世代兵器に対しても対抗手段も早急に考えなければならない。
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