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災害時に陸上自衛隊が特殊な車両で被災者の食事を提供したり、入浴支援をしているシーンを報道などで目にすることがある。
これらの特殊車両は、いったいどのような仕組みになっているのだろうか?
600人分の食事を提供できる「野外炊具1号」や、1200人分の入浴支援が可能な「野外入浴セット2型」、そしてわずか5分で橋を架けられる架橋装備は、災害派遣時や国際支援活動において大きな力となる。
今回は、多くの被災者を影で支えてきた車輛、そして作戦遂行には欠かせない車両の機能や運用方法について解説していこう。
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600人分の食事を提供する「野外炊具1号」
野外炊具1号は、陸上自衛隊が装備している野戦用調理器具である。
炊具一式は、トレーラーに搭載され、小型車両によってけん引されて移動できるようになっている。
一台の価格は約90万から100万円である。
釜は全部で6つ装備されており、屋外において600人分の米を焚き上げることが可能で、災害派遣時には最大800個のおにぎりを支給したこともある。
また調理器具や、かまども搭載されており惣菜の調理も可能で、主食と副食を合わせて200人分を作ることができる。
また、味噌汁のみの場合1500人分の調理をすることが可能となっている。
主食・副食・汁類の同時調理を行う場合には2釜で炊飯、2釜で副食の調理、1釜で汁物の調理、残りの1釜が予備または洗い物用となっている。
野外炊具1号には、回転式カッターが搭載されており、それを使用することにより野菜においては、輪切り、乱切り、小口切り、ぶつ切り、千切り、おろしなど各種の裁断調理が可能となっている。
またカッターの横にある円筒の内部が皮むき器になっており、エンジンの動力により回転し、ジャガイモなどの野菜類の皮むきができるようになっている。
ただし、この皮むき実施時や整備を行う際、多量の水を必要とするために、近くに水源や水道が確保されている場所で使用する必要があるため設置場所は限定されている。
揚げ物の調理については、1釜で5名~10名分の調理が可能で最大約200名分まで対応することができる。
焼き物の調理については、通常の釜では対応ができず鉄板が必要となり、バーナーには灯油バーナーが使用されているため、灯油の臭いが食材に移ることもあり原則として調理しないようになっている。
2004年に起きた新潟中越地震時では、全国の陸上自衛隊の駐屯地から総計100台以上の野外炊具1号が集結し、被災した人々たちに対する炊き出しを行った。
陸上自衛隊には、この他にも災害時などに入浴支援を行う特殊車両がある。
1200人分の入浴支援を行う「野外入浴セット2型」
野外入浴セット2型は、陸上自衛隊が保有している屋外用の入浴設備である。
装備としては業務用天幕、野外浴槽、シャワースタンド、ボイラー、揚水ポンプ、発電機、10000リットルの貯水タンク、その他装備品からなる。
総出湯量は1時間に約5,4トン、湯沸かし時間は45分、入浴可能人員は1日約1200人、1回の収容人数は約30人となっている。
これらの装備は73式大型トラックにて、けん引し目的地において展開し設置することになっている。
設置は6人で実施され、完了までの時間は約2時間ほどである。
この装備が導入されたきっかけは、過去に起きた災害における派遣先において、民間のボランティアによる提供を受けた簡易風呂が、隊員達に好評であったことが挙げられる。
阪神大震災や東日本大震災それに熊本地震など各災害派遣において、この入浴セットは被災者にあった方々の支援に威力を発揮した。
災害派遣以外にもPKOなどの国際支援活動において、この入浴セットは使用され、国際貢献にも役立っている。
この入浴セットの入り口には、各隊が独自で、駐屯地の所在地に関するユーモア溢れる名前の暖簾が掲げることが多く、災害で心を痛めている被災者の癒しの場となっている。
浴槽内のお湯は、フィルター付きのポンプで循環されるようになっているため、汚れることなく清潔な状態を保てるようになっている。
またお湯の温度を調節することも可能であり、季節に応じた温度設定が可能だ。
テントの中は脱衣所と浴槽の2つの部屋に仕切られており、蛇口やシャワーも設置されている。
災害派遣時には棚や脱衣カゴもなどが用意され、女性の脱衣所では化粧台やドライヤーまで設置されることもある。
また冬場用としてヒーターを、夏場用として扇風機を設置して状況に応じた対応を行っている。
浴槽は、ある程度の深さがあるため、浴槽に入りやすいように踏み台を設置するといった、きめ細やかな対応がされている。
陸上自衛隊では、戦時や災害で橋が破壊された場合に備えて、迅速に仮設の橋を作る特殊車両もある。
わずか5分で橋をかける架橋装備
戦場においては、敵軍の侵攻を遅らせることや、補給物資の運搬を妨害することを目的に川に架かる橋を破壊することがある。
橋を破壊されてしまえば復旧するまで移動ができなくなる。
つまり川を挟むような状況においては、防衛側は橋を破壊し敵の侵攻を食い止めるのに対し、攻撃側は一刻も早く橋を修復して攻撃を続ける必要がでてくるわけである。
しかし攻撃側としては復旧を待っている余裕はない。
こういった場合に登場するのが架橋装備だ。
陸上自衛隊の施設科部隊には架橋装備が配備されており、戦車でも通過できる橋を迅速に展開することが可能だ。
91式戦車橋は、陸上自衛隊が装備している戦車橋で1両あたり約5億円という価格だ。
戦車橋とは、戦車の車体に橋梁(きょうりょう)を搭載し、破壊された橋のかわりに橋梁を設置する能力を持つ戦車の事である。
橋梁は、基本的には、その国の主力戦車が通行できる設計になっている。
架橋方式には、さまざまな種類があり橋梁機材を橋に架け対岸へ押し出すスライド式、2つ折にたたまれている架橋を広げ対岸へ渡すシザース式、切り離され前後のパーツを重ねて、合体させるカンチレバー式、さらには車体そのものを橋梁とする方式などがある。
陸上自衛隊の91式戦車橋は、折りたたんだ橋梁を延ばして、長さ20mの橋を架ける能力を持っており90式戦車や74式戦車などを通過させることが可能だ。
車体は74式戦車のものが流用されており、74式戦車と同様に可変油気圧式懸架装置による姿勢制御能力を持っている。
車体上部には油圧作動式の戦車橋展開/収容装置及び支持架台を持っており、後部の支持架台上部には無線アンテナと4連式発煙弾発射機が装備されている。
戦車橋本体は前後に分割され、上下に重ねて搭載されており、戦車橋の全長は20m、有効長は約18mである。
架橋作業に要する時間は約5分で、収容も5分程度の時間で撤収が可能である。
なお、一連の作業は全て車内でも操作可能である。
自衛隊の基地と駐屯地の違い
現在日本には、 陸海空三つの自衛隊が存在している。
その中において、海上自衛隊と航空自衛隊は、部隊が所在している場所を「基地」と呼ぶが、陸上自衛隊の場合は「駐屯地」という名称で呼ばれている。
これは、海上自衛隊は軍港を、航空自衛隊は飛行場やレーダーサイトなどを、それぞれ拠点として行動するのに対し、陸上自衛隊は、有事の際には、絶えず部隊を移動させて行動するため、駐屯地は一時的に利用する施設という意味合いから、このような呼び名となっている。
このため陸上自衛隊は、部隊が移動しても、作戦が継続できるよう様々な特殊車両が装備されている。
自衛隊は、普段は国民との接触は少ないため、その全貌は、あまりよく知られていないというのが現状だ。
自衛隊の基地や駐屯地は、言わば一つの町と言ってもいいだろう。
ほとんどの業務を自分達だけで行うことができる。
自衛隊の食堂で食事を作っているのは、ほとんどが自衛隊員であることを御存じだろうか?
それ以外にも、民間で言うところの、病院、警備、警察、消防など、各種業務も、自衛官自身が各職種に分かれて、それぞれ行っているのである。
現在、日本全国の基地や駐屯地においては、毎年、年に1回、基地内を一般開放しての各種イベントが行われている。
そこでは観閲行進や装備品の展示、それに音楽隊の演奏、各種車両の体験搭乗など様々な行事が行われている。
是非、自分の目で見て、見識を深めてみてはどうだろうか?
「国民が国防に興味を持つ」言ってみれば、これだけでも、小さな抑止力が発揮されているのである。
国民が国防に関心を持つようになり、それが世論となると政治家も、それを無視できなくなり、結果として抑止力が向上するのである。
日本を守っているのは自衛隊だけではない。
我々国民も同じ役目を背負っているのである。
次の動画では、陸上自衛隊が誇る戦闘車両について解説しよう。
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