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海上自衛隊の最新鋭護衛艦であるFFM の3番艦が6月22日に長崎県三菱重工業造船所で進水した。
3番艦の艦名は「のしろ」と命名された。
現在、FFMは1番艦「もがみ」、2番艦「くまの」、そして「のしろ」の合計3隻が就役に向けて艤装中である。
FFMとはフリゲート艦を意味しており、船体が従来の護衛艦よりもコンパクト化され、システムの自動化により乗員数も半分の90名で運用できるようになっている。
そして、従来の護衛艦の任務に加え、無人機による「機雷除去能力」も付加されており、掃海艇の任務も行えるようになったのが特徴である。
また、護衛艦では初となる乗員のクルー制が採用されたことでも注目を浴びている。
FFM が省人化を図り、クルー制を採用した理由は海上自衛隊が抱える深刻な「人材不足」という問題も影響している。
今回はFFM「のしろ」の最新レーダーOPY-2の機能とエンジンの特徴、また海自が抱える「人員確保」の問題について解説していこう。
FFM3番艦「のしろ」の特徴や速力30ノットの秘密について動画で解説してるよ!
FFM「のしろ」の特徴
現在3番艦まで建造されているFFMであるが、1、3番艦の「もがみ」「のしろ」が三菱造船所、2番艦の「くまの」が玉野艦船工場で建造された。
FFM のスペックはこのようになっている。
・全長 132.5m 幅16m
・基準排水量3,900トン
・乗員90名
・機関 MT-30ガスタービン×1、STCディーゼル主機×2
・最大速力 30kt (約 55km)
・水上無人機、水中無人機、無人機雷排除システム
・価格約480億円
全長は132mで排水量も3,900トンと通常のDD型の全長150m、5,000トン前後と比較するとかなりコンパクトになっている。
1隻の価格は約480億円で、DD型護衛艦が約700億円、イージス艦が約 1600億円であるのと比較すると低価格である。
しかし、従来の護衛艦やイージス艦にはない「機雷戦能力」を有しているのが最大の特徴であり、掃海艇と護衛艦が合体したようにイメージである。
防衛省は護衛艦の数を54 隻まで増やす計画を立てており、FFMを10隻以上建造する予定である。
将来的には FFM だけで 22 隻体制を確立し護衛艦の半分がフリゲート艦となる構想だ。
では、FFM「のしろ」の装備について解説していこう。
すでにほかの動画で「もがみ」や「くまの」について詳しく解説しているので、今回は「のしろ」に装備されている新型レーダー「OPY-2」の性能にフォーカスしていこう。
FFM「のしろ」の新型レーダーOPY-2
FFM「のしろ」に採用された OPY-2 であるが、これは国産の三菱電機製「多機能レーダー」である。
「新型護衛艦用レーダーシステムの研究」に基づき開発されたOPY-2 は「あきづき型」や「ひゅうが型」が装備しているフェーズドアレイレーダーFCS-3 とは別系統のレーダーとして開発さ
れた。
従来の護衛艦が装備していた回転式のレーダーは捜索、探知、追尾といった機能のみであり、水上用と対空用では異なるレーダーを使用していた。
しかし FCS-3は1つのレーダーで水上、対空の探知に加え、主砲やミサイルの管制もでき、さらにイージス艦の SPY レーダーのように回転せず、全方向にビームを照射することで隙のない捜索を行えるようになった。
そのFCS3からさらに進化したのがOPY-2である。
OPY-2 は FCS-3の機能に加え、電子戦のES 機能が追加されている。ESとは「エレクトロニックサポート」の略で、敵が送信する電波をキャッチして、その電波の数値を分析することで、敵の脅威が判明するというものだ。
つまり、このような手順を行う。
①敵のレーダー波を受信して数値を分析
②分析結果からレーダーの種類を判別
③そのレーダーを搭載しているプラットフォーム(航空機、艦艇、潜水艦、ミサイル)を識別
④脅威にあわせて作戦を立てる。
なお、電子戦機器についてはすべての護衛艦に搭載されているが、レーダーとES アンテナが統一されているのはFFMのOPY-2 が初となる。
このように OPY-2は1つのレーダーで護衛艦が必要なすべての機能を備えたマルチファンクションレーダーなのだ。
しかし、海自関係者からはすべての機能を1つのアンテナに兼ねることはリスクでもあると指摘されている。
つまり1箇所が破壊された場合、すべての機能が失われることを危惧しているのだろう。
では、次に FFMのエンジン性能がどのようになっているのか見ていこう。
FFM「のしろ」の機関と速力
FFM「のしろ」の速力であるが、結果からいうと最大30ノット(約55km)を出すことができる。
「のしろ」の主要機関部分にはロールスロイス製のMT-30 ガスタービンエンジン1機とSTCディーゼルエンジン 2 機を搭載しており、低速時は燃費効率の良いのディーゼルを使用し、高速
時は両方を使用する。
ガスタービンは小型、軽量のわりには大出力のためには魅力的な機関であるが、その分燃費効率が悪い。
そのためディーゼルを組み合わせることで効率のよい走りができるというわけだ。
従来の護衛艦でもガスタービンとディーゼルを切り替えて使用する艦艇はあったが、2つを同時運用できるのはFFM が始めてとなる。
FFMに限ったことではないが、海自の護衛艦の最大速力は30ノット以上が求められている。
通常の作戦では30ノットを出すことは楽急時以外にほとんどない。
そこまで速力を出せば、水の抵抗が大きくなり、機関効率も悪くなり燃費に影響してくる。
30ノットという高速が能力的に求められているのは運用上の秘密とされ明らかにされていないが、おそらく、これは米原子力空母との共同作戦を見越してだろう。
これを明言すれば「憲法違反だ!」と騒ぐ者が出てくる可能性もあるため明らかにしていないのだろう。
空母の動力源は原子力のためウラン であり、たった1gで石炭3トン、石油2000リットルに値する。
そのため、空母は燃費を気にすることなく常に高速で走ることができるのだ。
空母についていくためにも30ノットが出せなければ、足でまといとなってしまうため、護衛艦にはそれなりの速力が必要となってくる。
では、ここで護衛艦の出力を比較してみよう。
DDGこんごう型、あたご型イージス艦
LM2500ガスタービン×4基
出力100,000馬力
DDGまや型イージス艦
LM2500ガスタービン×2基、推進用モーター
出力69,000馬力
DDHいずも型
ガスタービン×4基
出力112,000万馬力
FFM「もがみ型」ガスタービン×1基、ディーゼル2基
出力70,000馬力
さすがに船体が大きいだけに「いずも」の馬力は海自で最大である。
最新鋭イージス艦のまや型に関しては FFM よりも排水量が倍近い 8,200トンもある割には出力が69,000馬力となっている。
その理由は、ガスタービンの数を従来のイージス艦の半分にして、電動モーターにより推進力を得る仕組みであり、車に例えるとハイブリッドエンジンのようなシステムとなっている。
では、次に護衛艦初となる乗員のクルー制度とはどのようなメリット、デメリットがあるのだろうか?
FFM「のしろ」のクルー制度による運用
FFM 護衛艦では初となる乗員のクルー制度が採用される。
クルー制とは第1クルー、第2クルーといったようにグループごとで艦を運用する仕組みである。
第1クルーが FFMに乗り込み、出港して任務に従事している間、第 2 クルーは陸上で休息や事務作業を行い、入港後はクルーを入れ替えてすぐに出港することで艦の稼働率を上げるシステムである。
護衛艦では FFMが初となるが、海自では、2017年から洋上期間の長い音響測定艦で試験的に導入されている。
また、米海軍や保安庁では、すでにクルー制が採用されている。
現在の計画では3隻の FFMに対して4クルーが編成される予定である。
FFMは90名という少ない乗員数であるからこそクルー制が可能なのであって、イージス艦など300名近い乗員数ではそう簡単にいかないだろう。
また、同じ型の護衛艦であっても、艦内の艤装品の位置がそれぞれ違っているため、クルーが交代したとき、業務で必要なモノが、いつもあるべきところにない状態に戸惑い支障が出る。
FFMではこれを解消するために、艤装品の位置を標準化しており、他のFFM に乗艦してもいつもと同じように業務ができるようになっている。
ところで、クルー制の導入は、FFMだけでなく海外任務に従事する護衛艦にも採用されるべきだと考える。
たとえば、ソマリア海賊対処では1隻の護衛艦が約6ヶ月交代で任務に従事している。
しかし、6ヶ月のうち、日本からアデン湾までの道のりに約1ヶ月を消費する。
つまり往復で2ヶ月もの航海をすることとなるのだ。
そのため、実質アデン湾にて任務に従事する期間は4ヶ月ということになる。
クルー制にすることで乗員を空自の輸送機などで現地に向かわせ、現場で交代すれば往復にかかる2ヶ月もの航海がなくなるため、4ヶ月交代で入れ替わることができ乗員への
負担も軽くなる。
ただ、乗員の負担は減ったとしても、護衛艦の整備も必要になるため、現地で稼動しっぱなしというわけにはいかないのが問題となってくるだろう。
海上自衛隊の人材不足の問題
FFMにクルー制が採用された理由は海自の深刻な人材不足も影響しているのではないだろうか?
現場を支える自衛官の年間採用者数は計画の6割にとどまることもある。その理由は
・長期の航海で一般社会から離れる不安。
・電波が入らずスマホが使えない。
・狭い艦内でプライベートな空間がない。
・出港中は昼も夜も関係なく訓練がある。
など、現代の若者の気質にはあっていないのが原因とされている。
また、艦艇勤務は自己都合による退職者も増えており、商船や海保への再就職など、ここ10年間で4割も増加し、年間約 5,000人が退職している。
つまり新規採用者の3分の1が中途退職している割合である。
そのため、海自は採用年齢を26歳から32歳に引き上げたり、女性隊員の割合を増やしたりと解決策を探っている。
また少子高齢化の他、毎年、各港に入港して行われる護衛艦の広報活動もコロナ禍により実施できないことがさらに「人材不足」に拍車をかけている。
どんなに護衛艦の数を増やしても、それを使いこなす優秀な隊員が不足していれば戦力とはいえない。
フネの数を減らして、その分を人件費など給料に充てることで、金銭面だけでも艦艇乗りの魅力化を検討しなければ、海自の隊員たちはどんどん減っていくこととなる。
今の海上自衛隊の最大の敵は中国や北朝鮮ではなく、人材不足なのかもしれない。
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