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約半世紀にわたって日本の空を守ってきた航空自衛隊、第301 (さんまるいち) 飛行隊のF-4(エフヨン)ファントムⅡがついに退役を迎える。
F-4の初号機は、1971年1月14日、アメリカのセントルイスで初飛行を行い、同年7月25日にアメリカ空軍のパイロットにより太平洋を横断し、日本の小牧基地に到着した。
その日から半世紀が経ち、ラストフライトとなったのは、世界で最後に製造された 440号機(愛称ししまる)であった。
ししまるは世界のF-4、5195機の中で一番の末っ子だ。
航空自衛隊では、F-15J が導入されるまで F-4EJ が主力戦闘機となり、日本の領空に近づく諸外国の航空機や国籍不明機への警戒など日本の防空任務を任されることとなった。
今回は、F-4ファントムIIFの活躍やソビエトとの高度記録争い、後継機となるF-35との比較につい
て解説していこう。
F-4ファントムⅡの歴史や活躍を動画で解説したので見てね!
F-4ファントムII誕生
1960年から運用が開始されたF-4 であるが、現在までに世界で 5195 機が生産されており、音速を超える超音速戦闘機で5000機以上生産された機体は、MIG(ミグ) -19、21、23 のほか F-4の4機種のみとなる。
F-4は第3世代戦闘機とよばれ、現在主流となっている F-2 や F-15が第4世代、そしてF-4の後継機となるF-35 が第5世代戦闘機となる。
F-4の完成当時、それまでの超音速戦闘機にはなかった太い胴体と大きな翼から、関係者の間では「みにくいアヒルの子」と揶揄され、「幻影や亡霊」という意味のファントムという愛称が付けられた。
1966年(昭和41年)には、F-4Eを日本向けに改修したF-4EJが選定され、アメリカ政府に18億円を支払うことにより、三菱重工でライセンス生産されるようになった。
世界でF-4のライセンス生産が許可された国は日本だけである。
1981年(昭和56年)の生産終了までに日本が調達したF-4の数は154機となる。
1986年(昭和61年)頃から航空自衛隊の主力戦闘機は性能や数の上でもF-15に変わりつつあったが、延命と能力向上のための改修を受けた90機が F-4EJ改となった。
また15機が偵察機用に改修され、RF-4EJ となり、三沢基地にて支援戦闘機とし活躍した。
F-4Eのスペックはこのようになっている。
・全長 19.2m 幅11.71m 全高 5.02m
・乗員2名
・最大速力M2.23 (2370km)
・戦闘行動半径680km
・航続距離 3184km
・兵装20mm バルカン砲639発
・空対空ミサイル、空対地ミサイル、誘導爆弾
第4世代戦闘機のF-15やF-2 に比べると、電子装備や通信ネットワークも決して充実しているとはいえないF-4 であるが、航続距離は現代の戦闘機と比較しても非常に優れている。
燃費消費の激しい大型の双発エンジンであったものの、それを補う補助燃料タンクが装備されていた。
胴体内に6個、主翼内に2個のタンクに加え、さらに増槽 (補助燃料タンク)が装備でき合計12460Lもの燃料を搭載でき、空中給油なしで航続距離3184km を飛行できる。
また、搭乗員は2名となっており前席はパイロット、後席にはレーダー、航法、迎撃のための士官が乗る。
F-4は現在の戦闘機とは違い、敵機をターゲッティングする際は HUDではなく、光学標準器を使用する。
コックピット周りの計器はアナログメーターがほとんどで、現在の戦闘機と比較すると、歴史を感じさせる作りである。
後席の前方視界はほとんどなく、各センサー類を頼りに、現在位置や戦闘情報など通信機器を通してパイロットに報告する。
後席にあるジョイスティックは操縦桿ではなく、レーダー操作用となっている。
ソビエトとの高度記録争い
F-4が初飛行した 1950年代は、アメリカとソビエトの間で最新鋭の戦闘機を使った高度世界記録への争いが行われていた。
1959年7月14日、ソビエトはSu-15の原型である実験機で最高高度28852mを達成した。
これに対抗したアメリカは、トップフライト計画と称してエドワーズ空軍基地を離陸したF-4の原型機が世界最高高度である、30040mまで達することに成功した。
さらに、アメリカはF-4 の原型機である3機で、カリフォルニアからニューヨークまでの最短横断記録に挑戦した。
長距離のため、途中で空中給油を受けつつ飛行した3機のうち、3番機が最短2時間47分という記録を達成した。
F-4の低空目標に対する弱点が浮き彫りに!
1976年9月6日、ソ連防空軍所属のヴィクトル・ベレンコ防空軍中尉が操縦するMiG-25戦闘機が演習空域に向かう途中で突如コースを外れ急激に飛行高度を下げた。
午後1時10分ごろ、航空自衛隊の地上に設置されたレーダーが、ソビエト連邦の沿海州方面から日本に向けて南下してくる飛行物体を捉えた。
地上のレーダーサイトのレーダーは航空機の超低空飛行には対応できず、領空侵犯の恐れがあるとして、航空自衛隊千歳基地のF-4EJが午後1時20分頃にスクランブル発進。
しかし、F-4EJのレーダーは地表面におけるレーダー波の反射による擾乱に弱く、低空目標を探す能力(ルックダウン能力)が低くレーダーロストしてしまう。
そのためMiG-25は、航空自衛隊から発見されないまま北海道の函館空港に接近し上空を3回旋回した後、午後1時50分頃に滑走路に強行着陸した。
この事件は、日本中が大きな衝撃に包まれたとともに、F-4の低空目標の探知能力の弱点が浮き彫りとなったのだ。
第3世代「F-4」と第5世代「F-35」の比較
航空自衛隊では、F-4が退役した後は、最新鋭ステルス戦闘機 F-35ライトニングが後継機となる。
では、第3世代のF-4と、これまでの戦闘機から格段に進化したシステムを持った第5世代のF-35ではスペックにどのくらいの差があるのかを比較していこう。
まず外観であるが、F-35はステルス性能を重視しているため、機体の形状が特殊である。
反射面積を少なくする機体形状や特殊塗装を施すことで敵のレーダーに探知されにくいステルス機のF-35 のレーダー反射面積は0.005㎡ で、F-4は6㎡とされている。
ちなみに世界最強の戦闘機といわれる F-22 のレーダー反射面積は驚くべきことに 0,0001㎡ で空を飛ぶ虫よりも小さい数値だ。
次に速力と航続距離であるが、F-4の最大速力はM2.23、航続距離は最大3184km、一方 F-35の最大速力はマッハ1.6 航続距離は2200kmとなっている。
エンジンはF-4が双発でF-35が単発である。
速力だけ見るとF-35の方が劣っているようにみえるが、戦闘機の速力計測は燃料タンクやミサイルを全て外した状態での計測となるため、実際は装備による空気抵抗が大きくなりカタログ値よりも遅くなる。
一方、F-35 はステルス性を保っため、ミサイルなどは全てウェポンベイと呼ばれる胴体内に納められており、実際の戦闘でも空気抵抗は変わらない。
さらに F-35 はスーパークルーズ(超音速巡航)という能力があり、従来の戦闘機のように「アフターバーナー」を使用せずとも、音速を超える速度を出し続けることができる。
アフターバーナーは一時的に燃料を大量消費してエンジン出力を1.5倍以上にするため、音速を超えた速度を出せるが、その代償として燃料消費が通常の5倍近くなるという致命的な欠点がある。
そのため、通常の戦闘機は戦闘状態においても数秒程度しか使用できないが、F-35 は巡航で音速を超えることが可能となっている。
コックピットであるが、F-4 はアナログ計器が目立ち、操縦もパイロットの高度なスキルが必要である。
常人離れした運動神経と極度の集中力を備えていなければいけない。
そのため、パイロットを育てるための戦闘機といえば最高の機体なのかもしれない。
一方、F-35は最新のシステムが搭載され、戦闘機で初めて採用されたタッチパネルやデジタル表示が多く、F-4と比較するとパイロットが自分で操縦しているという感覚が少ない。
なぜなら、膨大な量の情報を最新のシステムが処理して、操縦をリポートすることでパイロットの負担を軽減するからである。
F-22よりも10 年あとに作られたため、現在の戦闘機の中では最高レベルのシステムを搭載している。
攻撃能力であるが、F-35 は単座席のため、一人でも複数の役割を果たさなければならず、レーダーが探知した目標をわずか10秒で23目標の識別可能なシステムを搭載している。
F-4の退役 まとめ
F-4ファントムIIは半世紀近い間、日本の空を守ってきた。
航空自衛隊の戦闘機の中でも最も長い期間、運用された戦闘機でもある。
301(さんまるいち)飛行隊は F-4ファントムIIを初めて運用する飛行隊として、1973年に百里基地で編成された。
それから50年近くが経ち、2020年12月15日をもってスクランブル発進を担うF-4の運用を全て終え、三沢基地に移転した。
航空自衛隊が F-4ファントムIIで培ってきたものは計りしれないであろう。
今後は第5世代であるステルス戦闘機 F-35を運用する飛行隊として改編される。
F-4からF-35A に防空任務のバトンが渡り、大きな時代の終わりを感じる。
F-4ファントムIIのこれまでの活躍と日本の防衛に感謝するとともに、F-35のこれからの活躍にも期待したい。
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