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潜水艦は海中を自由に移動でき、敵艦艇の捜索が不可能な深度まで潜ることもできる。
海面しか移動できない水上艦艇と違い潜水艦は「潜る」という3次元の動きをすることが可能である。
ただし、スクリューの力だけで潜航したり浮上したりしているわけではない。
スクリューは主に潜水艦を進ませるための推進装置である。
では、浮上と潜航はいったいどのように行われているのだろうか?
今回は、潜水艦の深度変換の仕組みや、浮上航行から海底に着地するまでの4つの状態について、また強烈な水圧に耐える船体構造について解説してこう。
この記事に書かれている内容は
潜水艦の潜航浮上の仕組みと状態
作戦行動中は、ほとんど海中に潜んでいる潜水艦であるが、状況によっては浮上航行をしたりシュノーケルや潜望鏡を出したりする必要がある。
潜水艦は航空機が空を飛ぶように海の中を3次元で移動することができる。
潜水艦の構造は、高い水圧に耐えるための耐圧区画を除くと、ほとんどがタンクで構成されている。
通称「メインバラストタンク」と呼ばれ、その中に海水を注入したり排出したりすることで潜航、 浮上を行う仕組みとなっている。
バラストタンクは、 燃料や真水 潤滑油など、数あるタンクの中でも最も数が多く、容積が大きいタンクである。
浮上するときはバラストタンク内に高圧空気を注入することで、 浮き袋のような役割を果たし、数千トンの船体を浮き上がらせることができるのだ。
逆に潜航するときはバラストタンク内に海水を注入することで、 タンク内の空気を減らし、浮力を失わせることで潜ることができる。
注入する海水量により深度を調整することが可能となるのだ。
タンク内の浮力と船体の重さが吊り合った場合は、その場で停止することもできる。
また、高圧空気をバラストタンク内に一気に注入することで急浮上することもできる。
このようにして潜水艦は深度変換を行っており、深度により4つの状態を作り出すことができる。
まず、もっとも深度が浅い状態であるが、船体上部が海面に出てセイル部分が完全に浮上した状態「浸洗(しんせん)状態」という。
港から出港して内海航行をするときや水深の浅い海域では、浸洗状態で航行する。
次に船体は出ていないが、潜望鏡を伸ばせば海面から周囲の状況を確認できる深度を「露頂(ろちょう)状態」という。
海面から出ているのは潜望鏡やシュノーケルだけという状態であるため浸洗状態よりも発見される確率は低くなる。
司令部との通信やディーゼルエンジンを回して、バッテリーを充電するときのほか、潜望鏡で周囲を確認するようなときに露頂状態となるが、艦艇や航空機にレーダ一探知される可能性があるので、長時間、露頂状態で走ることはない。
ニュースなどでは露頂状態のことを浮上と誤って報道していることもある。
露頂状態からさらに潜航すると、船体が完全に海中に入り潜望鏡を伸ばしても海面上に出ない状態になる。
これが「全没状態」である。
通常、潜水艦は全没状態で深度変換をしながら作戦行動を行っている。
全没状態からさらに深度を下げていくと海底に着地することになるが、 これを 「沈座状態」 という。
沈座は潜水艦の進装置を停止して海底の岩のようにじっと停止している状態である。
ソーナー音による探知も周りの海底残響で困難になることから探知されにくくなる。
この状態では、推進装置を停止しているため、バッテリーの消耗も少なくなり、敵を待ち伏せするという作戦も可能になる。
ただし、 沈座が可能な潜水艦はディーゼル潜水艦のみである。
なぜなら原子力潜水艦は原子炉や推進装置を冷却するために、大量の海水を吸い上げる必要があり、 船体下にある吸水口がふさがれてしまうため沈座はできない。
このように潜水艦はメインバラストタンクを使って、作戦に応じて深度を変えることができるのである。
ただし、深く潜るほど水圧が高くなっていくのでどこまでも制限なく潜れるわけではない。
その強烈な水圧に耐えるため潜水艦は特殊な構造となっている。
深海の水圧に耐える潜水艦の構造
潜水艦の重要な性能に静粛性が挙げられるが、もうひとつが潜航深度である。
どれだけ深く潜れるか、つまりどれだけの水圧に耐えることができ、水密を保つことができるのかにかかっている。
各国ともに潜水艦の最大深度はもっとも秘匿性が高く、他国に絶対に知られてはいけないデータであ
る。
海上自衛隊の潜水艦は500m以上潜れるとされているが、実際どこまで潜航できるかは潜水艦乗りでなければ分からない。
海上自衛隊の潜水艦救難艦に乗り込む飽和潜水士は水深 450m での救助作業が行えるように訓練を受けているので、最低でもその深度までは潜れることが推測できる。
完全に潜った状態の全没状態や沈座状態では、非常に高い水圧が潜水艦の隔壁にかかっている。
水圧は10m深くなるごとに1気圧増える、つまり約1㎏ずつ大きくなる。
深度500m になると1平方cmにかかる圧力は約51.7kgという強烈な水圧がかかることになる。
潜水艦は一見のっぺりとした見た目であるが、実際は潜望鏡やシュノーケルを出す部分や乗員が乗り込むハッチ、 魚雷発射口や非常脱出ロなど、ただの金属の塊ではなく、 さまざまな作動部分や貫通部分で構成されている。
そのような装置や継ぎ目にも容赦なく高い水圧がかかってくるため、少しでも耐圧や水密がくずれた途端、浸水や押しつぶされる恐れがある。
また、通常の潜航状態だけでなく敵の魚雷攻撃を受けた場合に備えて、衝撃圧力や非常時の浸水にも耐えられる構造でなければならない。
そのため、建造時に使用される素材や構造、溶接方法、艤装などは、どの国も例外なく情報を秘匿している。
より深く潜るために重要な部分が船殻(せんかく)と呼ばれるもので、直径や厚さ、フレームの間隔や素材をバランスよく組み合わせなければ水圧に耐えることはできない。
海上自衛隊の潜水艦にはニッケル・クロムモリブデン鋼などが使用されている。
一方、ロシアは強度が高いチタン合金などが使用され、潜航深度も700m以上といわれている。
深海における特殊任務も行う潜水艦を保有しているほか、パルタス型潜水艦においては、潜航深度1000mに達する能力を有しているとされる。
潜水艦の建造には、非常に高度なノウハウを必要とすることから、自国で潜水艦を一から建造できる国は数少ない。
日本もその中の1つであり、世界からの評価も高い。
世界最高レベルの潜水艦
日本の潜水艦建造技術や溶接の品質、寸法の精度は世界最高レベルといわれており、海上自衛隊の潜水艦が潜航中に制御不能になったり、水圧により圧壊したりするような事故は一度も起きていない。
一方、海外では、インドネシアやロシアの潜水艦がトラブルにより海底から浮上できなくなり乗員全員が死亡するという痛ましい事故が起きている。
潜水艦に求められる能力や性能はその国の事情によって異なっている。
複雑な船体構造にもかかわらず、少しのミスも許されないのが潜水艦である。
各国は潜水艦用鋼材の開発に力を入れており、強度レベルは昔に比べてはるかに高くなっている。
研究開発が進めば、今後はさらに静粛性が高く、深い領域まで潜れる潜水艦が現れるかもしれない。
次の動画では、無限の潜航能力をもつといわれる原子力潜水艦の仕組みについて解説しよう。
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