沈没した潜水艦の乗員を救助する潜水艦救難艦と飽和潜水士の過酷な訓練
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潜水艦がトラブルにより深海へと沈んでしまった瞬間、我々が頭に描くのは暗闇に包まれた艦内で孤立する乗員たちの姿だ。

彼らの心情を想像すると、胸が締めつけられるような感覚に襲われる。

タイタニック号ツアーの潜水艇「タイタン」が圧壊した事故は記憶に新しい。

日本において最初の潜水艦事故は1910年4月に起こった。

国産潜水艦である第1号の第6潜水艇が、岩国沖でのガソリン潜航訓練中に沈没し、艇長佐久間勉大尉以下14名がこの世を去った。

今回は、海上自衛隊の潜水艦救難艦と飽和潜水士がどのようにして深海の潜水艦から乗員たちを救助するのかについて解説していこう。

しまかぜ

この内容は動画でも見れるよ!

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潜水艦救難艦「ちはや」と「ちよだ」の任務とは?

潜水艦救難艦の歴史は、第二次世界大戦中にイギリスが初めて開発したことから始まる。

イギリスの潜水艦はドイツによる攻撃で沈没することが多く、救助活動が難航していたため、専門の救難艦の開発が行われたのである。

その後、アメリカも潜水艦救難艦を開発し、冷戦時代にはソ連も参戦した。

これにより、潜水艦救難艦の技術が次々と進化していったのである。

海上自衛隊が運用する潜水艦救難艦は「ちはや」「ちよだ」の2隻である。

「ちはや」と「ちよだ」、両者の船体サイズはほとんど同じだ。

だが、新しい「ちよだ」は装備が進化しており、より遠くまで救助に向かえるように燃料搭載量が拡大されている。

また、医療支援のニーズに答えるため、医務室の病床数も増やされたほか、艦上の主要な装備としてのDSRVとよばれる深海救難艇もアップグレードされている。

この新型のDSRVは、12人だった救助可能人数を16人に増やした。

潜水艦が沈没する最悪の事態に、このDSRVは活躍する。

DSRVは、母艦の誘導と共に、自身の音響装置を駆使して沈んだ潜水艦に接近する。

目的地にたどり着いたら、その潜水艦の救出ハッチとメイティング装置で連結し、潜水艦内の気圧を調整することも可能で乗組員を安全に移乗させ、母艦へと戻るのだ。

海上自衛隊の潜水艦には、約70名の乗員が乗船している。

これを考えると、DSRVは何度も行き来する必要がある。

DSRVの最大潜行深度は公には明らかにされていないが、500m以上であるとされている。

なぜなら、後ほど説明する飽和潜水士が450mの深海まで潜った実績があるからだ。

潜水艦は一度潜ると、その位置を極限することは困難である。

そのため、極秘任務など以外の行動では、一定時間が経過するたびにその位置を司令部などに送信しなければならない。

その連絡が途絶えた場合、何かしらのトラブルで浮上できなくなった可能性があるのだ。

潜水艦は高度な技術と精密な機器が詰まった複雑な構造であるため、救出には専門の知識やスキルが必要とされる。

潜水艦救難艦には、これらの作業を行うことができる専門家が乗り組んでいる。

さらに、潜水艦救難艦は、潜水艦との訓練も行うことがある。

例えば、緊急時に潜水艦と協力して救助活動を行う訓練や、潜水艦の乗組員と共同で救難訓練を実施する。

これにより、実際の救助活動が行われた際に、迅速かつ効果的な対応ができるようになるのである。

潜水艦救難艦は、民間の潜水事故や深海調査にも対応できる。

深海での救助活動や調査に必要な装備や技術が揃っているため、緊急時には民間の潜水艦や潜水調査船の救助にも駆けつけることがあるのだ。

そんな潜水艦救難艦に乗船している救助のプロが飽和潜水士である。

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飽和潜水士たちの想像を超える救出準備

ダイバーといえば、人々は海の青さや、魚たちの群れを見るためのスキューバダイビングを思い浮かべることが多いだろう。

一般的なスキューバや、港を建てるための海中工事を目的とした「フーカー潜水」では、深度40mほどが潜れる限界とされる。

しかし、この限界を超えてさらなる深海に挑戦する「飽和潜水」という技術がある。

この技術を使えば、もっと深く、より未知の世界を探索することができる。

引用:https://mamor-web.jp/_ct/17542166

実際、2008年には日本の飽和潜水士がこれまでの日本記録を更新し、水深450mという壮絶な深さまで潜水することに成功している。

潜水艦救難艦に乗り組んでいる飽和潜水士は、特殊なスキルと高度な訓練を持つプロフェッショナルである。

彼らの主な仕事は、潜水艦の救助活動や海中での作業を行うことだ。

飽和潜水士は、長時間の深海での作業が可能な特別な潜水技術を持っている。

飽和状態とは、潜水士の体内に潜水ガスが溶け込んで飽和する状態を指す。

深海に潜るダイバーが、海の中の水圧に体を慣らして、安全に長時間潜れるようにする技術のことで、例えば、高山に登る人は、空気が薄いため、それに体を慣らす必要がある。

そのため、登山家は、高山に登る前に、高地でトレーニングを行い体を高地の空気に慣らす。

同じように、深海に潜るダイバーも、高い水圧に体を慣らす必要がある。

引用:https://mamor-web.jp/_ct/17542166

そのため、飽和潜水士は深海に潜る前に、タンクに入って徐々に圧をかけていき水圧に身体を慣れさせ準備を行う。

飽和潜水士は、船上で特殊な装置に入り、ヘリウムなどの混合ガスを使って加圧していく。

数時間から1日かけて潜水士の体にガスを取り込み、「飽和状態」にすることで、水圧に慣れた状態にするのである。

タンクからの混合ガス供給が始まると、初期の段階では、驚くほどの暑さが部屋を覆う。

入室してからの20~30分はこの熱さとの戦いだ。

しかし、さらなる危険を伴うのがヘリウムガスの存在である。

このガスは、ある瞬間にヘリウムと酸素に別れ、軽いヘリウムガスが部屋の天井近くに集まり始める。

想像してほしい、頭の上に100%のヘリウムガスが幻影のようにふわふわと舞っている姿を。

このガスを一度でも吸い込むと、人は瞬時に意識を失ってしまうのだ。

時間が経つと、酸素とヘリウムガスが完全に混ざり合い、このリスクはなくなる。

しかしその前に、部屋の中の暑さとヘリウムガスの恐怖の中で、頭を低くしてこのガスを避け続ける必要がある。

引用:https://mamor-web.jp/_ct/17542166

部屋の圧力がさらに上がり、水深「200m級」に達すると、体はまるで助けを求めるように「痛み」を感じ始める。

例えば、動く度に、関節から痛みが走るのだ。

通常、私たちの関節には気泡が含まれ、これが衝撃を和らげる役割を果たしている。

しかし、この高い圧力の下では、気泡は潰れてしまい、神経が圧迫される感覚となる。

さらに、水深400mの状態になると、さまざまな症状が現れる。

頭がぼんやりし、呼吸が苦しくなる。

引用:https://mamor-web.jp/_ct/17542166

粘っこいガスを吸い込むような感覚に陥り、しっかりと呼吸をしないと息ができなくなるのだ。

このように、飽和潜水とは、深海において安全に長時間潜れるようにする技術のことで、潜水士は通常よりも長時間の深海作業が可能になるのである。

引用:https://mamor-web.jp/_ct/17542166

加圧中は、わずか4畳半のタンクに6人が共有しながら生活するという息がつまりそうな状態が続く。

しかも、ダイバーの安全や機器のチェックのため、部屋中にカメラが設置されており、24時間常に監視されているのだ。

引用:https://mamor-web.jp/_ct/17542166

加圧しながら自由のすべてを奪われるこの状態は、刑務所以上かもしれない。

このような厳しい環境を乗り越え、加圧作業が終われば、次なる挑戦が待っている。

重厚な潜水スーツ、保護グローブ、頑丈なヘルメットを装着する。

これらの装備の総重量はなんと「60㎏」もある。

ここまできて、やっと救出の準備が整うのだ。

これを身に着けた状態で、水中エレベーターをを利用して深海の未知の領域へと降りていく。

そして、そこでの重要な任務、海底での危険な救出作業が始まるのだ。

飽和潜水士は、潜水艦救難艦での救助活動において重要な役割を担っている。

潜水艦が事故や故障により浮上できなくなった場合、飽和潜水士は深海での救助活動を行う。

このように、飽和潜水士になるためには、厳しい訓練を受ける必要がある。

高圧環境下での作業や呼吸法、救助技術など、様々なスキルを身につけることが求められる。

また、危険な状況に対処できる冷静な判断力と恐怖に打ち勝つ精神力も必要である。

飽和潜水士は、潜水艦救難艦に乗り組んでいるだけでなく、民間の潜水事故や深海調査にも対応することがある。

彼らの高度な技術と経験が、緊急時の救助活動や調査に役立てられるのである。

潜水艦救難艦が民間の潜水艦や潜水調査船の救助に駆けつける際には、飽和潜水士が救助活動の中心となるのだ。

潜水艦との連携訓練や、潜水艦の乗組員と共同で救難訓練を行うことで、実際の救助活動が行われた際に、迅速かつ効果的な対応ができるようになるのである。

次の動画では、潜水艦事故により乗員全員が死亡した事故について解説しよう。

 

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