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原子力潜水艦はウランを燃料としているため、燃料補給なしでも無限に近い潜航能力と核ミサイルという高い攻撃力を兼ね備えた兵器である。
これほど多くの核ミサイルを搭載できる兵器は原子力潜水艦以外には存在しない。
しかし、戦略原子力潜水艦の建造と運用には高度な技術が必須である。
そのため現在、原子力潜水艦を保有している国は世界でわずか6カ国しかない。
今回は、各国の原子力潜水艦の特徴と搭載ミサイルの驚くべき秘密について解説していこう。
この記事に書かれている内容は
世界最強・最多の原子力潜水艦を保有するアメリカ海軍
潜水艦を保有している国は世界で41カ国であり、その中で世界最多の潜水艦を保有しているのがアメリカ海軍である。
アメリカとソ連は冷戦時代から多くの原潜を建造し、オハイオ級は18隻が就役し、現在においても14隻が稼動している。
ミサイルの発射筒は24基で、「トライデントIID-5」核ミサイルを搭載しており、なんと12000㎞も離れた目標を攻撃できる。
新START条約に基づく発射台数の制限に対応するため、これらの潜水艦の発射管の数は各潜水艦20基に削減された。
なぜ、戦略原潜が搭載しているミサイルはこれほどまでに射程が長いのだろうか?
その理由は、潜水艦に対する敵の攻撃を避けるためだ。
目標を射程内に収めるために相手国に近づく必要をなくし、敵の攻撃や探知を困難にする。
核戦争となった場合、核ミサイルを発射する前に敵の潜水艦を撃沈して母国を守ることが攻撃原潜の任務でもある。
それらの攻撃を受けないために、母国の近海から発射しても目標に届くほどの射程をもつようになったのだ。
理論的には、一隻の潜水艦からの一斉発射だけで、かつてのソビエト連邦の複数の都市が地図上から消し飛ぶ可能性があった。
この種の潜水艦は、長期間にわたり連続潜航することができるように作られていた。
その主な任務は、ソビエト連邦が核ミサイルを使ってアメリカ合衆国に攻撃を仕掛けた際、水面に浮上し、壊滅的な報復攻撃を行うことにあった。
オハイオ級の1番艦から4番艦については、発射筒が改造され対地攻撃ができるように、24基のうち22基がトマホーク巡航ミサイル用となっており、1基に7発を収めている。
つまり、22基×7で154発のトマホークを敵地に撃ちこむことができるのだ。
これはイージス艦の搭載数の実に1.5倍以上で、圧倒的な対地攻撃能力を有している。
その強力な火力を世界に顕示したのは2011年の3月のことである。
この時、「オデッセイの夜明け作戦」の一環として、フロリダはリビア国内の目標に向けてトマホークミサイルをほぼ100発放った。
実戦でその能力を発揮したのはこれが初めてであった。
その瞬間は、技術的な成果だけでなく、人間の創造性と破壊力が交錯する瞬間としても刻まれた。
海の底からの一斉射撃は、遠く離れた地にいる人々にとっても不安と恐怖の感情を抱かせるものだった。
オハイオ級潜水艦は、その隠密性により、内陸部に位置する目標に対しても、地上の戦力に先んじて攻撃ミサイルを届ける能力を持っている。
このステルス性は、敵の防衛線をすり抜けて、より遠く、より重要な標的を叩くために前線に展開できることを意味する。
オハイオ級の後継艦として建造されるのが、コロンビア級である。
米海軍史上最大の原潜となるコロンビア級の建造数は12隻で、オハイオ級よりも少なくなった。
しかし、新型の原子炉により燃料交換不要となり、炉心交換などの長期間の修理を行う必要がないことから、12集中10隻は常に稼動状態を維持することで戦略パトロールに影響はないとされている。
1番艦は2028年に就役予定で、オハイオ級との交代時期は2031年が計画されている。
ただし、コロンビア級の建造スピードよりもオハイオ級の退役が早いため、一時的に戦略原潜の数が少なくなることが懸念されている。
なぜなら、コロンビア級の2番艦の建造は1番艦から9年後という計画になっているからである。
なぜそこまで年数を空ける必要があるのか?
それは、新しく設計された潜水艦は、就役後の不具合やトラブルが発生する可能性があり、それらを全て抽出して改善するためには、ある程度の期間運用して様子を見なければならないからである。
アメリカ海軍はオハイオ級以外にも弾道ミサイルを搭載しない攻撃型原子力潜水艦を数多く保有している。
ヴァージニア級は米海軍最新の攻撃原潜で17隻が就役しており、さらに20隻の建造が計画されている。
水中速力は世界最速のシーウルフには及ばないものの34ノット(時速63km)と非常に高速を出すことができる。
搭載兵器は、攻撃原潜のためミサイルは核ではなく、トマホークであるが、新型ミサイルを搭載する計画もある。
米海軍がアメリカ陸軍と協力して開発している長距離の極超音速兵器「ダーク・イーグル」」は、その射程距離が2875kmにも及び、マッハ17の驚異的な速度を持つミサイルだ。
このミサイルは、まずズムウォルト級ミサイル駆逐艦に配備される予定であり、2028年にはヴァージニア級の原子力潜水艦ブロックVにも搭載されることになっている。
そして、スーパーサブマリンとして計画され、世界最強と謳われる原子力潜水艦がアメリカ海軍が3隻しか保有していないシーウルフ級である。
1990年代の冷戦時代の終焉と共に、アメリカ海軍は新たな挑戦に直面していた。
その答えがシーウルフ級潜水艦だ。
この潜水艦は、旧ソ連海軍の強力な原子力潜水艦に対抗するために誕生した。
この潜水艦の性能は驚異的だ。
ポンプジェット推進によって、その速力は35ノット(約64.8km/h)にも達する。
この速度により、潜水艦は海の中を鮫のように素早く移動し、敵を翻弄することができる。
そのサイズ、速度、装備の豪華さは他の追随を許さない。
シーウルフ、ジミー・カーター、コネチカットの3隻は、それぞれ50本の魚雷やミサイルを搭載している。
その火力は、敵艦隊や空母群を一撃で沈めるほどのものである。
しかし、この優れた技術と性能には高い代償が伴った。
1隻あたりのコストは約30億ドル、中でも3番艦のジミー・カーター号は35億ドルにも上る。
1隻あたりの建造価格はイージス駆逐艦の約2倍にもなる。
これは、米海軍が保有する攻撃型潜水艦の中で最も高価なものだ。
シーウルフ級は、米海軍の約50隻の攻撃型潜水艦の中でも特に際立っている。
当初、シーウルフ級潜水艦は29隻が建造される予定だった。
しかし、冷戦の終結と共にその必要性は低下し、またその高額な建造費も影響し、結局は同型艦2隻と準同型艦1隻、合計3隻で建造は終了した。
この決断は、世界が新しい安全保障環境に適応する過程での象徴的な出来事となった。
これらの潜水艦は、冷戦のレガシーであり、同時に未来への道を切り開く先駆者でもある。
イギリス唯一の核戦力「ヴァンガード級潜水艦」
イギリスは戦略爆撃機や大陸間弾道ミサイルを保有しておらず、ヴァンガード級原子力潜水艦が唯一の核抑止力となっている。
この潜水艦は世界最大級とされるロシアのタイフーン級やアメリカのオハイオ級に次いで、世界で3番目に巨大な潜水艦で、全長は150m、水中速力は25ノットである。
全長150m全幅13m
水中排水量16200トン
水中速力25ノット(約46km)
主機:ロールスロイス製原子炉1発27500馬力、
乗員135名
兵装トライデントD-5、533mm魚雷発射管×4
イギリス海軍はアメリカ製のミサイルを保有しており、ヴァンガード級潜水艦については、アメリカのオハイオ級と同じく、全長13mにもおよぶ弾道ミサイル「トライデントIID-5」を16発搭載している。
イギリスは1950年頃から核武装しており、その対象はロシアである。
ただし、ロシアと比較すると核の保有数は圧倒的に少ないのが現実である。
しかし、イギリスの核保有はアメリカの補完という位置付けであり、英対露という戦いではなく米英対識という構図なのである。
ヴァンガード級原子力潜水艦の心臓部はロールスロイス製の原子炉が搭載されており、前級の原子炉よりも2倍の耐用年数をもつとされ、就役から退役までの間、核燃料棒の交換は不要である。
1993年から6年間で4隻が就役したが、老朽化のためそろそろ後継艦を必要とする時期にきている。
そして、その後継として建造がスタートしたのが「ドレッドノート」である。
建造を担当するのは、イギリス唯一の原子力潜水艦建造所である「BAEシステムズ」だ。
1億ポンド(約183億円)の資金が投じられて新しい建造施設が建てられた。
ドレッドノートは全長153m、水中排水量17200トンで、ヴァンガード級原子力潜水艦がよりも、さらに大型化している。
搭載ミサイルはヴァンガード級と同様の「トライデントIID-5」で発射筒は8~12発とされている。
発射筒はアメリカと共同開発され、モジュール化により搭載数を変えることができる。
すでに4番艦までの名前は決定しており、1番艦については、2030年に実戦配備予定である。
96発の核を降らせるフランスの原子力潜水艦「ル・トリオンファン級」
フランスにおいては、新世代ミサイル原潜という位置づけで1997年から2010年にかけて4隻就役したのが、第2世代戦略原潜「ル・トリオンファン級」である。
2009年にイギリスのヴァンガード級と衝突事故を起こしたことでも知られており、その修理に8ヶ月を要している。
全長138m、水中排水量14500トン、水中速力は最大25ノット(約46km)、ミサイルは射程9000kmと射程10000kmの核ミサイルを合計16発搭載可能である。
全長138m、全幅17m
水中排水量14500トン
水中速力は最大25ノット(約46km)
主機原子力ターボエレクトリック、41500馬力
潜航深度500m
乗員111名兵
兵装 M51(45)ミサイル×16・533mm魚雷発射管×4
ミサイルの弾等部分は6つに分離する複合弾頭であり、空中で分裂して最大で16発x6の96発の核弾頭を敵国に撃ち込むことができる。
通常、弾道ミサイル防衛は、相手が発射したミサイル1発に対して、こちら側から迎撃ミサイル1発を発射して破壊する。
しかし、弾頭部分が6つに分離することで、ミサイル防衛を突破して敵の領土に着弾させることができるのである。
「ル・トリオンファン級」は1997年に1番艦が就役しており、その寿命は約40年とされている。
後継となる新たな潜水艦の建造は2023年ころから建造開始となる計画である。
分厚い氷を突き破る!史上最大のロシア原潜タイフーン級
R-39ミサイルを搭載するために開発されたのが、ロシアのタイフーン級原子力潜水艦である。
アメリカが保有する核ミサイル「トライデント」に対抗するために、ロシアが開発したのがR-39という核ミサイルである。
両国のミサイルのサイズを比較するとこのようになる。
そのサイズは、全長171m、水中排水量26900トン、水中速力は最大25ノット(約46km)であり、1981年から6隻が建造され、世界最大の原子力潜水艦として君臨した。
全長171m 全幅23m
水中排水量26900トン
水中速力25ノット(約46km)
加圧水型原子炉×発81600馬力
潜航深度400~500m
乗員160名
兵装 R-39ミサイル、魚雷、対空ミサイル
映画「レッドオクトーバーを追え」に登場した際は、架空の7番艦が「レッドオクトーバー」という設定であった。
タイフーン級は、その巨体から現在の潜水艦では珍しくスクリューが2つある2軸構成という特徴をもつ。
北極海の氷海下に最大180日間という長期間とどまり、分厚い氷を突き破って核ミサイルを発射する能力をもっている。
171mという巨大な船体にはR-39核ミサイルを20発搭載することができる。
冷戦時代のソ連にとって、最大の敵はアメリカ空母打撃群であった。
そのため、対艦ミサイルや対空ミサイルまでも装備されており、他国の潜水艦を凌駕していた。
ところが、ソ連崩壊により財政がひっ迫したことから、この巨体を維持することができず、結果的に2番艦から6番間は退役に追い込まれた。
現在残るのは1981年に建造された1番艦の「ドミトリー・ドンスコイ」のみとなっている。
しかしながら、これも事実上は新型ミサイルの試験用として運用されており、20発ある発射筒で使用されているのはたった1発のみであり、実戦力としては運用できないものとみられる。
現在、ロシア海軍はタイフーン級を超える原子力潜水艦ベルゴロドを保有しており、そのサイズは184mで世界最大となっている。
中国海軍8隻の巨大ステルス原潜がアメリカ本土を狙う
近年、海洋進出を積極的に行い日本の脅威ともいえる中国は、世界で5番目の原潜保有国である。
中国初の原潜「漢」級(ハン)は過去に日本の領海に侵入するという事件を起こしている。
潜航深度は300mといわれているが、水中で発生するノイズが非常に大きく潜水艦としては致命的であった。
過去に、黄海でアメリカ海軍のキティホーク空母打撃群が、中国海軍の潜水艦を三日間にわたり追跡した。
米海軍の優れた探知能力は、相手を圧倒する自信の表れでもあったのだ。
その行動は、米軍が当時、中国の潜水艦勢力を重大な脅威とは認識していなかったことを物語っている。
そしてロシアの技術支援を受けて建造されたのが、商(シャン)級である。
1994年に建造が開始されたものの、技術的な問題が発生し、完成したのは12年後の2006年であった。
その後、8隻が就役している。
そして、弾道ミサイル搭載艦として建造されたのが普(ジン)級である。
現在4隻が就役しており、搭載ミサイルは射程6000kmJL-2、もしくは、その改良型である射程8000kmのJL-2Aを12発搭載可能である。
普級の船体は一部分が盛り上がっているのが確認できる。
これは搭載ミサイルの全長が長いため、格納部分を延長しているからである。
さらに中国海軍は射程12000kmとされるJL-3を開発中で、2019年に試験発射を行っている。
これを24発搭載できる大型の潜水艦「唐」(タン)級の建造も計画している。
これによりアメリカ本土も射程圏内に収めることができるようになる。
インド外国製原潜から国産への転換 原潜アリハントの戦略
ここまで解説した5カ国については、全て自国で原潜を開発・建造した国であるが、外国の原潜を輸入しているのがインド海軍である。
1991年、当時のソ連からチャーリーI型をリースしたのが始まりである。
その後、ロシア海軍からアクラ級原潜を10年契約でリースしたのち2018年、インド国産として初の原潜が就役した。
それが「アリハント」だ。
インドが原潜を保有する理由はパキスタンに対する抑止力である。
アリハントは2018年には戦略パトロールを開始しており、射程750kmのK-15を12発搭載可能である。
発射筒は4基であるが、K-15は3発ずつを収めることができる。
射程3500kmのK-4の発射実験がすでに成功しており、 さらに6000kmの開発も進行中である。
現在、インドは約580kgの兵器級プルトニウムを保有していると推定されている。
核弾頭の製造には、さまざまな技術的要因によって4から6kgのプルトニウムが必要とされる。
これを基に計算すると、インドが保有するプルトニウムは、約97から145発の核弾頭を製造するのに十分な量だ。
だが、インドの核戦力に関する話はここで終わりではない。
兵器級プルトニウムに加え、インドは将来の使用を見越して、原子炉級のプルトニウムも約6トン保有している。
この量は、単なる数字以上の意味を持っている。
それは、インドが持つ核エネルギーのポテンシャルと、将来的な軍事的可能性を示しているのだ。
核戦略は、アメリカやロシアのような大国だけが誇示できるものでなく、イギリスやフランスのような小規模の核でも十分相手に対して脅威を与えることができる。
たった数発の核でも着弾させれば国家の機能を停止させることもできる恐ろしい兵器である。
北朝鮮が必死になって核開発を急ぐ理由はこのような理由もあるからであろう。
これは日本の核保有という抑止力においても同じことが言えるのではないだろうか?
次の動画では、原子力潜水艦の動力がどのような仕組みになっているかについて解説しよう。
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