無人機から発射！ヘルファイアミサイルの全貌と「R9X忍者ミサイル」

AGM-114 ヘルファイアは、世界中の20数カ国で広く利用されている短距離戦術ミサイルで、陸上攻撃任務を主目的としている。

対テロ作戦で特に活躍しており、その使用範囲は非常に広い。

ヘルファイアは主に空からの発射に特化しており、海上からの発射も可能な兵器である。

今回は、新型ヘルファイアミサイルの驚異的能力とターゲットのみを消去する「忍者ミサイル」について解説しよう。

空中からの精密攻撃! ヘルファイアミサイルの進化 ヘリから無人機へ!

このミサイルシステムの開発は1972年に始まった。

当時、ソビエト連邦の戦車は NATO の装甲を凌駕しており、欧州での衝突が発生した際には大きな脅威となる可能性があった。

これに対抗するため、アメリカはヘリコプターから発射する対戦車ミサイルとしてヘルファイアを開発した。

戦車は上方からの攻撃に脆弱であり、この弱点を突くために開発されたのがヘルファイアである。

ヘルファイアは、その柔軟性と運用の幅広さが魅力とされている。

このミサイルは、A-10 サンダーボルトやアパッチ攻撃ヘリ、さらには MQ-9 無人攻撃機など、多様な空中プラットフォームに搭載されている。

海上では、対潜ヘリコプターへの装備も可能だ。

ヘルファイアの全長は160~170cm、重さは約50kgとされ、そのサイズと重量は人間とほぼ同等である。

主に地上の固定目標、例えば戦車や建築物の破壊に使用されるが、最大射程は8km と比較的短いため、目標に近づく必要がある。

このミサイルが持つ対戦車能力は、現代の軍事技術の中でも特に注目される部分だ。

しかし、実際に戦場で使用される際の戦術や戦略にはどのような影響を与えているのだろうか。

AGM-114 ヘルファイアミサイルは、1986年4月にアメリカ陸軍に配備され、以降、数多くの戦争や軍事作戦において中核的な役割を果たしてきた。

具体的には以下の作戦で使用された。

 

そしてその他多数の対テロ戦争の中で使用されている。

また、1999年には、米空軍がドローンMQ-1 プレデターにヘルファイアミサイルの搭載を試み、2001年にはこれが戦闘で初めて使用された。

新ヘルファイア4 ミサイル 24km射程で戦車を一撃!その驚異的な能力とは?

1990年代初めには、より高度な戦車防御技術に対応するため、新しいヘルファイアが開発された。

新型は、タンデム弾頭を特徴としており、反応装甲を作動させるための初段の装薬と、その後戦車本体を貫通するための主装薬という二段構成になっている。

この進化したタイプのヘルファイアは、敵の防御を巧妙に突破する設計とされ、戦場での有効性を大きく高めている。

これらの実戦での使用状況を見ると、ヘルファイアミサイルが現代戦においてどれほど重要な武器であるかがよくわかる。

特に無人航空機との連携によるその使用は、戦術的な観点から見ても革命的であった。

アメリカ空軍が新たにヘルファイア4 ミサイルのテストに成功したことを発表し、これは戦術ミサイル技術における顕著な進展を示している。

この新バージョンのヘルファイアは、従来のモデルの射程を大幅に拡張し、最大 24km まで目標を攻撃できるようになった。

以前のヘルファイアは最大射程が 8km で、この距離では敵の短距離防空システムや携行式防空ミサイルの脅威にさらされることが多く、発射プラットフォームが敵の攻撃範囲内に入るリスクが伴っていた。

防空技術の進化により、従来の最大射程でも安全とは言えなくなっており、より長距離からの攻撃能力が求められていた。

新しいヘルファイア4の射程拡大により、これらの短距離防空システムの射程外、つまり10km以上の安全な距離からのスタンドオフ攻撃が可能になる。

これは攻撃側の航空機やドローンの生存率を大幅に向上させる。

この技術的な飛躍は、現代の軍事作戦にどのような変化をもたらすのだろうか?

遠距離からでも高精度に目標を攻撃できるこの新しいヘルファイアミサイルは、敵に対する心理的な圧迫も大きく、戦術的な有利さをさらに強化するだろう。

戦場での戦略をどう変えるか、その影響は非常に大きいと考えられる。

「忍者ミサイル」の衝撃! 爆発なしで敵を仕留める! ターゲットのみを暗殺

ヘルファイアミサイルの中でも特に異彩を放つのが「R9X」とも呼ばれる通称「忍者ミサイル」である。

このミサイルは、テロリストの精密暗殺任務に特化しており、爆発性の弾頭を持たないことが特徴だ。

2022年、アルカイダのリーダーであるアルザワヒリ容疑者がこのミサイルによって暗殺された際、彼がいたバルコニーに2発のミサイルが直撃し、彼は死亡したが、建物内の妻と娘は無傷であったという。

これまでのミサイル攻撃では、目標の除去という点では効果的だが、その爆発によって周囲の無関係な民間人も巻き込まれがちで、その結果アメリカ国内外から多大な批判を受けてきた。

これを受けて、2011年にオバマ大統領は非爆発型のミサイル開発を指示。

R9Xはこの指示に基づいて開発されたもので、従来のヘルファイアミサイルをベースにしながらも、特殊な機能を持たせることでピンポイントでの精密攻撃を可能にした。

このミサイルは通常の爆発を伴うミサイルとは異なり、爆薬を搭載せず、代わりに6枚の刃 (ブレード) を内蔵しており、これが標的に直接当たることで致命的なダメージを与える。

通常のヘルファイアミサイルは爆薬を搭載しており、着弾時には周囲の広範囲にダメージを与える。

しかし、R9Xはその爆薬を廃し、6枚の刃を展開することで、限定された範囲内でのみ致命的な効果を発揮する。

この特徴から「ニンジャミサイル」とも呼ばれ、その名称はこのミサイルが静かで、そして極めて正確に目標を消去するその性質を象徴している。

対テロ戦争において、ヘルファイア R9Xは重要なターゲットの暗殺に用いられ、その高い精度と限定的な破壊力は、軍事作戦の倫理的な側面にも影響を与えている。

目標となる人物のみを極めて限定的に除去できるため、周囲の人々や環境への影響を最小限に抑えることができ、非戦闘員のリスクを最小限に抑えることが可能であるため、軍事作戦の精度向上に寄与している。

このミサイルは「アル・シャバブ」のリーダーや「ジハディ・ジョン」のような著名なテロリストの暗殺に使用されてきた実績があり、その効果は確かなものとされている。

特に「ジハディ・ジョン」の暗殺は、国際社会に大きな注目を集めた。

2017年にシリアでアルカイダの指導者が殺害された際にも使用され、攻撃対象の車両の屋根には明確な穴が開き、爆発や炎上を伴わないことから、現場の悲惨さが最小限に抑えられたと報告されている。